かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第57回 2013.8.4



参加者
県外0名  県内9名  計9名

講師
篠原シニアワインエキスパート


アシスタント
深澤さん、尚江さん

ゲスト
原茂ワイン(株) 社長 古屋真太郎様


ワインリスト
1 ハラモ ヴィンテージ甲州 201 原茂ワイン(株)
2 ハラモ ヴィンテージ甲斐ブラン 2009 〃 
3 ハラモ アジロン 2012 〃
4 ハラモ デラウエアー 2012 〃



セミナーの内容
1 県産ワインの最新情報
2 本日のゲスト 原茂ワイン(株)社長 古屋真太郎様のお話とワインテイスティング

レポート
連日猛暑の夏本番。今年の梅雨は降水量が少なく、農作物にとっても日照りの影響が出始めているようです。が、私たちは暑さに負けずに、きょうも元気でレッツゴー!ワインセミナーのスタートです。

まず初めは、私篠原のレクチャーです。


県産(国産)ワインをとりまく諸々の最新情報をお話しました。
・国産ワインの流れ
・県産ワイン輸出最新情報
・EUへワインを輸出するための要件
・国内のワインに関する地理的表示の整備などです。

ちょっとお固い話ですが、これから増えてくる県産(国産)ワインの輸出に関する第一歩の動きですので、とても大切な事柄です。これからメディアで国産ワインの輸出が取り上げられた時に役立つ情報としてお話しました。


引き続いて、本日のゲスト、原茂ワイン(株)社長の古屋真太郎様の登場です。


「原茂さん」と言えば、私などはつい「原茂園」と言ってしまう程、ぶどう狩りで有名な農園です。今でこそ車での送迎かも知れませんが、以前は秋になると、電車で勝沼駅を降りた団体さんが、駅からつづく→(矢印)の道順に添ってぞろぞろと原茂園さん目指して歩いて行く光景は、この地区の秋の風物詩となっていました。今でも駅にいる若いカップルにどちらへ行くのか尋ねると、「原茂ワイン」と答える方がとても多いのです。勝沼の人気スポットのひとつである「原茂ワイン」の社長さんを、このセミナーにお迎え出来て本当に嬉しく思います。



古屋家(原茂ワイン)は、昭和15年ごろからワインを造っていましたが、昭和40年に現在の会社組織となり、先代の学而様から引き継いで、平成23年(2年前)に現在の真太郎氏が社長になられたそうです。栽培しているワイン用ぶどう品種は、甲州をはじめ、シャルドネなどヨーロッパ系品種、アジロンなどアメリカ系品種、それから最近の交配品種など多種類を栽培していますが、原茂ワインさんと言えば、甲州はもちろんのこと、アジロンが大人気。今回もテイスティングワインに入っています。早速、古屋社長のお話を聞きながらテイスティングをしていきます。


・ハラモ ヴィンテージ 甲州 2011
輸出基準適合のワインで、現在シンガポールへ輸出しているワインです。
補糖・補酸の制限などEU基準に適合する醸造方法で造ると、アルコール度数が11度位と低めになりますが、その反面、酸が生き生きとしてきて良い結果につながったそうです。
輝きのあるややグリーンがかった淡目のレモンイエロー。レモン、青い皮のみかん、カボス、ミネラルなど日本的な柑橘類の香り。ふくよかで優しい果実味とそれに溶け込んでいる酸が、中盤からしっかりと主張し、最後までこのワインをしっかりと支えている。甲州特有の旨味のある苦みと、完熟ぶどうのねっとり感がこのワインにふくらみを感じさせる。全体的に酸味のきいた切れの良いすっきりとした辛口の白ワイン。レモンをかけた白身魚のお刺身に岩塩をつけて味わってみたいです。
・ハラモ ヴィンテージ 甲斐ブラン 2009
このワインも原茂さんならではのワインで楽しみです。甲斐ブランという品種は、1992年に品種登録された山梨県果樹試験場の交配品種(甲州×ピノ・ブラン)で、日本の気候に順応した甲州の良さと、高糖・高酸・風味の良さをピノ・ブランから受け継いでいるそうです。グリーンの皮のぶどうなので熟した時期がわかりにくいけれど、すり下ろしたりんごやふかしたじゃが芋の香りがして来れば完熟の合図だそうです。輝きのある淡目のイエロー。白いお花、黄色いりんご、若い白桃、ハーブ、ミンティーな香り。アタックはしっかり。ミネラル(塩味)を感じた後、果実味とそれに溶け込んでいる酸と軽い苦み、すべてがひとつにまとまって豊かな味わいとボリュームをつくっている。飲み込んだ後、ミントの爽やかさを感じるすっきりとした辛口の白ワインです。

この後、嬉しいことが・・・。古屋社長からハラモ甲州 2012の特別ヴィンテージのプレゼントがあり、早速皆で味わいました。このワインは2012年だけしか造らないワインだそうです。皆さんから「おいしい」の声が沢山聞かれました。古屋社長ステキなプレゼントを有難うございました。テイスティングワイン3番目です。

・ハラモ アジロン 2012


お待ちかねアジロンダックの赤ワインです。エッジに紫の見える若々しい淡いルビー色。ストロベリー、チェリー、キャンディーなどぶどう由来の甘酸っぱい香りが立ち上がります。アタックはソフト。口に入れた途端に、ぶどうの実をそのまま食べた時の様な果実味が口一杯に広がる。おだやかな酸と細かなタンニンが果実味に融合して一体となっている。アフターにぶどう由来の香りが戻ってくる。全体的に香りの華やかな、フレッシュでフルーティーなライトボディーの赤ワインです。辛口の造りでいて、香りと味わいがとても良くマッチしているので、人気の秘密はここにあるのかなと思われます。
・ハラモ デラウエアー 2012  本日最後のワインです。古屋社長のご指示で、アジロンの赤ワインの後でのテイスティングです。種ありのデラウエアーを、香りのピークとなるまだ青い内に収穫して仕込んだワイン。


ややグリーンがかった淡いレモンイエロー。洋梨や白桃の甘い香り。優しいアタック。豊かな果実味としっかりとした酸のバランスが絶妙で、甘酸っぱい味わいが口中に広がります。甘口の造りのワインですが、フレッシュで爽やかなさっぱりとした味わいの白ワインです。このデラウエアーの甘口ワインは、軽い赤ワインの後でも全く違和感はなく、またデザートワインとしてスイーツなどと合わせてもとても良く合うと思います。

今回は、4種類の品種のワインをその特性を感じながら味わう事が出来ました。
しかし、4種類のハラモワインに共通して言えるのは、それぞれどのワインからも優しさを感じ、心が癒される思いがするのですね。それはどこからくるのでしょうか?
やはりワインの味わいは、造り手の人柄が表現されるのでしょうか。それから、落ち着いた純和風の造りの歴史あるワイナリーの建物、その前に広がる美しいぶどう棚の景色、などなどワインを取り巻く一連の風景がワインを通じて思い出されるからでしょうか。

真夏の青空の下(少し曇っていましたが)なのに、テントの中はいつになくゆったりとした心地良い空気が流れていました。古屋社長によるワインの説明が終わった後、参加者の皆さんから沢山の質問をいただきました。


・輸出ワインについて
現在原茂ワインさんは、ロンドン、パリ、シンガポール、台湾、香港の5か国へワインを輸出しているそうです。ロンドンでのプロモーションの話や、輸出ワインの品質基準などのお話をしていただきました


・マスカットベリーAについて
現在原茂さんではマスカットベリーAのワインは造っていないが、OIV(葡萄・ワイン国際機構)の品種登録を受けて、来年この品種を植えて、将来ワインを造る予定だそうです。
・デラウエアーにはシュールリーの醸造法は使わないのでしょうか?
シュールリー製法は、甲州の辛口に最適。今のところ他の品種では使っていないとのこと。
・原茂ワインのマークについて
この百合のような図柄は、高山植物のコマクサを図案化したものだそうです。先代が登山が好きで、八ヶ岳に咲いていたコマクサからヒントを得たそうです。
・アジロンのボトルのエチケットの絵がお茶目で可愛らしいのですが。
親戚の子が小さい時に(現在は30才台)その父親の顔を描いたもの。父親が感激して是非にと言うのでエチケットにしたそうです。


原茂ワインさんのワイン造りの基本的な考え方は、個のワイナリーとして突出するよりは、地域のワイナリー同志の連携を大切にして、勝沼→甲州市→山梨のブランド力を確立すること。それには、何よりも健全なワイン、清潔なワイン造りを心掛けているというお話でした。

この後、古屋社長を囲んで大撮影会を行い、その後社長は、「来週からはワインの仕込みに没頭するので、しばらく皆さんとお会いできません。」と言葉を残して、ニコッと笑って風の様に去って行かれました。カッコイイー!!


参加者の皆さんからも、「今日は本当に楽しかった」と口々に言っていただきました。

古屋社長さん、それからお暑い中を参加してくださった皆さん、本当に有難うございました。私篠原もとっても楽しかったです!!





次回もどうぞお楽しみに。 篠原