かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原
第46回
2012.05.06    
参加者 県外17名、県内8名 計25名                
講師 大山シニアソムリエ・篠原シニアワインエキスパート  
ゲスト  まるき葡萄酒(株) 栽培家 伊藤 様          
アシスタント のぶ子さん         

ワインリスト
1 ルバイヤート(白)丸藤葡萄酒工業(株)   
2 ルバイヤート(赤)   〃        
3 まるき 自園ブラン甲州 2010 まるき葡萄酒(株)    
4 まるき 自園ルージュ ベリーA&カベルネ 2010 〃     



料理
1 干し柿                           
2 カナッペ                          
3 スモーク・ド・タクワン(まるき葡萄酒製)と漬物       
4 春野菜                           



セミナーの内容
1 甲州ぶどうのお話                      
2 甲州種ワインのお話                     
3 ワインテイスティング                    
4 本日のゲスト まるき葡萄酒 伊藤様のお話          

レポート  五月晴れの広い草原に心地よい緑の風が吹き渡り・・・と言いたいところですが、天気予報は午前はくもり午後から雨。それでも暑くもなく丁度良いお天気で「よかったー」と思ったのもつかの間、この後とんでもない事が!!     

GW最後の大切な日曜日に、総勢25名のお客様がワインセミナーに来てくれました。本当に嬉しかったです。それだけに皆さんの期待にこたえられるような楽しいセミナーにしたいと力がはいります。大山シニアソムリエも気合が入って、いつもより大きな声で会場を盛り上げています。皆さんの気持ちがひとつにまとまったところでいよいよスタート。                           

まず最初はいつものように、大山シニアソムリエによる「甲州ぶどうのお話」と「甲州種ワインのお話」、引き続いてワインテイスティングです。今期の当セミナーハウスワインは、丸藤葡萄酒工業(株)のルバイヤート白・赤です。(コメントは前回のレポートで) 皆さんワインがお口に入ると緊張がほぐれてとたんに笑顔に。そしてここでようやく目の前のおつまみが食べられます。本日の試食のおつまみは、メインが、まるきさんのオリジナルのスモーク・ド・タクワン。タクワンの燻製ですが、これがとても甲州と良く合うんですね。それと旬の春野菜。我が家の朝どりラディッシュも丸かじりしていただきました。



さて、ワインが入ってホッとした後はいよいよゲストの登場です。 今期の当セミナーのゲストは、これからの山梨のワインを担う若手のぶどう栽培家や醸造家をお招きして、その夢を語ってもらい、今後とも応援しながら見届けていきたいという思いでおります。そのトップバッターが、本日のゲスト、まるき葡萄酒(株)の伊藤さんです。

ゲストの紹介が終わっていざ本番という時に、あのとんでもない事が起こったのです。 

さっきまで晴れたり曇ったりのお天気が急変し、あたりが暗くなってきたかと思ったらものすごい豪雨。かみなりが鳴り、雨がテントの中に吹き込んできて大騒ぎに。皆さんの背中が濡れないように、みんなで協力してテントを持ち上げ、位置を変えてホッとしたのもつかの間、今度はテントとテントのつなぎ目からザーっと雨が落ちてきてテーブルはびしょ濡れ。もう皆さん座ってはいられません。風に飛ばされないように皆でテントをつかまえたり、テーブルを拭いたり、椅子を動かしたりして、この豪雨が通り過ぎるのを待っていました。 

いつしか周りの朝市出店者は、お店をたたんで避難してしまいましたが、このテントの中は、だれひとり帰ろうとする人も無く、ワイワイガヤガヤ。15分位経ったでしょうかやっと雨もおさまり、皆さんのおかげで何も無かったかのようにセミナーを再開する事が出来ました。                 

ゲストの伊藤さんのお話です。                     
伊藤さんは、まるき葡萄酒(株)に入社して今年で5年目。自社畑の栽培や管理を担当している新進気鋭の栽培家です。自社畑では、棚栽培の甲州・メルロー、 



垣根栽培のカベルネソーヴィニヨン・マスカットベリーAなどを栽培し、カベルネとベリーAは両方をブレンドして2009年からワインを造っているそうです。

自社畑のワインは、まるきワインの中ではまだ1割未満の量ですが、これからメルローなど収穫出来る品種が増えてくるので、将来が楽しみです。


伊藤さんの栽培法は、減農薬(最少限のボルドー液のみ使用)で、あえて草を生やす「不耕起草生栽培」という方法を取り入れているそうです。できるだけ自然に近い環境で育てるぶどうは、何より安全だし、ぶどうの持つ本来の個性が表れてくると考えられます。

これから夏にかけ、畑は雑草に覆われますが、雑草の中にはアブラムシなどの害虫が住み、またその害虫を食べるテントウムシなどの益虫が育つという自然の営みが繰りかえされます。一方、ぶどうの木は、地表が雑草の根で覆われているので、養分を求めて地中深くに根を張り、自力で養分を吸い上げるため、たくましく、凝縮した味わいの実をつけるそうです。

「草取りをしない分だけ、手間が掛からなくて良いですね。」という声に、「除草剤や農薬を使用しないので、草刈など定期的に行って、常にぶどうの木にとって良い環境にしておくのは、とても大変なことです。」と返事が返ってきました。


伊藤さんのお話を聞きながら、まるき葡萄酒のワインをテイスティングしました。

「まるき自園ブラン 甲州 2010」は、グレープフルーツ等柑橘系の香りやナッツの香りが立ち上がり、たっぷりの果実味としっかりした酸がバランス良く融合し、まろやかで芳醇な味わいのやや辛口の白ワインです。         

「まるき自園ルージュ ベリーA&カベルネ 2010」は、やや赤味がかったルビー色で、色合いと似かよった色の果実、ストロベリーや木いちご又、カシス・スパイス・梅など複雑な香り。程良い酸ときめの細かいタンニンにより、厚みのあるミディアムフルボディーの赤ワインになっています。伊藤さんは、このワインを飲んで、自然と共生して出来上がったワインを感じていただけたら嬉しいそうです。将来は、自分で直接ワインを醸造したいと夢を語ってくれました。お話が終わった後、沢山の質問が出ました。静かな口調で淡々と語るその自然体が、畑でぶどうの木に向かう時の姿勢になっているのかな、とふと思いました。    

伊藤さん、本当にありがとうございました。




きょうは、大ハプニングのワインセミナーとなってしまいましたが、これも楽しい思い出の一コマとして、みなさまの記憶の一頁にとどめていただけたら幸いです。  

篠原