かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第60回         2013.11.3

参加者
県外21名  県内5名  計26名

講師 篠原シニアワインエキスパート
アシスタント 深澤さん、尚江さん
ゲ  ス  ト  岩崎醸造(株)  三科社長 様
ワインリスト
1 シャトー ホンジョー 甲州 2012     岩崎醸造(株)
2 ホンジョー オールド 甲州 一升瓶       〃
3 ホンジョー オールド 勝沼 一升瓶       〃
4 ホンジョー マスカットベリーA 山梨 樽熟成  〃



セミナーの内容
1 本日のワインについて
2 ワインを楽しむワンポイント  勝沼のワインの背景
3 ワインテイスティングの方法
4 本日のゲスト 岩崎醸造(株) 三科社長様のお話




レポート  11月の朝市は「県産ワインヌーボー解禁」の翌日です。今年はぶどうの生育期間中天候に恵まれ、台風などの大きな災害も無く、非常に糖度の高いぶどうが収穫できました。従ってワインも昨年に引き続き大いに期待できそうです。
我がワインセミナーにも、昨日から連続でワインを楽しんでいるグループが何組も来てくれています。今回も満席で、やむを得ずお断りの方が出てしまいました。本当にすみません!
 さて、本日は、地元に絶大なファンを持つ、ホンジョーワインさんをお招きしています。早速60回目のワインセミナーのスタートです。
今回は皆さん待望の一升瓶ワインを後程味わいますが、ワインを楽しむワンポイントとして、歴史ある勝沼のワイン産地形成に大きな役割を担ってきた「共同醸造組合」から始まったワイナリーのことを、皆様に知っていただきたいと思い、「勝沼のワインの背景」として篠原からお話させていただきました。

 勝沼で本格的なワイン造りが始まったのは、明治12年にフランス留学から帰国した高野・土屋両氏による、フランスの醸造技術によるワイン(葡萄酒)造りからです。2人の醸造技術の伝達により、勝沼ではいくつかの醸造会社が設立されたり、また、大正時代には農家で自前のぶどうを使って自家用葡萄酒を造るようになりました。昭和に入ると更に多くの農家が葡萄酒醸造免許を取るようになったので、税務署など行政の指導により個々の農家をまとめて各地区毎に共同醸造組合がつくられました。また太平洋戦争が極めて厳しくなった昭和19年頃には、葡萄酒に含まれる酒石酸が潜水艦のソナーの重要な部品に使われた為に、更に葡萄酒造りに拍車がかかりました。戦後になり、共同醸造組合が株式会社になった際に、有力株主がその会社を買い取り個人経営の会社に移行したりして、共同醸造組合は現在では数か所残すのみとなりました。本日のゲストの岩崎醸造さんも株式会社ではありますが、株主130名のほとんどが共同醸造組合からの農家であり、現在も引き続いて契約農家としてワイン原料のぶどうを納入し、地元と密着した地元の人に愛されるワインを造っているそうです。勝沼のワインの歴史を知る上で重要な存在のワイナリーのワインを皆さんと味わいました。

本日テイスティングの最初のワインは、
・シャトー ホンジョー 甲州 2012 720ml 岩崎醸造(株)です。
輝きのある淡いレモンイエロー。グレープフルーツやみかんなど柑橘系の香りが立ち上がり、青リンゴやミネラルの香りも感じる。


アタックはスマート。たっぷりの果実味とやわらかな酸。わずかに甲州特有の旨味のある苦みを感じるが、全体的に軽やかで丸みのあるバランスのとれた味わい。アフターにライムのような爽やかで心地よい香りが残る。
このワインは2013年の国産ワインコンクールで銅賞に入賞したワインです。
ワインの外観、香り、味わいとテイスティングの練習をしながらも、「美味しい!」と声がかかります。
テイスティングの練習のあとは、いよいよ本日のゲストの、岩崎醸造(株) 三科社長の登場です。実は勝沼のワイナリーさんは、昨日と今日は「県産ワイン新酒まつり」で大忙しのところを、時間をさいてこのセミナーのために快くやって来てくださったのです。本当に有難いです。



三科社長は、明るく楽しい方で、勝沼のぶどうとワインについて知らない事は無いと思われる程、頭の引き出しの中からポンポンと勢いよくお話が飛び出してきます。自己紹介をされた後、トツトツと戦前戦後のワイン造りの事や岩崎醸造さんの成り立ちなどを静かに話しはじめましたが、そのうちだんだんといつもの調子が出てきて、フランスのぶどうの栽培やワイン造りの話、レストランでの話など、どんどんお話が進んでいきます。



ストップ!ストップ!私はどこでお話を中断したものか迷っていましたが、思い切って声を掛けさせていただきました。皆さん先程から首を長くして、一升瓶ワインを待っていますよ。




ホンジョー オールド 甲州 一升瓶  岩崎醸造(株)


 輝きのある美しい黄金色。ハッサクやイヨカンなど日本の柑橘の香り。ナッツ類などの熟成からくる複雑な香り。味わいは7〜8年熟成とは思えない程しっかりとした酸と軽やかな口当たり。極辛口のためか、表示されている12.5%より高めのアルコールを感じる。
創業当初からずっと変わらぬ造り方で醸造してきたホンジョーの定番ワイン地元勝沼の株主でもある契約農家さんのぶどうを使用し、贅沢にも破砕時に自然に流れ出すフリーラン果汁を発酵させ、大樽1年タンクで6〜7年ゆっくりと熟成させたワイン。三科社長は、熟成させたワインは炭酸ガスが抜けてお腹にたまらなくて良い。飽きのこない長続きするワインとおっしゃっていました。




続いてやはりホンジョーの定番ワインです。
ホンジョー オールド 勝沼 一升瓶   岩崎醸造(株)

カベルネソーヴィニヨンとマスカットベーリーAから造られた、やはり7〜8年の長期熟成ワイン。
 やや紫がかったガーネット色。美しい色合い。ブルーベリー、カシス、僅かにイチゴキャンディー、コーヒー、スモーク。
アタックはソフト。果実の甘味を感じたあと、中盤からしっかりとした酸を感じる。軽く心地よいタンニン。まろやかでバランスが良い。全体的に重くなく、横に広がりのある芳醇な味わいのミディアムフルボディー。このワインが、一升瓶でこの価格(1800mlで2100円、720mlで1260円)で飲めるのは嬉しい。コストパフォーマンスの高いワインです。
焼き肉やポークソテーなどと合わせたい。




ホンジョーと言えば「オールド」と言われる程ホンジョーを代表する、白と赤の一升瓶ワインを味わいました。一升瓶を皆さんに手渡しますと「うわー重い!」「すごい大きい!」と言いながら、両手でグラスに注ぎます。地元の方達はこのビンの底を手のひらで持ち、軽々と片手で注ぐのが勝沼流と言われています。結構力がいりますが、これも力自慢のひとつかもしれません。



いよいよ最後のワインになりました。
・ホンジョー マスカットベリーA 山梨 樽熟成 720ml 岩崎醸造(株)

僅かにオレンジが入り始めた落ち着いたルビー色。イチゴキャンディー、綿菓子のようなぶどう由来の香り。赤いお花、甘草、イチゴのジャム、バニラなどのやや複雑な香り。たっぷりの果実味とそれに溶け込んでいる酸、しっかりしたタンニンが樽の風味に包まれて、豊かな味わいを出している。ミディアムフルボディーの赤ワインですが、決して重くなく、後味が心地良い。アフターに樽の香りが戻ってくる。甘辛いタレを使った甲州鳥もつ煮や、スキヤキなどと相性が良さそう。



三科社長のテンポの良いお話の途中をぬってのテイスティングがようやく終りました。皆さんからたくさんの質問があり、まだまだおなごり惜しい感じでしたが、残念ながら時間が無くなってしまいました。最後に三科社長を囲んで
記念撮影をしてお開きになりました。



今回は、ホンジョーワイン(岩崎醸造)さんの、昔ながらの長期熟成ワインと現代的な造りのワイン(国産ワインコンクール受賞ワイン)を比較して味わいました。
昔ながらの一升瓶ワインに直接触れて肌で感じるように、勝沼には昔のぶどう栽培やワイン造り、また生活を偲ぶ色々ないにしえの物が、まだまだ沢山残っています。地元を歩いて、昔ながらの地元のワインを飲む、ぜひ大勢の方に体験してもらいたいですね。
ホンジョーワインの三科社長さんの頭の引き出しには、まだまだ沢山のおもしろ話が眠っています。是非聞きに行ってください。
三科社長さん、お忙しいところを本当に有難うございました。



かつぬま朝市ワインセミナーは、12月から3月まで冬休みになります。また来年も素晴らしいゲストをお迎え致しますので、どうぞお楽しみに!!
それではまた来年4月にお会いしましょう。皆様お元気で、ステキなワインライフをお過ごしください。 篠原