かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原 |
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第59回 2013.10.6
参加者 県外19名 県内7名 計26名
講師 篠原シニアワインエキスパート
アシスタント 深澤さん、尚江さん
ゲスト 四恩醸造(株) 小林 様
ワインリスト
1 窓辺 橙 2012 四恩醸造(株)
2 クレマチス ロゼ 2013 〃
3 窓辺 クレーレ 2012 〃
4 窓辺 赤 2012 〃
セミナーの内容
1 本日のワインについて
2 ワインを楽しむワンポイント ワインの色について
3 ワインテイスティングの方法
4 本日のゲスト 四恩醸造(株) 小林様のお話
レポート
穏やかな気持ちの良い朝です。きのうは勝沼で一番大きなお祭り「ぶどうまつり」でしたが、その翌日とは思えない程静かな朝でした。でも、ワインセミナーが始まるころには、大勢のお客様で朝市会場は溢れんばかりです。
我がワインセミナーも満席で、お断りの方が出てしまいました。すみません!
さあ、今日も楽しいセミナーのスタートです。今回はゲストに四恩醸造の小林さん(通称つよぽん)をお招きしていますので、私も本当に楽しみです。四恩醸造のちょっと不思議?なワインをより楽しむために、まず「ワインを楽しむワンポイント」として、「ワインの色」について私篠原がお話しました。
醸造方法の違いからくるワインの色は、通常、赤・ロゼ・白に分類されます。黒ぶどうを果皮や種ごと漬け込み、一定期間発酵させると、赤ワイン。少し色がついた時点でワインと果皮や種とを分離すると、ロゼワインに。白ぶどうをまず圧搾して出来たジュースを発酵させると、白ワインになります。また、ワインは熟成によって色が変化します。赤ワインは、紫がかった若々しいワインが、時間の経過(年数)によってオレンジ色に変わりレンガ色から褐色に変化していきます。ロゼワインもこれに近い変化を示します。白ワインは、透明に近い淡い黄色がだんだん色が濃くなっていき、黄金色からオレンジがかかり琥珀色になって、最後はやはり褐色に近い色に変化していきます。
ですから、ワインは色の変化によって若々しいワイン、飲み頃ワイン、熟成ワインとそれぞれの香りや色や味わいを楽しむことができる、幅の広いお酒なのです。
つづいてのワインテイスティングは、
本日の1番目のワイン、窓辺(橙)です。
このワインが皆さんに行き渡ったところで、質問です。
「さあ、このワインは何色でしょうか?」答「・・・・・。」私は肌色と言いたいのですがと言ったところで、何人かがうなづいてくれました。さて、この色をつよぽんは何と言うのでしょうか?テイスティングコメントです。
・窓辺 橙 2012 四恩醸造(株)
エッジにわずかに淡いグリーンが見える若々しいワイン。ピンクというより淡い肌色に近い色合い。中心部の方が少し色が濃い。ややにごりあり。香りはハッサク、イヨカンなど柑橘の香り、りんご、梨、白桃の皮をむいて少し時間が経過した時の香り、金木犀のかおりなど。アタックは豊潤でインパクトあり。しっかりした酸と、同じ位しっかりした苦み(山菜のふきの様な)それに溶け込んだ優しい果実味と僅かにタンニンを感じる。最初から最後までしっかりとした酸と旨味のような膨らみのある苦みが続き、このワインの骨格と厚みをつくっている。アフターにみかんの皮を噛んだ時のような、スーっとした清涼感を感じる。この品種(まだ品種名は伏せています)で造った今までのワインとは、だいぶ個性の違うワインです。
皆さんの興味が乗ってきたところで、本日のゲストの登場です。
みんなで「つよぽーん!」と呼んだら「ハーイ!」と手をあげてノッてくれました。ステキですね。
トレードマークのオレンジ色のTシャツのつよぽんを見て皆さん大喜び。このセミナー3回目の登場です。今回もどうしたら参加者の皆さんに楽しんでいただけるか、と気合が入っています。実は本日提供のワインは、まだ瓶詰したばかりで、リリースしていません。従ってまだラベルが貼ってないのです。そこで、希望者にラベル貼りの体験をしていただきました。そんな事も楽しいですね。
さて、いよいよ先程テイスティングした「窓辺(橙)2012」のお話を造り手のつよぽんにしていただきました。
ぶどう品種は甲州種です。甲州ぶどうをロゼワインの造り方で仕込みました。
果皮も種も果汁と一緒に漬け込み発酵。甲州ぶどうの成分を充分に出して、発酵後ステンレスタンクで熟成。さらにその後樽でも熟成。約1年後に瓶詰したワインです。ノンフィルターなので少しにごりがあります。
甲州種特有の苦みについては、肯定的に捉えていて、苦味は出してもエグ味は出さないという考え方だそうです。このワインの色は橙(だいだい)と言い、白でもロゼでもなく橙(だいだい)だそうです。甲州ぶどうの持つ潜在能力を充分に引き出す為に、この醸造方法でこの色になったそうです。一般的な甲州に比較して、ボディーのしっかりしたこのワインは、もちろん単体でも味わい深く飲めますが、お料理と合わせると一段とその力を発揮するように思います。
私は簡単な、人参とひき肉を油で炒めて甘辛く煎り付けた「人参のきんぴら」と合わせましたが、ワインもお料理もより引き立って味わえました。つよぽんのおすすめは、お魚の「西京焼き」。わずかについたこげ味がこの橙と最高に合うそうです。
続いて、つよぽん最高のパフォーマンスタイムです。
今回もワイン工場から、あの重いピュピトル(スパークリングワインのオリを下げる為の木の台)を持って来てくれました。台には2本のロゼワインが、口元を下に向けて逆さ(倒立状態)に立っています。
そっと持ち上げると、ボトルの口元にオリが集まってきています。このオリを、独特の形をした栓抜きで王冠の栓を開けて吹き飛ばすのです。遠くの席の方が立ち上がって来てつよぽんを取り囲み、皆カメラをかまえてシャッターチャンスをねらいます。
「ワインが飛ぶので少し下がってください」と言った途端に、プシューと音がしてワインと共にオリが勢いよく吹き出しました。大歓声と拍手が上がります。みんなが驚いてくれたので、「してやったり」とつよぽんもご満悦です。
早速味わいました。
・クレマチス ロゼ 2013 四恩醸造(株)
牧丘の巨峰で造ったロゼの微発泡(スパークリング)ワインです。このクレマチスはロゼですが、白ワインの造り方で造ったそうです。黒ぶどう(巨峰)を少し強めにプレスして、果皮の色が果汁についたところで発酵させて造ったワイン。
可愛らしく優しいサーモンピンク。イチゴ、キャンディー、白桃の香り。またかすかにミルクのような香り。アタックはさわやか。まず甘みを感じた後、優しい酸、わずかにタンニン、塩味、ミネラルを感じる。全体的に優しい味わいですが、1本すじの通った存在感のある微発泡のロゼワインです。
・窓辺 クレーレ 2012 四恩醸造(株)
クレーレはうす赤色のこと。ロゼと赤の中間的な色合い。
エッジに紫色の見える若々しいうす赤色。ぶどう由来のチェリー、ストロベリー、キャンディーなどの甘い香り。アタックはソフト。優しい果実味、それに溶け込んでいる酸と、細かく繊細なタンニンが手をつなぎ、どれも突出せず非常にバランスが良い。アフターに梅やシソの香りが戻ってくる。軽くさわやかでいつまでも飲み続けたいマスカットベーリーAのワイン。鶏肉やおほうとうに合わせたいと声が掛かります。
・窓辺 赤 2012 四恩醸造(株)
牧丘地区と塩山地区から収穫したメルローとカベルネソーヴィニヨンで造った赤ワイン。紫がかった濃いルビー色。少し落ち着いた色合い。中心部に黒い色が見える。ブルーベリー、ブラックベリー、カシス、梅、スパイス、ミントスモーキーなど複雑な香り。アタックはスマート。程良い酸、細かくきれいなタンニン、樽からくると思われる心地よい苦み。全体のバランスが良く、まろやかな味わいになっている。若々しく軽やかに飲めるミディアムボディーの赤ワインです。このワインを飲むとやはりお肉が食べたくなりますね。
焼き鳥、焼き肉、スキヤキ、ローストビーフと次から次へと合わせてみたいお肉料理が浮かんできます。食欲をそそるワインです。
試飲ワインが変わるごとに、つよぽんの口が閉ざされるので、私が「説明をお願いします。」とつい急かせてしまいましたが、注意してみると、皆さんがワインを飲んで味わう様子をしっかり見届けているようでした。
つよぽんこと小林さんは、2001年に勝沼にあるワイン会社に就職し、6年間の修業期間を経て独立。2007年に現在の四恩醸造の立ち上げから関わり、醸造、販売責任者といいながらも、すべてを一人でこなしているマルチ人間です。気がついたら四恩でワインを造りはじめて7年目になっていたことを、自分で驚いていました。
目標とするワイン造りは?の問いに
「日本の食卓に合う最高のテーブルワインを目指す。毎日晩酌で飲んでも飽きのこないワイン」だそうです。この考え方は当初から変わらないそうです。つよぽんは、明るく楽しい方ですが、実はとても繊細な心の持ち主のようです。
私が、「今年のデラウェアーの新酒は、もうできました?」と聞くと「今年のぶどうは糖度が高いので、全然補糖もしないのに、あの子達はまだ賑やかにしていて、なかなか静かにならないんですよ。もういいかい?って毎日聞いているんですがね。」と言って笑っていました。よけいな事をしない、自然にワインが出来上がるのを、じっと見守りながら待っているという姿勢です。
また四恩醸造の母体である四恩学園の幼稚園児が、農業体験でここの農場に来た時に喜んで貰えるようにと、今年からぶどうジュースを造りました。食品として安全で、安心して飲んで貰えるものを造る。この考え方は、ワインもジュースも同じです。
今回この出来立てジュースをプレゼントしてくださいました。早速、このセミナーの参加者のパパのおひざに乗っていた小さな女の子に、どうぞとすすめてみました。女の子は、ゴクゴクと飲んで、「おいしい!」とにっこり笑いました。
それをみて、つよぽんも「良かった!」と優しい笑顔を見せていました。ただただ皆さんが飲んで喜んでくれればうれしい、それがつよぽんの目指すワインなのかなと、ふと思いました。
皆さんから沢山の質問もありました。
添加物について
ワインの色について
ぶどう品種について
ラベルについて などなど・・・
四恩ワインのラベル(エチケットとも言う)は、横浜在住の現在98才位になられる女性の方が描かれた絵から選んだそうです。65才頃から趣味で描きはじめて現在に至るそうです。
庭のお花をシリーズにした「花」の絵をラベルとし、ローズ、クレマチス、ブーケ、窓辺、夏の陽などがあり、また風景画も少しあります。
ラベルには、ぶどう品種名は書かれていません。品種による先入観を持たないで欲しいからだそうです。美しいお花や景色のワインボトル。このボトルからもワインの造り手の優しさが見えて来るような気がします。決して無理をしない、ぶどうの声ワインの声を聞きながらのワイン造り。その結果が、既成の型にはまらない斬新なワインになっている、というのが四恩醸造のワインだと思いました。
これからも、まだまだ私達を楽しませてくれる、ステキなワインを造られるのを、期待しています。
小林さん、ワイナリーにとって一番お忙しい時期でのご出演、本当に有難うございました。参加者の皆さんも大喜びでした。
今回は、ワインの色に視点を向けてワインを味わいました。
次回もどうぞお楽しみに。 篠原
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