かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原

第55回 2013.06.02

参加者  県外10名  県内10名  計20名
講師  篠原シニアワインエキスパート
アシスタント   深澤さん 尚江さん 岩田さん
ゲスト  中央葡萄酒(株)営業担当 金子 様(シニアワインアドバイザー)




ワインリスト
1 ハラモ・アジロン 2012 原茂ワイン(株)
2 グレイス 甲州 菱山畑 2012        中央葡萄酒(株)
3 グレイス 甲州 鳥居平畑 プライベートリザーブ 2012 〃   
4 周五郎のヴァン (赤) 〃  




おつまみ
1 お刺身こんにゃく
2 ドライイチジク・トマト
3 マシュマロ
4 フレッシュミニトマト






セミナーの内容
1 甲州ぶどうと甲州種ワインのお話
2 ワインテイスティングの方法
3 本日のゲスト 中央葡萄酒(株) 金子様のお話

レポート  梅雨の真只中・・・のはずが、なぜか連日晴天続き。こういうのを「梅雨のずる休み」と言うそうですが、おかげさまで本日の朝市も我がワインセミナーも超満員の盛況です。とうとう定員オーバーで、お断りがでてしまいました。本当にすみません。

今回も素晴らしいゲストさんをお迎えしていますので、皆さんの期待が高まります。早速スタートです。 

最初はいつもの様に、セミナー初参加の方の為に、私篠原の甲州ぶどうと甲州種ワインのお話です。今回は特に、歴史ある甲州ぶどうの大切さを皆さんに知っていただき、私たちが甲州種ワインを愛飲する事が、甲州ぶどうや地元のワイン産業を守っていくのに繋がっているというお話をしました。   
引き続きワインテイスティングの方法です。今シーズンハウスワインの「原茂ワイン」で練習です。                      
・ハラモ・アジロン 2012  原茂ワイン(株)           
エッジに紫のトーンが見える若々しい淡いルビー色。ストロベリー、チェリー、キャンディー、などぶどう由来の甘酸っぱい香りが立ち上がります。アタックはソフト。口に入れた途端に、ぶどうの実をそのまま食べた時の様な果実味が口一杯に広がる。おだやかな酸と細かなタンニンが果実味に溶け
込んで一体となっている。アフターにぶどう由来の香りが戻ってくる。全般的に香りの華やかな、フレッシュでフルーティーなライトボディーの赤ワインです。                               

テイスティングの練習が終わったところで、お待ちかね本日のゲスト、中央葡萄酒(株)の金子さんの登場です。金子さんは、シニアワインアドバイザーとして全国の中でも屈指の実力の持ち主で、以前から私が是非このセミナーに来ていただきたいと願っていた方なので、実現して本当に嬉しいです。


本日テイスティングするグレイスワインは次の3種類です。         
・グレイス 甲州 菱山畑 2012          中央葡萄酒(株) 
・グレイス 甲州 鳥居平畑 プライベートリザーブ 2012  〃
・周五郎のヴァン (赤)  〃 

金子さんが何枚もの説明用のパネルを抱えて講師の位置に立たれた途端に、参加者の方々のムードが一変して、パッと学習モードにスイッチが切り替わりました。皆さんの目がパネルに集中します。     


金子さんの説明です。
まず、ワインの原料となるぶどうのお話です。ぶどうのルーツ、栽培の起源、日本固有の品種である甲州ぶどうの大切さなどをお話いただきました。

そして、ぶどうが植えられている畑(土地)のお話です。

本日のグレイスワインの1番目と2番目は共に甲州種から造られていますが、エチケット(ラベル)には鳥居平畑とか菱山畑など畑の名前も記載されています。一般的なワインのエチケットには、原料ぶどうの収穫地は勝沼産とか山梨県産のように地区名や地域名で書かれているものが多く見受けられますが、畑名で書かれているものとの違いは何でしょうか。昔から旧勝沼町の中でも鳥居平や菱山は特に良い甲州ぶどうが収穫できる場所と言われています。畑の立地条件(斜面の向きなど)や気候(寒暖の差、雨量、日照時間など)や土壌の質などのことを総合してテロワールといいますが、この畑のテロワールによって、収穫されるぶどうの質に違いが出て、醸造されるワインもそれぞれちがう個性となって表れてきます。

グレイスさんの鳥居平畑や菱山畑の甲州ぶどうから造られるワインからは、それぞれの畑を反映した個性豊かな素晴らしいワインが出来上がるので、特別に畑名をエチケットに記載しているのです。



2つの畑名ワインを比較テイスティングしました。
・グレイス 甲州 菱山畑 2012
 透明に近い淡いレモンイエロー。レモン、グレープフルーツ、白いお花、メントールなどのハーブ香などが華やかに立ち上がる。アタックは爽やかでなめらか。たっぷりの果実味と引き締まった酸を感じた後、中盤からの心地よい苦みが最後に旨味のようなまろやかな味わいに変わってくる。果実味・酸味・苦みの個々の味わいが個を主張しながらもバランスがとれて、なめらかさと共にボリューム感をだしている。アフターにミネラルとしっかりとした酸を感じる。若々しく清涼感のある、しっかりした個性の辛口白ワインです。                 

この甲州菱山畑はEU規格にのっとって醸造されているので、アルコール11.5%ですが、度数の低さはあまり感じられません。



このワインに合うお料理を教えていただきました。ワインの持つ酸味・塩味が寿司やお刺身に良く合うそうです。そのほかにもしめサバ、エンガワ+青じそ、ガリ、菜の花とタイのカルパッチョ+ワインビネガー、れんこんとむき海老ミンチのはさみ揚げなどなど、驚く程次から次へとお料理名が出てきます。

続いて鳥居平畑です。
・グレイス 甲州 鳥居平畑 プライベートリザーブ 2012
輝きのあるややグリーンがかった淡いレモンイエロー。黄色いお花、オレンジ、イヨカンなどの柑橘類。ミネラル、バニラの香り。アタックはふくよかでなめらか。しっかりしているが突出しない酸と旨味のある苦み。これらの要素が日光がたっぷり当たって完熟した豊かな果実味に融合して、バランスのとれたふくらみのあるワインを造っている。芳醇な包容力のある上品な辛口白ワインです。



このワインに合うお料理は、ふきのとう・たらの芽などの山菜の天ぷら、アユの塩焼き、また魚介からお肉まで幅広いお料理に合うそうです。

以上2種類の甲州と今日のセミナーのおつまみとのマリアージュです。
金子さんの合図で、お刺身こんにゃくを調味料を変えて試しました。甘味噌・・やっぱりお味噌と甲州は相性が良い。鳥居平の方がよりピッタリ。岩塩・・・ワインがよりおいしくなる。おろししょうが・・鳥居平に含まれる土っぽさと相性が良い。わさび・・しょうが程ではない。また、フレッシュミニトマトのヘタを取った時の青臭さがソーヴィニヨンブランの香りににていて、ミニトマトと甲州の相性も良い。

金子さんのお話の中身の濃さに驚きの連続です。皆さん本当に楽しそうに試していました。そしていよいよ最後のワインです。
・周五郎のヴァン (赤)
大正〜昭和にかけて活躍した文豪「山本周五郎」(大月市出身)が、「暗がりの弁当より」という随筆集の「笑われそうな話」の中で、「本当のヴァンらしいヴァン」と表現し、「こんなうまいブドー酒が日本でできるのか」と言ったワイン。セパージュは、マスカットベリーAと甲州。アルコール
16.0%



日本で唯一のソレラシステム(シェリーの製法で、味わいと質を均一にするための熟成方法)で、150本の樽を使用して造っている。テイスティングです。熟成が進んで落ち着いたガーネット色〜レンガ色に移るくらいの色合い。香りのボリュームは大。紹興酒、シェリー、枯葉、紅茶、たばこ、マッシュルーム、干ぶどうなど複雑で華やかな香り。アタックは、アルコールの強さや甘みからくるボリュームの大きさを感じ、しっかりとした酸と軽いタンニンが心地良い。樽からくる焦がした香ばしさや、ローストしたナッツ、黒糖、黒蜜などの味わい。非常にコクのある複雑でスケールの大きい、芳醇な味わいの極甘口の酒精強化(フォーティーファイド)ワインです。食前酒でも食後酒としてでも良い。デザートのアイスクリームや、地元の桃農家が自家用に作る桃のシロップ煮を冷凍したシャーベットにかけて食べるとこれは絶品です。
食べるワイン(笑い)として、さらに本日のおつまみのマシュマロ(チョコレート入り)や信玄餅に黒蜜の代わりにかけてもバツグンです。


金子さんの張りのある声と、テンポの良い口調に皆さんすっかり金子ワールドに浸ってしまいました。素晴らしい時間はあっという間に過ぎて、最後に皆さんから質問をいただきました。
・スクリューキャップについて
・エチケット(ラベル)について
・EUの基準について
・グレイスさんの他の畑との比較について
などなど時間を延長しても、まだ皆さん帰りたくないようでした。
     
最後に、金子さんを囲んで記念写真を撮り、おなごり惜しいですが終了となりました。
金子さん、お忙しいスケジュールをさいてのご出演、本当に有難うございました。短時間でしたので、話し足りない、また参加者の方ももっと聞きたい思いが残ったと思います。是非又、機会を見つけて、再度のご出演をお待ちしております。

篠原