かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原

 第52回かつぬま朝市ワインセミナー
2012.11.04




参加者
県外27名  県内4名  計31

講師
大山シニアソムリエ ・篠原シニアワインエキスパート  

アシスタント
のぶ子さん

ゲスト
盛田甲州ワイナリー(株) 矢ア 様

ワインリスト
1 シャンモリ・柑橘香(かんきつか)甲州 辛口 2011 盛田甲州ワイナリー(株)
2 シャンモリ・樽熟甲州(白)勝沼ワインバレー仕込み 2010 〃
3 シャンモリ・甲州 一升瓶  〃
4 シャンモリ・樽熟成 マスカット・ベリーA 2011 〃




料理
1 ミニ田楽
2 カナッペ
3 月の雫、オリーブ新漬け
4 栗




セミナーの内容
1 甲州ぶどうのお話
2 甲州種ワインのお話
3 ワインテイスティング
4 盛田甲州ワイナリー(株) 矢ア様のお話




レポート  2012年11月、かつぬま朝市100回記念の日のワインセミナーです。  
当ワインセミナーも52回目を迎え、ワイン好きの皆様に愛されるセミナーになってきたと思います。これもひとえに朝市会の方々や大山シニアソムリエ、又、参加者の皆様のおかげと感謝しています。これからも益々この朝市が発展していくことを心から願っています。
さて、今回のワインセミナーは、前日が「新酒まつり」ということもあり、予約が殺到し10月の時点で受け付け完了となってしまいました。参加を希望してくださった皆様には、まことに申し訳ありませんでした。是非次回のご参加をお待ちしております。

さあ、今年最後のワインセミナー、きょうも張り切ってスタートです。


大山シニアソムリエによるやさしいワイン講座。「甲州ぶどうのお話」、「甲州種ワインのお話」、「ワインテイスティング」と進みます。いつにも増して熱がはいりタイムオーバー。


ハラハラしながらネジを巻くサインを出します。大山シニアソムリエのユーモアとおいしいワインがお口に入って皆さんにこにこ顔になりました。そして本日のゲスト、シャンモリワイナリーの矢ア様の登場です。



シャンモリワイナリーさんは、この朝市会場の道をはさんで反対側、赤い屋根の大きな建物のワイナリーです。朝市の為に駐車場やトイレなどを開放してくださり、いつもお世話になっています。11月に入ってもワイナリーはまだまだ大忙し。貴重な時間をさいてワインセミナーにご出演くださり、本当に有難いです。

矢アさんは、ワインの醸造歴20年以上のベテラン醸造家です。今年の7月に山梨大学認定の「ワイン科学士」の資格も取得されました。早速本日最初のワイン「柑橘香甲州 2011」について詳しく説明してくださいました。


「柑橘香甲州」は、甲州市勝沼町上岩ア地区の契約農家、秋山さんのノンボルドー栽培による甲州ぶどうを使用し、通常の収穫時期より早めの収穫(香りが一番大きい時)を行い、又、醸造に用いる酵母も、香りが引き立つ要素を持った酵母を用いるなど、専門的な醸造のお話をしてくださいました。突然ですが、ここでハプニングが・・・。噂をしたら何とやらで、たまたまその時、このワインのぶどう栽培家の秋山さんが、このワインセミナーに立ち寄られたのです。


ご本人いわく、「昼飯のおかずを買いに朝市に来たら、矢アさんが見えたので寄ってみた。」とのことです。グッドタイミング!秋山さんから、ボルドー液を使わずにぶどうを栽培する難しさ、又、一生懸命に手を掛けてやれば、ぶどうもそれに応えて良い実をつけてくれるなどのお話を聞くことができました。

栽培家、醸造家のご苦労の結晶「柑橘香甲州 辛口2011」は、見事今年の2012年国産ワインコンクールにおいて銀賞を受賞しました。以下テイスティングコメントです。
・「柑橘香甲州辛口 2011」・・・レモン・グレープフルーツ・青りんご・みかんの花・アカシヤの花などの香り。スワリング(グラスを回してワインの中に空気を取り込む)する毎に香りが大きくなり華やか。たっぷりの果実味と切れの良い酸。かすかな苦みがこのワインに膨らみを出している。フレッシュでさわやか、後味のスッキリとした辛口の白ワインです。

2番目のワインは、「樽熟甲州(白)勝沼ワインバレー仕込み 2010」です。
2010年は天候不順の影響で、県内のぶどうが「ベト病」による大打撃を受けた年です。手入れに手入れを重ねた選りすぐりのぶどうの粒のみを使用。「農家の苦労を生かさなければ」の思いで、心血を注いで醸造したワイン。フリーラン果汁(プレスをかけないで、ぶどうが自分の重みでしたたり落ちてくる果汁)のみ使用。ステンレスタンク発酵後、約6か月間フレンチオークの樽で熟成したワインです。2012年の国産ワインコンクールで、見事栄えある金賞に輝いた
素晴らしいワインです。


・「樽熟甲州(白)勝沼ワインバレー仕込み 2010」・・・輝きのある淡い黄金色。黄色いお花・オレンジ・ハッサク・バニラなど少し落ち着いた香り。口に含むと豊富なミネラルを感じたあと、果実味・酸味をなめらかで優しい樽の風味が包み込む様な、ボリューム感のあるリッチな味わい。先ほどの「柑橘香」との比較がおもしろい。

3番目のワインは「甲州 一升瓶」。皆さんお待ちかねのワインです。
3年程前から、地元の方に気楽に飲んでもらいたいワインとして造られたそうです。ワイングラスよりも湯呑茶碗が似合いそうなこのワインは、ちょうど朝市の為に門戸を開いて、駐車場やトイレなどを開放してくださった時期と重なります。私などは「朝市の為に造ってくれたワイン」と言いたい、親しみのもてるワインです。


今日は甲州種ワインの持つ色々な顔@香りが少ないと言われた甲州から、華やかな柑橘系の香りを引き出した「柑橘香甲州」、Aフレンチオークの上品な樽香により、香り・味わい・ボリュームが一段と複雑性を増した、ワンランク上の「樽熟甲州」B素朴な甲州の持つ素の顔、まるでぶどうを栽培している農家の人の様な、飾らない人情味のある、親しみやすい「甲州一升瓶」と甲州のバリエーションの広さを味わうことが出来ました。

最後に赤ワインファンの為に「樽熟成 マスカット・ベリーA 2011」をテイスティングしました。このワインは私篠原がずっと注目しているワインです。
やはり2012年の国産ワインコンクールで銅賞を受賞しました。近年マスカット・ベリーAが注目されていますが、ぶどう由来の甘い香りを樽を使うことにより上品に包み込んで、心地よく香りを感じ、またそれによってお料理とのマリアージュの幅も広がります。
・「樽熟成 マスカット・ベリーA 2011」・・・紫がかったきれいなルビー色。
若々しい色合い。ストロベリー・ブルーベリー・カシス・バニラの香り。豊富な果実味と優しい酸、きめの細かい軽いタンニン、ミネラルなどがバランス良く融合し、上品な樽の香りに包まれている。アフターにぶどう由来の甘い香りが戻ってくるのが心地良い。なめらかな味わいのミディアムボディーの赤ワインです。
矢アさんのお話が続きます。
「勝沼の風土を大切にして、この土地ならではの味わいのワインを造りたい。」がモットーのシャンモリワイン。「今日のワインの中で、お好きなワインに手を上げてください。」の言葉に、同じ方が何度も手を上げてくれました。

矢アさんのトツトツと語る言葉に、ワインと真剣に向かう姿が伺え、又、造り手からお話を聞きながら味わう素晴らしいワインに、皆さんすっかりシャンモリファンになったようです。同席していたシャンモリワイナリーの村田さんから、セミナーの後、ワイナリーの工場見学と畑の見学にご案内くださるとの申し入れがあり、皆さん大喜びでした。


今日は、朝市100回記念の新聞報道もあり、歩いている人の肩が触れ合うほどの大賑わいでした。ワインセミナーも超満員の状態で、さらにセミナー全体を取り囲むように立ち見のお客様が来て、熱心にお話を聞いてくださいました。



色とりどりのぶどうの紅葉が真っ盛りの美しい勝沼で、抜けるような青空のもと、本当に清々しいワインセミナーでした。ご協力いただいたシャンモリワインさん、矢アさん、村田さん、それから我らがシニアソムリエの大山さん、本当に有難うございました。今回でセミナーは冬休みに入り、次回は来春4月の開催になります。来年も又、楽しいセミナーにしたいと思いますので、どうぞご期待ください。それまで皆様お元気で、ステキなワインライフをお過ごしください。      篠原