かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原

第44回  2011.11.06



〇参加者
県外27名、県内2名、計29名



〇講師
大山シニアソムリエ ・篠原シニアワインエキスパート
〇アシスタント
のぶ子さん



〇ゲスト
四恩醸造(株) 醸造・販売責任者 小林様

〇ワインリスト
1、ローズ(白)2011 四恩醸造(株)
2、窓辺(橙)2010    〃
3、クレマチス(ロゼ) 2011 微発泡  〃
4、窓辺(赤)2010    〃




〇料理
1、お刺身こんにゃく+甘味噌
2、ナポリピッツァ
3、甘栗
4、カリフラワーのピクルス
5、フルーツヨーグルト



〇セミナーの内容
1、甲州ぶどうのお話
2、甲州種ワインのお話
3、ワインテイスティングの方法
4、四恩醸造(株)小林様のお話

〇レポート
きのうはワインツーリズム、きょうはかつぬま朝市と、秋の勝沼は見どころ満載です。きのうから連続参加の方も含め、本当に大勢のお客様で、我がワインセミナーも満杯。どうにか席についていただきました。早速スタートです。大山ソムリエも張り切って、順調なすべり出しで、いつものように甲州ぶどうのお話と甲州種ワインのお話、それからワインテイスティングの手ほどきを、ユーモアたっぷりにしてくれました。


皆さんの気持ちがすっかりワインモードになったところで、本日のゲスト、四恩醸造(株)の小林さんの登場です。

小林さんは、山梨市牧丘町にある四恩醸造のワイナリーの立ち上げから関わり、ほぼ一人でぶどうの栽培から醸造・販売・営業とすべてをこなしているマルチ人間です。それだけに四恩のワインには、小林さんのすべてが詰まっているといっても過言ではないでしょう。小林さんは自分の造りだしたワインの事を「この子たち」とよびます。とってもユニークでおもしろい子がいっぱい揃っているので、さっそく見てみましょう。

                 
まず最初は、「ローズ(白)2011」。今年収穫したぶどうから造られたヌーヴォーワインです。皆さんのグラスに注いで回ると「エー!何これ?」の声が聞かれます。デラウェアーという品種の白いワイン(初恋の味カルピスのような色)で、さらに辛口です。フレッシュですが、しっかりとした味わいのワインです。最初から驚かされてしまいました。


2番目のワインは、「窓辺(橙)2010」です。橙(だいだい)って何?またも疑問。みかんの皮のような、だいだい色のことです。このワインは甲州種で造られていますが、小林さんは、ぶどうの持っている要素を十分に引き出す為に、ぶどうを皮ごと漬け込み、酸や果実味と共に苦みや渋みも抽出して発酵させる「かもし発酵」を行っています。それぞれの要素のバランスが難しいと思いますが、出来上がったワインは、輝きのあるきれいな淡い橙色をした優しい味わいの辛口ワインになりました。軽い苦みや渋みが旨味に変わり、ふくらみのあるワインですので、幅広くお料理に合いそうです。実は、この窓辺(橙)2010の原料の甲州ぶどうは、勝沼町菱山地区にあります


我が家の畑の甲州が使われています。昨年のレポート(第35・36・37回)を振り返ってみると、ベト病に悩まされながら、手入れに手入れを重ねて、送り出した当時の事が思い出されますが、小林さんのおかげで、こんなに美味しいワインに変身してくれました。ぶどうの生産者としてもとても嬉しいです。今年2011年の甲州はベト病もほとんど無く、昨年に比べてはるかに良い状態で10月20日に四恩さんに送り出してあります。来年の今頃、どんな風に変身した子になっているか、皆さんと一緒に楽しみに待ちたいと思います。
さて、3番目のワインは、微発泡のスパークリングワイン「クレマチス(ロゼ)2011」でやはりヌーヴォーワインです。イチゴのような可愛いピンクのロゼで、やや辛口のちょっと大人の味、微発泡なので泡が苦手な方にもおすすめの爽やかな味わいです。簡単に取れる王冠がユニークですね。

さあお待ちかね!!ここで本日の一大イベント「ルミアージュ=動瓶」の作業を小林さんが実演してくれました。「クレマチス」や「夏の陽」などスパークリングワインの醸造工程の一部で、瓶の中で再び発酵した(瓶内二次発酵)後のワインのオリを瓶の口元に集める作業です。皆さんが座っている席の真ん中の空間に、「へ」の字形をしていて穴が沢山あいている、木製の台が置かれています。ピュピトル(オリ下げ台)と言います。ピュピトルには瓶内二次発酵の終わったワインのボトルが、台に直角に刺してあります。このボトルを毎日8分の1ずつ左右に振りながら徐々に下に傾け、2〜3週間かけて中のオリを口元に集めるのです。この作業をルミアージュ=動瓶といいます。最終的にボトルは、台の上で逆立ち状態になっています。このボトルを台から抜いてサッと起こして、パッと王冠をはずすと、中の炭酸ガスによって口元のオリが、勢いよく外に吹き出すのです。そしてすぐにもう一度王冠をかけて「クレマチス」の出来上がりです。ここで、ふと疑問がわきました。なぜ毎日8分の1ずつ動瓶するの?最初から瓶を逆さにしておけば良いのに?小林さんが答えます。

「最初から逆さにしておくと、オリがフワッと溜まってかさが大きいですが、 8分の1ずつ動かして溜めていくと、オリの密度がこまかくなり、かさが半分位に縮まるので取り除きやすいのです。」ナルホドー、感動しました。説明を聞いた後の「クレマチス」は何ともいとおしい味がしました。

最後のワインは、「窓辺(赤)2010」です。やや赤みがかった淡いルビー色。バラやいちご・カシス・梅・スパイスなどの複雑な香り。味わいは、おや?ニコッっていう感じ。色合いの割に、酸や渋みもしっかりしているのにとっても優しい。小林さんの目指す赤ワインは、色が濃ければ良いというものでは無い。優しく、お料理のじゃまをしない、それでいてしっかりと自分を主張できるワイン。飲んで美味しかった、また次にも飲みたいと思えるワインを目指しているそうです。ラベルにぶどう品種名が書いてないのも、先入観を持たないで飲んでほしいからだそうです。皆さんすっかり小林ワールドにひたってしまいました。このほかにも小林さんは、ワインとワインの間のお口直しにと、ジュースなども持って来てくださり本当に有難かったです。




最後に、本日のメインのおつまみを記しておきましょう。はりきり娘RYOUKOさん作の「ナポリピッツァ」です。


ほんの1切れしか味わってもらえませんでしたが、皮がサクサクもっちりで、冷たくなっても、固くならない工夫がされています。 「美味しい」という声が、あちこちから聞こえてきます。原料をイタリア産にこだわったこのピッツァが、皆さんのワインのお供になったらとても嬉しいです。


「ワインは、気楽にゆったりと、美味しいお料理と一緒に楽しみましょう。」という 小林さんの言葉が印象的なワインセミナーでした。



 この11月のセミナーで今期は冬休みに入ります。来年4月にまた皆様にお目にかかりましょう。それまでお元気で!!!