かつぬま朝市ワインセミナーレポート by 篠原シニアエキスパート





かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第56回 2013.7.7

参加者
県外11名 県内6名 計17名
講師 篠原シニアワインエキスパート
アシスタント 深澤さん、尚江さん
ゲスト ビストロ・ミル・プランタン オーナーソムリエ 五味様

ワインリスト
1 ハラモ ヴィンテージ甲州 シュール・リー 2011 原茂ワイン(株)
2 香り甲州 辛口 2012 PB 大泉葡萄酒(株)
3 シャトージュン 甲州 2012 シャトージュン(株)
4 シャンテワイン 甲州樽発酵 2012 (株)ダイヤモンド酒造


おつまみ  クラッカー



セミナーの内容
1 お知らせ
2 本日のゲスト ビストロ「ミル・プランタン」 五味様のお話とワインテイスティング   
3 ワインを楽しむワンポイント

レポート
きょうは七夕。梅雨明け宣言を待っていたかのように、真夏の太陽が照りつける暑いワインセミナーになりました。アツかったのは今日だけではなく、実は今回のセミナーが開催出来るかどうか、いや何としても開催したいという熱い思いがようやく七夕様に届いて、何とか無事に開催にこぎつけました。


セミナーを始めるにあたり、参加者の皆さんに、保健所の食品衛生法による指導の件をお話して、このセミナーを存続するには何にしても皆さんのご協力が不可欠とお話させていただきました。参加者の皆さんには快くご賛同いただけたものと思っています。スムースに新しいやり方に移行できました事を心から感謝いたします。

さて、本日のセミナーは特別企画「甲州を極める」と題して、早速ゲストの五味さんに登場していただきました。

五味さんは、中央自動車道勝沼インターチェンジから国道20号を甲府方面へ2〜3分行ったところにあるフレンチレストラン「ビストロ・ミル・プランタン」のオーナーです。日曜日のランチ前の時間といえばとても忙しい時間帯にもかかわらず、開店時間をずらしてこのセミナーに駆けつけてくださいました。本当に嬉しかったです。五味さんの略歴です。

五味さんは、18年間東京銀座のフレンチレストラン「レカン」に勤務され、ソムリエの最高責任者シェフソムリエまで勤め上げられた方です。2010年に「ビストロ・ミル・プランタン」をオープンされて、オーナーとして多忙を極められていますが、さらにワイン雑誌「ワイン王国」のコメンテーターとして、またワインスクールの講師として、またワイン関係の執筆などなど大活躍の方です。五味さんの本格的な華麗なるワインテクニックは必見ですよ。


さあいよいよ4種類の甲州の飲み比べ(比較試飲)スタートです。まず、ボトルのオープンです。皆さんの目が五味さんの持つソムリエナイフに集中します。ボトルの首のふくらみの下にナイフを当て、カーブに沿って引きます。ボトルを少し回して再度ナイフを引くと、もうキャップシールがきれいに一直線に切れているので、あとは一か所縦に切れ込みを入れてキャップシールをはがします。



あっと言う間のことです。次はコルクです。ソムリエナイフのスクリューの先に人差し指を当てて、コルクの中央にやや斜めの角度でスクリューを差し込みます。力を少し入れながらスクリューをまっすぐに起こして、ゆっくり3回ほど巻くと、コルクの中央にスクリューが立った状態になります。



ここからは特に力を入れなくてもOK。スクリューを上から一巻き位残すまで巻いたところで、栓抜きの部分で引き抜きます。五味さんのソムリエナイフは、栓抜きの部分が2つ付いているダブルアクションですので、最初に上の部分で上がるまで引き抜き、次に下の部分を使ってコルクを8分目位まで抜きます。

最後に手でコルクを握り引き抜きます。コルクをスクリューからはずし、香りを確認してテーブルの上に置きます。この動作が1分かからない内に行われるのです。流れるような指さばき。ソムリエナイフの扱い。美しい・・・。
    
おっと、うっとりしていてはいけない!!参加者の皆さんにボトルを回して、ご自分で注いでいただきます。




1番目のワインです。



・ハラモ ヴィンテージ 甲州 シュール・リー 2011  原茂ワイン(株)
このワインは、2012年国産ワインコンクールで金賞を受賞したワインです。最初から金賞ワインとは豪華です。シュール・リー製法は、アルコール発酵後、濾過をせずにそのまま5〜6か月オリと接触させておくことにより、オリに残っている酵母がアミノ酸に変化して旨味となり、味わいに厚みが出てきます。五味さんの説明の通り、ワインをグラスに注ぐとすぐに酵母やイーストの香り、みかんなどの柑橘の香りが出てきます。たっぷりの果実味、しっかりした酸、中盤からの軽い苦みがダシのようなおいしい旨味に変化し、アフターまで続く。若々しい、酸がリードしながらも まとまりのある厚みのある辛口白ワインです。


続いて2番目のワインです。
・香り甲州 辛口 2012 プライベート・ブランド  大泉葡萄酒(株)   
大泉さんの香り甲州は、通常は辛口とやや甘口がありますが、この辛口は、「勝沼ワイナリーマーケット」(新田商店)さんの「プライベート・ブランド」で、限定600本、新田商店のみの販売のレアなワインです。

ノンボルドー栽培で香りを生かした甲州ぶどうを使用し、アルコール発酵後無濾過でにごりを残している。ボトルの底に少しオリが溜まっているのが見える。                                
香りは豊か、グレープフルーツや、レモン、白いお花など清々しい香り。
アタックはなめらか、たっぷりの果実味とシャープな酸と塩味を感じる。中盤からの軽い苦み。全般的に酸が非常にしっかりしていて、甲州の持つねっとり感と共に個性的な味わいを出している辛口白ワイン。ひと口飲むごとに胃を刺激し、食欲をそそる。夏の夜、テラスで、キリっと冷やして、レモンを掛けたお刺身や白身魚のカルパッチョなどと合わせて飲みたいワイン。



3番目のワインです。

・シャトージュン 甲州 2012  シャトージュン(株)原料の甲州ぶどう栽培者の名前入りワインです。
透明に近いが、わずかに淡いピンク色が見える。輝きあり。美しい。白いフルーツや洋梨の熟した様な香り、ミネラルなどの香り。アタックはスムース(少しオイリー)。優しくふくよかな果実味(やや甘み)と程良い酸、心地よい渋みが最初から最後まで続き、個性をつくっている。滑らかでまろやかな可愛らしいイメージのやや辛口白ワインです。前2本の甲州と明らかに違うこの淡いピンク色はどこから来るのか? 五味さんの説明です。

甲州ぶどうを皮ごと漬け込んで醸(かも)すと、ぶどうの淡いピンク色がワインに溶け込んで着色し、味わいも複雑味を増すそうです。醸す時間は、
@ 短い時間(スキンコンタクト)・・ch.ジュン 甲州 2012など
A @より少し長い時間(マセラシオン)・・グリ・ド・グリ(メルシャン)、グリ・ド・甲州(グレイス)など醸す時間の長さによって、色の濃さも変わります。                            
甲州ぶどうのピンク色のことをグリ色とも言いますが、フランスの銘醸地アルザス地方の主要品種のピノ・グリの色に似ていることから「グリ」のネーミングがされているようです。



優しい口調で説明をしていた五味さんが、何気ない顔で突然にこのワインボトルを2・3回振りました。目の前にいた男性は、驚いて思わず「ボトルを振っているー!!」と声を出したほどです。上部が1〜2杯分空いているこのボトルのワインは、振られた為に少し泡立っています。何の為に振ったの?

開栓したばかりで香りが閉じているワインは、2・3回振ってやると、香りが華やかになるのだそうです。確かに先程より香りが華やかに立ち上がってきます。ワインは静かに優しく扱うものと思っていた常識が、くつがえされました。これからこのパフォーマンスは、ワイン仲間のあいだで、ちょっとしたブームになりそうですね。いよいよ最後のワインです。         

五味さんのコメントです。
・シャンテワイン 甲州 樽発酵2012 (株)ダイヤモンド酒造 前の3本より少し濃い輝きのある黄金色。深い色合い、わずかににごりあり。香りは、熟したフルーツや、リンゴの蜜、ハチミツなど。また樽からくるスモーキーな香り、バニラ、樹脂の香りなど複雑。ストラクチャー(骨太でしっかりしたボディー)のある肉厚の味わい。テイスティングの後に舌が少しチクチクするように感じるのは、ドライでアルコール分が高い証拠だそうです。合わせたいお料理は、焼き魚にわさび+レモンの酢をかけたものとよく合うそうです。



本日は、4種類の甲州種ワインの飲み比べを行いましたが、どのワインも個性豊かで、甲州種のバリエーションの広さを感じることができました。甲州種ワインって本当に素晴らしいと改めて気づかされました。
このほか、
・土壌の質により適合するぶどうの品種が違うこと
・ワインの醸造法
・ワインの色から生産地域を推測する方法
・ワインに含まれるポリフェノールなどの成分について
・ヨーロッパのワイン市場の中心はイギリスのロンドン市場であり、甲州種ワインのEU基準には厳しい制約があることなどなど、限られた時間の中で、五味さんの持ち前のサービス精神が存分に発揮され、私たちに沢山のサービスをしてくださいました。
私は、時計とにらめっこで、残念ですがやむなくストップをかけさせていただきました。この後ほぼオールメンバーで、五味さんを囲んで撮影会を行い、五味さんは駆け足で風のように去っていかれました。


五味さんの余韻がまだ残る会場で、定刻までの少しの間、「ワインを楽しむワンポイント」として、先日五味さんからお聞きしておいた「レストランでのワインの注文の仕方やマナー」などのお話を、私篠原からさせていただきました。


五味さん、貴重なお時間をこのワインセミナーの為に作ってくださって、本当に有難うございました。深く感謝いたします。



又、突然やって来た真夏日の猛暑のなか、ご参加くださいました皆様有難うございました。皆様のご協力をいただきながらこのワインセミナーが続けていけることを心から喜んでおります。


かつぬま朝市ワインセミナー、まだまだ続いていきますよ〜。
次回もきっと暑い(アツ〜イ!!)です。 お楽しみに!!  篠原