第29回
かつぬま朝市ワインセミナーレポート
 by篠原(ワインエキスパート)

参加者  県外22名  県内3名  計25名
講師  篠原ワインエキスパート


アシスタント のぶ子さん

ゲスト 四恩醸造(株) 小林様


ワインリスト
1 甲州ヴィンテージ2006 勝沼醸造(株) 
2 ブーケ (橙だいだい)2008 四恩醸造(株) 
3 窓辺  (赤)2008 四恩醸造(株) 
4 仄仄(ほのぼの) (白)2008 四恩醸造(株) 

料理
1 カリフラワーのピクルス
2 お刺身コンニャク+甘味噌又は岩塩
3 桃のコンポートと栗の渋皮煮
4 パン+ディップ
5 ぶどう(甲州・ベリィA)

セミナーの内容
1 甲州ぶどうのお話
2 甲州種ワインのお話 
3 ワインテイスティング
4 四恩醸造さんのお話




いよいよ今年最後のワインセミナーになりました。気まぐれお天気にヒヤヒヤさせられましたがやっぱり今回も朝市マジックで見事な快晴。予約状況も早々に満杯に。でもまだ次々と入るメールに、来月から冬休みに入ってしまうのでなんとか今回一人でも多くの方に参加していただきたいと思い頑張って、総勢25名という過去最大の人数になりました。ところがハプニング。

皆さん楽しみにしていたボランティア講師大山ソムリエがお仕事の都合で来られなくなってしまったのです。さてどうしたものか?ひとり悩みながらぶどう畑で作業している私の前に天から舞い降りたかのように現れたのが四恩醸造の小林さんでした。


「篠原さんちの甲州の1年物(08年)これからビン詰めするところです。10月31日から発売になります。」なんというグッドタイミング!!  

「セミナー前日に発売されたばかりのワインを持って是非ゲストで来てください。」「喜んで行かせてもらいます。」ということで今回のセミナーが実現したのです。フーッ。(ためいき) 


素晴らしい秋晴れの下、朝市中央のテントにはお客様がびっしり。中にはテントからはみ出して陽当たりの良い方もいて、ホントにすみませんでした。


セミナーの前半は私の話を聞いて頂きました。甲州ぶどう・甲州種ワインの由来とテイスティングの方法です。久々にコルクの抜き方(秘技雑巾しぼり)もご披露しました。

後半はお待ちかねの四恩醸造小林さんの登場です。設立してからまだ3年目という新しいワイナリーですが、造られるワインは大評判で発売されるとたちまち売り切れになるワイン達です。ところでこのワイン達とても個性派揃いなのです。そこで今回は、テーマを「ワインを飲んで、ワインを語ろう」として、皆さんにこのワインについて大いに語ってもらうことにしました。

テイスティング最初のワインは、比較の基準になるワインとして当セミナーのハウスワインの甲州ヴィンテージ2006です。クリーンに透き通った透明に近いレモンイエロー。みかん、白いお花、ミネラルなどの香りを感じ、酸もしっかりしています。このワインは小林さんもお馴染みのワインだそうです。

2番目からは四恩醸造のワインです。先ずはブーケ(橙だいだい)2008。

我が家の甲州から造られたワインです。グラスに注がれるワインを見て、不思議に思われた方もいたでしょう。無理からぬ事です。ロゼ? グリ? 淡いピンクでも無くイエローでも無い。品種は? ラベルのどこにも書いて無い。とにかく飲んでみよう。というワインなのです。「色がきれいです。」「皮ごと醸したのでは?」「しっかりしている。」など参加者から感想が語られます。小林さんが解説します。「甲州種の色や味わいを最大限に引き出す方法として、果汁と一緒に果皮も漬け込んで醸してあります。」(スキンコンタクトという方法ですね)この色を小林さんは橙(だいだい)と呼んでいるのです。醗酵後オークの樽に入れて1年間育成されて、ビン詰めされたのです。程良い樽香、果皮からくる複雑な香り。フィルターにかけていないので少々にごりがありますが、それが甲州の良さを引き出して、厚みのあるしっかりとしたワインに仕上がっています。1番目の甲州ヴィンテージと比較テイスティングしてどちらがどんなお料理に合うとか、またどんな時に飲もうかなどとても興味深いですね。

3番目は赤ワインの「窓辺」(赤)2008です。赤ワインとしてはやや淡目の美しいルビー色で、グラスを持つ指が透けて見えます。ラベルに品種の表示はありませんが、メルロー主体でカベルネソーヴィニヨンとの混醸だそうです。「赤ワインの色はただ濃ければ良いというものでは無いと考えています。お料理との相性の広がるピノ・ノワールの色を目指している。」ということです。この「窓辺」、タンニンも軽めで和食とも合いそうです。

最後のワインはハーフボトルの「仄仄(ほのぼの)」(白)2008です。「きれい」、「いい香り」、「大好き」など驚きの声が聞こえてきます。デラウエアー種の醗酵途中でブランデーを加えて造られた酒精強化という方法の甘口ワインで、アルコール度数は18.0%と高くなっています。疲れている時などこのワインを飲むと幸せな気持ちになり、また元気が出てくるようなワインです。本日のお料理の桃のコンポートと栗の渋皮煮などと良く合います。



ここで四恩醸造のボトルを見ておきましょう。形は3本ともドイツやフランスのアルザスなどで多く使われている鶴首のように上がスーと細くてそのまま下までなだらかに下りてきている形(モーゼル・ライン型と言うそうです)。
      キャップは3本ともスクリューキャップ。四恩のワインにはコルクを使ったワインもありますが、比較的早い時期に飲み頃を迎えるワインには、スクリューキャップを使用しているそうです。

ラベルはとても美しいお花や風景が描かれていて、飲み終わった後もお部屋のインテリアとして飾って置きたいステキなボトルです。でも、でも、使用されているぶどうの品種が書いてないんですよね…。これには造り手の深い思いがあったのです。「品種名などを書いてしまうと、どうしても先入観を持ってしまう。何の固定観念も持たずに飲んで欲しい。飲んで美味しかった、それが最高のワインだと思うのです。」と。

自分の造りたいワインの方向をしっかり見極めながら挑戦している醸造家の小林さん、これからもどんなワインを飲ませてくれるか、とても楽しみです。

2009年のワイン用ぶどうは、糖度が高くて酸もしっかりしているとても良い出来になりました。甲州市のワイナリーは、どちらのワイナリーでも素晴らしいワインが期待出来そうです。新酒甲州ヌーボーも解禁になりました。おいしいワインを飲みに甲州市へ来てください。

このかつぬま朝市ワインセミナーは、12月〜3月まで冬休みになります。来年4月4日、5年目に入って益々充実した内容でまた皆様とお会いしたいと思います。それまでお元気で。楽しいワインライフをお過ごしくださいね。


篠原