かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第61回 2014.4.6





 



参加者 県外14名  県内6名  計20名
講師 篠原シニアワインエキスパート  
アシスタント 深澤さん、尚江さん
ゲスト 「ビストロ・ミル・プランタン」 五味 千春 様




ワインリスト
1 いろ ベーリーA ブラッシュ 2012 まるき葡萄酒(株)
2 シャンテ Y・A ロサード 2013 (株)ダイヤモンド酒造
3 メルシャン 穂坂のあわ(ロゼ)   メルシャン(株)
4 ロリアン さくらのワイン      白百合醸造(株)



セミナーの内容
1 今回のテーマ「春にはロゼがおすすめ!!」
2 本日のワインについて
3 本日のゲスト「ビストロ・ミル・プランタン」五味千春様のお話 

 
レポート
今年2月中旬に降った記録的な大雪(100年に1度といわれる)で、ここ勝沼でも果樹に大きな被害がありました。特に早出し生食用ぶどうのビニールハウスが8割位潰れてしまいました。露地物のぶどうやワイン用のぶどうは、10年位前の大雪の教訓により、年末までに剪定作業を終えたところが多かったので、なんとか無事だったようです。ぶどうの芽吹きが待ち遠しい思いです。




さて、今シーズン最初のワインセミナーは、明るくさわやかでステキなゲストをお迎えしました。
「ビストロ・ミル・プランタン」を、パートナーの五味丈美さん(そうです。以前あの銀座レカンのシェフソムリエをされていた五味さんです)とご一緒に経営されている「ミルプラ」さんこと五味千春さんです。お店の名前はフランス語で、千の春と訳されますが、奥様の千春さんの名前から付けられたものです。ホントにステキ!うらやましいですネ。




千春さんがセレクトしてくれたワインは、ロゼワイン4本。‘春にはロゼがおすすめ!!’が今回のテーマです。



私達食事の時に選ぶワインは、大抵白または赤が多く、なかなかロゼには行きつかないのですが、ロゼワインがとても重宝なワインという事を教えていただきました。寒い冬の間は、暖かいお部屋でしっかりした赤ワインを、暑い夏には、風通しの良いまたは冷房のきいた場所で、疲れをとるスッキリとした白ワインを飲みたいですよね。春から初夏にかけてのこの季節、お花見やハイキング、バーベキューなど、屋外でワインを飲みたいときにはロゼがおすすめだそうです。
その理由は
・温度の調整をあまりこだわらなくても美味しく飲める。
・野菜でもお肉でも、バーベキューなどにも最適。特にこれから出回る旬の山菜などと相性が良いそうです。
早速ワインを開けてみましょう。千春さんはプロのソムリエさんですので今回は抜栓の方法から教えていただきました。


スティルワイン(泡の出ないワイン)の場合は、キャップシールを取り除いた後、コルクにスクリューを差し込む際に、ボトルを45度位に傾けてすると中心に差しやすいこと。また、ソムリエナイフはダブルアクション(ボトルのふちに掛ける部分が2つあるもの)が使いやすいことなどをおしゃべりし
ながら、サッとスマートに抜栓してくれました。

スパークリングワインの場合は、キャップシールを上半分取り除いた後、残った下半分の切り口をボトルに貼り付けるようになでておくと良い。難しい針金をはずす作業は、必ず指でコルクを押さえながらすること。針金がはずれたらコルクを手でしっかりおさえながら、利き手でボトルの底を持ってコルクではなくボトルの方を回すと、自然にコルクが浮き上がってくる。

ボトルを少し傾けながらシューとガスを抜き静かに立てると大成功。緊張がほぐれて皆さんから拍手が上がりました。「スパークリングワインの抜栓は、こわごわしないで自信を持ってやってください。そうすれば上手くできます」と千春さんはにっこりされました。またナフキンを使って楽に抜栓する方法も教えていただきました。

いよいよテイスティングです。皆さんと一緒に、外観・香り・味わいの順にその方法を練習しました。一定の量を、いつも同じやり方でするのがコツだそうです。

最初のワインは、
・いろ ベーリーA ブラッシュ 2012 まるき葡萄酒(株)です。
赤ワイン用ぶどう品種のマスカット・ベーリーAを使い、白ワインの製法で造ったロゼワイン。ブラッシュ製法とは、赤ワイン用ぶどうを使い、ぶどうの実を軸から外した後機械で絞ると果汁が出てきますが、その絞った時に果皮から色素が出て、淡いピンク色の果汁になります。この果汁だけを発酵させてロゼワインを造る方法です。どちらかと言えば、色は薄く仕上がります。
コメントです。色は少しオレンジがかった淡いピンク色。きれいに澄んでいる。キャンディーや、いちごを少し潰した様な香り、白い小さなお花が集まった様なチャーミングな香りです。口に含むと、まず酸を感じ、次に口中に甘みが広がる。赤ワイン程ではないが、控えめな渋みも感じる。全体的にシンプルでさわやかな味わいの辛口ロゼワインです。



2番目のワインです。
・シャンテ Y・A ロサード 2013 (株)ダイヤモンド酒造
山梨県北西部にある茅ヶ岳山麓の穂坂地区で収穫したマスカット・ベーリーAを使用。ロサードとは、ポルトガル語で「ロゼ」の意味。赤ワイン用ぶどうを潰し、果皮や種や果汁と一緒に発酵させる赤ワインの造り方で造ったロゼワイン。赤ワインより短時間で果皮や種から分離するので、程良い色合いのロゼになる。このワインは更にセニエ法による果汁を一部使用しているので、やや濃いめの色合いになっています。

グラスの下の方に細かな気泡が付いていますが、これは発酵の際の炭酸ガスが残っていてグラスに付いたもので、比較的フレッシュなワインに見られます。
コメントです。
1番目のワインより少しピンク色が濃いサーモンピンク。ややにごりあり。赤い果実、カシス、リキュールの様な香り。程良い酸と果実味、心地良い軽いタンニンが、このワインにふくらみを感じさせる。フレッシュな辛口ロゼワインです。

3番目のワインです。
・メルシャン 穂坂のあわ(ロゼ) メルシャン(株)
このワインも穂坂地区のマスカット・ベーリーAから造られたロゼワインですが、他のワインとの大きな違いは、スパークリングワインということです。まずマスカット・ベーリーAを使用して2番目と同じようにスティルワインの赤ワインを造ります。


程良く色が付いたところで、ワインの一部を別の密閉したタンクへ移します。(このワインの1部を抜き取る作業をセニエと言います)密閉タンクの中へ炭酸ガスを注入し、ワインに溶け込ませます。ガスの溶け込んだワインをボトルに詰めてロゼのスパークリングワインの出来上がりです。
コメントです。
透明感のある美しいほぼ赤に近い色合い。細かい泡がきれいに立ち上がります。キャンディやイチゴの様な甘さを連想させる香り。果実味・酸味・タンニンが一体となって、しっかりした旨味を感じる。なめらかな泡の感触が心地よい辛口のロゼスパークリングワインです。
スパークリングワインを味わう時は、「泡」に注目!!「小さい泡が沢山立ち上がるのが上質と言われています。口の中に入った時に泡がどう溶け込むか、口の中に刺激があるかを感じとることです。」
千春さんの説明に、皆さんワインのおかわりをもらって、泡の感触を試していました。




最後4番目のワインです。
・ロリアン さくらのワイン 白百合醸造(株)
皆さんおなじみの、本物のさくらの花がワインの中にふわふわ浮かんでいるワインです。甲州種ワインの中に、僅かにマスカット・ベーリーAのワインをブレンドして造られています。
ほぼ透明に近い、かすかにピンクの見える淡い色合い。白いお花や熟した白桃の香り、杏仁のような香りですが、色合いにマッチした優しい香りです。味わいは、やはり優しいアタック。まず甘みを感じ、次に少し口を引き締めるような収れん味を感じる。甘味と渋味を酸が下支えしいるワイン。最後にわずかに感じるさくらの花のほろ苦さが、このワインを上品にしている。やや甘口の淡い色合いのロゼワインです。

4種類のロゼワインのテイスティングが終わりました。それぞれどのワインも美しい「ロゼ色」ですが、はっきりと色の違いを見分けることができます。又、千春さんのていねいで分かりやすい説明のおかげで、醸造方法によって色の濃さや、味わいの違いを感じ取ることができました。
この後、お料理とのマリアージュのお話もありました。
1. まるき葡萄酒さんのブラッシュロゼには、白身のお魚、鶏肉、はまぐりの酒蒸しなど。
2. ダイヤモンド酒造さんのロサードには、野菜の煮物やシチュー、お肉とも相性が良い。
3. メルシャンさんの穂坂のあわは、デザートのいちごに良く合う。 ミルフィーユやタルト、バニラアイスにもベストマッチです。
4. 白百合さんのさくらのワインは、冷やして食前酒でも良し、又、デザートワインとしてもいいですね。優しい酸味と甘みのある桃のコンポートに合わせたい。それから、この季節にぴったりの生菓子(何だと思います?)。答えは桜餅。それも、つぶつぶしたのではなく、表面がつるっとしたおもちのとかクレープの様な生地(道明寺粉)にあんこがはさまったものが良い。葉っぱごと食べて塩味・にがみとあんこの甘みを味わった後、さくらのワインをガブリ!(塩大福もOKだそうです)う〜んなるほど!!
お話を聞いていると、すぐにでもお料理と合わせてみたくなりました。

千春さんのお話は、歯切れがよくとても分かり易いので、皆さんすっかりミルプラワールドへ引き込まれていましたが、残念ながら、あっと言う間に時間になってしまいました。これからすぐにお店に戻って、ランチのお客様をお迎えする準備です。
千春さん、お忙しい時間をさいてのご出演、本当に有難うございました。もっともっとお話しを聞かせていただきたいので、またのご出演を心よりお待ちしています。



今回は、私篠原にとっても目からうろこの、おもしろい内容でした。今シーズンの始まりでしたが、満席に近いお客様で、立ち見の方も何人もいらっしゃいました。また、最後に私から参加者の皆さんに、「今日テイスティングした4本のワインに、共通するぶどう品種は何でしょう?」と問いかけたところ、皆さん声を合わせて、「マスカット・ベーリーA」と答えてくれました。まさに会場が一体になった瞬間を感じて、とても感動しました。

さて、次回のワインセミナーも、参加者の皆様に夢と希望を与えてくれる素晴らしいゲストをお迎えする予定です。
どうぞおたのしみに!!    篠原