かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原
第38回
2011.05.01

参加者  県外7名  県内3名  計10名
講師  篠原シニアワインエキスパート
ゲスト  長谷部酒店 代表 長谷部 賢様  


ワインリスト
1 シトラスセント 甲州 2010         蒼龍葡萄酒(株)      
2 麻屋甲州特別限定醸造 シュールリー 2009  麻屋葡萄酒(株)
3 マスカットベリーA樽貯蔵2008シャトレーゼベルフォーレワイナリー勝沼ワイナリー 

料理
1 カリフラワーのピクルス
2 お刺身こんにゃく+甘味噌
3 おからこんにゃくのからあげ
4 クラッカー+ディップ
5 ころがき

セミナーの内容
1 甲州ぶどうのお話
2 甲州種ワインのお話
3 長谷部様によるワインテイスティングとワインの香りについてのお話

レポート
今年の勝沼の甲州ぶどうの生育は、平年に比べ1週間ほど遅れているそうです。冬の間ほとんど雨が降らず低温で乾燥した日が続いたため、木が春になっても目覚めないいわゆる「ねむり病」になっては大変と、凍らない日中に水を撒いたりした畑もありました。4月の終わりにようやく芽がふくらみ、今は葉が5〜6枚の「展葉」の時期を迎えています。これから一挙に農繁期となり、地域全体に活気があふれます。

今日の朝市は予想された雨の代わりに黄砂やほこりと共に春の嵐が吹き荒れましたが、ゴールデンウイークとあって大勢のお客様で賑わいました。

我が「かつぬま朝市ワインセミナー」は、通常4月から開催ですが、今年は大惨事「東日本大震災」がやって来た為、震災の直後はお休みにして、1月遅れの開催となりました。被災された方々の事を思うと心が痛みます。しかし幸いにも被災を免れた私たちが、被災者に心を寄せながら、いつもの活気ある日常生活を送る事こそ復興への支援につながると思い、5月からスタートしました。

早速10名のお客様が参加してくれました。今回は、いつものボランティア講師の大山ソムリエは急用の為お休みになってしまいました。でもこのワインセミナーは皆様の期待を裏切りません。以前から交渉していた待望のゲスト、シニアワインアドバイザーの長谷部賢さんが、快く参加を引き受けてくださいました。

セミナーの最初は、いつも初参加の方のためにお話する「甲州ぶどうのお話」と「甲州種ワインのお話」です。              


私篠原が、このセミナー会場から見渡せる周辺の景色と関連づけながらお話しました。


引き続いて、いよいよ本日のゲスト長谷部賢さんの登場です。

長谷部さんは、大月市猿橋町で長谷部酒店を営み、日本のお酒やワインはもとより外国のワインも幅広く販売しています。また、シニアワインアドバイザーのほか、利き酒師やワインコンクールの審査委員、ワインスクールの講師などなど大活躍中でとてもお忙しい方です。なにかこう紹介するととても固いイメージの人物を想像してしまいますが、とんでもない、一度お会いするとすぐにお友達になってしまうような、それはもう明るく楽しい方です。



早速長谷部さんに「ワインの香り」をテーマに3本のワインをテイスティングしていただきました。
最初のワインは、「シトラスセント 甲州 2010」です。透明に近い澄んだ色合いから、若々しい香りが想像されます。爽やかな香り、スワリング(グラスを回してワインの中に空気を取り込む)すると、レモン、グレープフルーツ、など柑橘系の香り、若い梨、青りんご、白いお花の香りなどがさらに華やかに立ち上がってきます。フレッシュな酸と果実味それにミネラルが繊細な味わいを造りだしている、すっきりとしたやや辛口の白ワインです。

2番目のワインは、「麻屋甲州 特別限定醸造 シュールリー 2009」です。
2009年は甲州ぶどうの収穫時に天候に恵まれ、糖度の高いぶどうの穫れた年です。落ち着いた黄色の色合いから、少し熟成された香りが想像されます。黄色い皮のりんごや熟した梨、白桃などの果実の香り、また、製法からくるパンやイーストの香りがとれます。優しい味わいで、酸と果実味がバランス良く融合して、丸みのあるふくよかな味わいの辛口白ワインです。「このパンやイースト香がシュールリーの特徴の香りです」と長谷部さん。

最後のワインは、「マスカットベリーA 樽貯蔵 2008」です。グラスのエッジに少し紫色の残るきれいなルビー色から、まだ若い香りも想像できます。
ぶどうそのものからくる甘い香りやストロベリーやブルーベリーなどの果実の香り、赤いお花、スパイスやキャンディーの香りもしてきます。樽貯蔵からくるバニラやバターの香りも感じられます。長谷部さんの口からとびだす香りの種類に、参加者の皆さん「言われてはじめて香りが出てくる。」とか「これが樽の香りなのか。」など感心したり驚いたり、すっかりワインの香りの世界に引き込まれていました。たっぷりの果実味と生き生きとした酸、優しいタンニンが、やわらかな樽の風味に包みこまれた、まろやかな味わいのミディアムボディーの赤ワインです。

3種類のワインから、ぶどうの種類による香りの違いや醸造方法によって出てくる香りの違いを学習することができました。



その外、「ワインが冷えていて香りがあまり立ち上がらない時には、両手でグラスを包んであげて温めると良いですよ。でも、飲み頃の温度のワインならば、体温が伝わらないようにグラスの脚のところを持ちましょう。でもでも、どーしてもグラスの丸い部分を持ちたい!って人がいたらそれもOKです。ワインは、形式にこだわらないで自由に楽しく飲む飲み物です。」ユーモラスな口調で語る長谷部さんの人柄から、ワインの楽しさがたっぷりと皆さんに届いたようです。

最後に本日のおつまみの事を記しておきましょう。メインの「から揚げ」ですが、この朝市出店者の「味噌工房」さんが造る、おからこんにゃくの試食です。鶏肉のような食感がおいしいので、分けていただきました。また、生育がいつもより遅れているので諦めていた「ぶどうの新芽のてんぷら」を、なんと、あめかんさん(雨宮観光ぶどう園さん)が畑からぶどうの新芽を摘んで、てんぷらにしてわざわざ届けてくださったのです。本当に有難かったです。まさに、旬の味、ここでしか味わえない味で、皆さん大喜びでした。

春の嵐で悩まされながらも、楽しいお話で大いに盛り上がった今日のワインセミナーでした。皆さんが帰られた後には、さわやかな緑の風がやさしく吹き渡っていました。(いったいあの風は、どなたが連れて来たのでしょう?)

追伸  会費としていただいたお金の中から、僅かですが義援金として寄付させていただきました。

篠原