第54回かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原


2013.05.05

参加者
県外14名 県内4名 計18
講師
篠原シニアワインエキスパート

アシスタント   深澤さん 尚江さん 岩田さん

ゲスト
丸藤葡萄酒工業(株)工場長 狩野 様


ワインリスト

1 ハラモ・ブラン 2012 原茂ワイン(株)
2 ルバイヤート 甲州 シュールリー 2011 丸藤葡萄酒工業(株)
3 ルバイヤート マスカットベリーA 樽貯蔵 2011  〃
4 シャリオ・ドール (白)1987 (甲州)      〃

おつまみ
1 お刺身こんにゃく
2 ふたねや製麺所さん提供 「ほうとう娘のかりんとう」
3 クリームチーズ冷奴風
4 春キャベツ

セミナーの内容
1 甲州ぶどうと甲州種ワインのお話
2 ワインテイスティングの方法
3 本日のゲスト 丸藤葡萄酒工業(株)工場長 狩野様のお話



レポート  
今日は「こどもの日。
「こどもの日、おとなは朝市ワインの日」、おとなも楽しい「こどもの日」です。澄みきった五月晴れの下、朝市会場は超満員のお客様。我がワインセミナーも予約の方の外に、次から次へと当日申し込みの方 がやって来てくれて、ほぼ満員状態です。



さあ、今日も張り切ってスタートです。いつものように初参加者の為の「甲州ぶどうと甲州種ワインのお話」と、つづいて「ワインテイスティングの方法」です。テイスティングワインは、今期は原茂さんのワインです。


・ハラモ・ブラン 2012 原茂ワイン(株)
ややグリーンがかった淡いイエロー。オレンジやイヨカンなどの柑橘系の香り。たっぷりの果実味としっかりとした酸。この酸と甲州特有の軽い苦み、完熟ぶどうによる粘性によって厚みのあるボディに仕上がっている。よく陽のあたった果実を思わせるフルーティーな味わいのやや辛口の白ワインです。




「ワインテイスティングの方法」の練習の後は、お待ちかねの本日のゲスト
丸藤葡萄酒工業(株)の狩野さんの登場です。


狩野さんは丸藤葡萄酒工業勤務20年の大ベテラン。醸造責任者で工場長です。大学では電子工学を勉強したのに、何故かワインの道へ。学生時代に飲んだワインの味にすっかり魅せられ、迷うことなくこの道に進んだそうです。    
狩野さんが入社した20年位前は、日本のワインもまだまだ試行錯誤の時代。


丸藤さんでも、垣根栽培をスタートさせたり、シュールリー製法を取り入れた醸造を始めたりと、変化の時代、テャレンジの時代でした。その移り変わりがおもしろく、夢中でワインに向かっているうちに、あっという間に20年経ってしまったそうです。そして今や丸藤さんの「甲州シュールリー」は大勢のファンに愛され、また2012年の国産ワインコンクールで見事金賞を受賞する栄誉に輝きました。



本日の丸藤さんの最初のワインは、その金賞ワイン(今はもうワイナリーでも完売で販売していません。私篠原が今日の為に確保しておいたワインです。)で、早速味わいました。
・ルバイヤート 甲州シュールリー 2011  丸藤葡萄酒工業(株)
ややグリーンがかった透明に近いレモンイエロー。色合いから若々しさを感じ、る。レモンやライムなどの柑橘系の香り。フレッシュな果実味ときりっとした酸を感じた後、中盤からの軽い苦みが旨味に変わり心地よい。アフターにイースト香や吟醸香がもどってくる。全般的に酸がリードして、切れの良いさわやかな辛口の白ワイン。

2種類の甲州を比較テイスティングした後は、赤ワインの「ルバイヤートマスカットベリーA 樽貯蔵 」です。その名前からマスカットベリーA100%と思いがちですが、このワインには、プティヴェルドーが5%ブレンドされていて、味わいに酸味と深みを与えています。
・ルバイヤート マスカットベリーA 樽貯蔵 2011 丸藤葡萄酒工業(株)
やや紫がかった淡めのルビー色。少し落ち着いた色合い。ぶどう由来の甘い香り、すみれ、ストロベリー、チェリー、いちごジャムなどの香り。優しい口当たりで、果実味、酸味、細かなタンニンが上品な樽の香りに包まれて、バランスがとれている。アフターにバニラやロースト香が戻ってくる複雑味のあるミディアムボディーの赤ワイン。

ここで、参加者から、「ルバイヤート」の名前について質問がありました。すると、狩野さんは、待っていましたとばかりに、ポケットから一冊の本を取り出して皆さんに見せました。詩集です。「ルバイヤート」とは、ペルシャの古い詩の形、4行詩で書かれた詩集のことを言うそうです。その最も有名な詩人である「オマール・ハイヤーム」の詩集に紅の美酒と美女をうたった詩が多いことから、明治29年にこの大村家の醸造所を訪れた詩人の日夏耿之助(ひなつこうのすけ)氏が、大村家のワインにと命名されたそうです。そのお話の後、狩野さんは、ご自分がいちばん好きだという一篇の詩をこの朝市会場で朗々と読み上げたのです。(後述)参加者の皆さん、最初はあっけにとられた様子でしたが、その内容に共感し、うなづき、拍手がわきおこりました。


「詩とワインのマリアージュ」。素晴らしい!!なんという格調高いワインセミナーでしょう。(笑)そしてまだ興奮がさめやらぬうちに、またまたハプニングです。

狩野さんから赤ワインのプレゼントがありました。「ルバイヤート プティヴェルドー 古町屋収穫 2011」です。


プティヴェルドーというぶどう品種は、フランスのボルドー地方で、カベルネソービニヨンやメルローやカベルネフランなどの補助品種として、少量ブレンドされる品種です。狩野さんによると、収穫期が遅いが病気には強い。また、強いタンニン、スパイシー、濃い色調などの特徴を持つ。この品種が日本の、勝沼のテロワール(気候・地勢・土壌などのことをいう)の中では、ボルドーとは違ったやわらかい味わいを出すのだそうです。このプティヴェルドー2011にはマスカットベリーAが10%ブレンドされています。

・ルバイヤート プティヴェルドー 古町屋収穫 2011  丸藤葡萄酒工業(株)
グラスの中央にやや黒味がかった色合いの見える若々しいルビー色。カシスや黒系果実や黒コショウなどのスパイスの香り豊か。しっかりとした酸と程良いタンニンでバランスのとれた味わいと骨格をつくっている。全般的に優しい味わいのミディアムボディーの赤ワインです。いままでプティヴェルドーは、色が非常に濃くて、タンニンも歯ぐきが渋々になるほどの強いワインを飲んだ記憶しかない私はびっくり。これなら和のお料理にも合いそうです。


思いがけなくボルドー品種の赤ワインをいただいた後に、本日最後のワインです。このワインも白の甲州です。えっ?赤ワインの次に白ワイン?とお思いでしょうが、飲んでみればわかります。
・シャリオ・ドール(白) 1987 (甲州100%) 丸藤葡萄酒工業(株)
甲州を長期熟成させた甘口の白ワイン。ヴィンテージは間違いなく1987年で、
26年物のワインです。(オドロキー!!)
「シャリオ・ドール」とはフランス語で「金の馬車」の意味だそうです。先程の「ルバイヤート」と同じく「日夏耿之助」氏からいただいたワインの名前だそうですが、このワインが造られるのを予想していたかのようにぴったりです。
グラスに注ぐと、澄み切ったまばゆいばかりの黄金色。美しい!!
飲むのを忘れて見入ってしまいます。
・非常に輝きのあるきれいな黄金色。クリーン。黄色いお花、黄色い桃、パインやマンゴーなど南方の果実の香り。イースト香。味わいは、さっぱりとした甘みとそこに溶け込んでいるしっかりとした酸のバランスが絶妙で、まろやかでふくよかな甘酸っぱさを感じる。26年物のヴィンテージを感じさせない軽やかで上品な甘口白ワイン。

先日、あるワイン会で丸藤さんの大村社長の隣に座る機会を得ました。お食事の最後に白の甘口のデザートワインを飲まれて、「やっぱり、ほっとするね。」と言われたのを思い出しました。きっとこの「シャリオ・ドール」を飲んでも同じ言葉が出ることでしょう。


今回は120年以上も前から(1890年、明治23年創業)勝沼でワインを造り続けている老舗中の老舗、丸藤葡萄酒工業(株)の素晴らしいワインを味わうことが出来ました。日本を代表するワイナリーのひとつですが、今や、国内にとどまらず、ヨーロッパや中国・シンガポールにと販路を拡大しています。もっともっと多くの国々にこの日本の素晴らしいワインを紹介していってもらいたいと思います。

本日のゲストの狩野工場長の楽しいお話をずうっとお聞きしたいのですが、時間になってしまいました。狩野さん本当に有難うございました。最後に狩野さんのお気に入りのルバイヤート(4行詩)を記しておしまいです。



  酒を飲め、それこそ永遠の生命だ、
      また青春の唯一の効果(しるし)だ。
    花と酒、君も浮かれる春の季節に、
     たのしめ一瞬(ひととき)を、それこそ眞の人生だ!



そうそう大切な事をもうひとつ。
今日のおつまみの「ほうとう娘のかりんとう」は、朝市出店者の「ふたねや製麺所」さんの差し入れでした。油で揚げたかりっとした香ばしさと程良い塩味が甲州にぴったりでした。ふたねやさん有難うございました。




次回のワインセミナーもどうぞお楽しみに。
 

篠原