かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第66回   2014.9.7


 
 参加者
県外4名  県内6名  計10名

講師  篠原シニアワインエキスパート
アシスタント  深澤さん、尚江さん



ゲスト  D&DEPARTMENT山梨  古屋 直未様



ワインリスト
1 ルバイヤート甲州シュール・リー 無ろ過 キュヴェニッタ 2013 丸藤葡萄酒工業(株)
2 ヴァン・ド・チャブダイ Futs Futs 2013 (株)ダイヤモンド酒造 
3 オープニングアクト 2013 マスカットベーリーA-D CFAバックヤードワイナリー
4 キザン ファミリーリザーブ 2012       機山洋酒工業(株)



セミナーの内容
1 本日のテーマ「ワインあれこれ」
2 本日のワインについて
3 テイスティングの方法
4 本日のゲスト D&DEPARTMENT山梨 古屋直未様のお話


 レポート 例年ならば暑くて暑くてという残暑も今年はほとんど感じません。9月に入りそこはかとなく秋の気配が漂ってきました。我が家の甲州ぶどうも、もうすっかりグリ色(灰色がかったピンク色)に染まりとても美しいです。秋の陽射しをたっぷり浴びて、糖分を充分に蓄えてくれたらと願っています。

9月のワインセミナーは、台風が通過した後の不安定なお天気で、雨が降ったりやんだりしています。それでもセミナーが始まる頃には、何とか上がってくれました。
すがすがしい気持ちでワインセミナースタートです。


今回はお馴染みのリピーターさんが多いので、何となくファミリーライクな感じです。

最初に私篠原から試飲ワインの紹介と、テイスティングの方法についてお話し、ゲストの方をお迎えする準備が整いました。ゲストの登場です。

今回のゲストは、D&DEPARTMENT山梨の古屋直未様です。この朝市ワインセミナーにも昨年から今年にかけほぼ毎回参加され、熱心にメモをとられている女性ですので皆さんお顔馴染みのかたも多いと思います。

古屋さんの自己紹介です。
古屋さんは食べることが大好き。食への興味から食事に合う飲み物、ワインとお料理のマリアージュに関心を持ちワインにはまる。そこでまず自分が生まれ育ったこの山梨で造られているワインについて、基礎から勉強しようと思い立ち、ついに日本ソムリエ協会のワインエキスパートの資格を取得した。そのころちょうど現在の職場が新設されることになり、ワインエキスパートの資格が生かされるということでこの職場と巡り合ったそうです。
 


D&DEPARTMENT(ディーアンドデパートメント)山梨はJR甲府駅北口にある山梨日日新聞・山梨放送本社2階にあります。「ロングライフデザイン」をキーワードに、その土地で作られている品々や伝統工芸品などを紹介・販売をしながら、その土地に根差したデザインを広める活動を行っているそうです。国内に8店舗、国外にも1店舗ありまだまだ増えていく予定だそうです。
 


山梨店の中心的位置づけにワインがあります。広いフロアーの真ん中に、山梨県内のワインが400〜500本も収められた大きなワインセラーが設置されていますが、こちらのワインは甲州市勝沼町にある新田商店の新田正明さんがプロデュースしています。このワインショップで、古屋さんはお客様がワインを選ぶお手伝いをしています。山梨のワインの魅力や、ワインの歴史また新しい発想でおいしいワインを造ろうと奮闘している醸造家のお話を交えながら、山梨のワインを楽しく飲んでいただけるように心がけてお勧めしているそうです。

本日は、このセラーの中から古屋さんのお勧めワインを4本選んでいただきました。ワクワクします。早速テイスティングです。
・ルバイヤート甲州シュール・リー 無ろ過 キュヴェニッタ 2013 丸藤葡萄酒工業(株)
皆さんよくご存じのルバイヤート甲州シュール・リーです。しかしこのワインはいつものルバイヤートシュール・リーとは違うそうです。エチケットをよく見ると、無ろ過、キュベニッタと書かれています。古屋さんの説明です。


甲州種のワインは、辛口が注目されますが、ほんのりとした甘みや酵母の旨味を残した甲州の味わいも捨てがたいと、新田さんが丸藤さんを数年がかりで説得してようやく実現した、新田さんの思い入れの深いワインだそうです。ルバイヤートシュール・リーのワインを通常ならば瓶詰めの前にろ過という作業を行い、ワインの中に残った酵母やその他の雑味を取り除きクリーンなワインに仕上げます。しかしこのワインはろ過する前のワインを新田さん用に分けて、特別なキュベ(発酵槽を意味するキューヴからできた言葉で、この場合は特別のロットのワインをいう)に仕立てたワインだそうです。限定360本のワイン。まさにこの土地、この人だからこそ造る事が出来たワインと言えるでしょう。

ややグリーンがかった淡いレモンイエロー。僅かににごりあり。レモンやグレープフルーツのような柑橘の香りや青りんごの香り。また食パンやイーストの香りも。やさしいアタックでワインが口に入った瞬間にほんのりと甘みを感じる。豊かな果実味、さわやかな酸。中盤から旨味を伴う軽いにがみあり。フレッシュではつらつとした味わいの、広がりと厚みのある甲州ワインです。
お勧めのお料理は、軽い味付けの野菜の煮物、お寿司、川魚の塩焼き、焼き鳥(塩)などだそうです。


引き続いて2番目のワインです。
・ヴァン・ド・チャブダイ Futs Futs 2013 (株)ダイヤモンド酒造
思わずワイン名を見直して、確かにチャブダイ(昔家庭で、畳などに座って食事をする時に使用した、折りたたみ式のテーブルのこと)と書かれていると見て、クスっと笑いたくなってしまうユーモラスな名前のワイン。日本式のテーブルワインのことだろうか。では次に書かれているFuts Futs(フツ・フツ)は何?「それは樽・樽のことです」と古屋さん。樽を使用した2種類の甲州種ワインのおりがらみ(おりに接触した部分)をブレンドして作られたワインだそうです。無ろ過、非加熱なので瓶詰の際、酵母がまだ元気だったため炭酸ガスがワインに溶け込み、微発泡になっている。このヴァン・ド・チャブダイという名前のワインは数年前から造られていて、やはり新田さんの特別キュヴェだそうです。毎年ブレンドの内容が変わるため、「今年のチャブダイは???」という楽しみを味わえるワインです。限定わずか140本のワインです。

淡いレモンイエロー。若干のにごりあり。みかんや八朔、白桃などの果実の香り。バニラのような樽の香り。アタックはさわやか。優しい果実味を感じた後にしっかりした酸を感じ、微発泡の舌触りが心地よい。僅かに甘みを感じるが、どちらかといえば辛口と言いたい。1日の疲れを取り除いてくれるような、ちょっとリッチでホっとするワインです。合わせるお料理は、もろきゅうとかカルパッチョ、また少し焦げ目のついた白身の粕漬けの焼き魚など。

ここまで味わった2種類のワインは、勝沼地区にあるワイナリーと新田さんとのコラボワインワインでしたが、この後登場するのは、塩山地区のワイン(ぶどう)だそうです。

3番目のワインです。
・オープニングアクト 2013 マスカット・ベーリーA-D  Cfaバックヤードワイナリー
聞き慣れないワイナリーと思われるのも無理ないと思います。栃木県足利市に最近できたばかりのワイナリー。もともとは清涼飲料水(ラムネ)製造会社でその工場の敷地内に設立された醸造所。2012年にワインを造り始め、今回のヴィンテージが本格的なリリースとしては初のワインです。
ワイナリー名のCfaは、ドイツの気候学者ケッペンの気候区分で、温暖湿潤気候帯を意味し、この区分の中に入る日本を表すそうです。日本という国で日本のワインを熟知したメンバーがワインを造る醸造所という意味だそうです。また品種名マスカット・ベーリーAの次のDは社内の分類記号だそうです。

エッジに紫の見える淡いルビー色。若々しい色合い。ぶどう由来の甘さを感じさせる香り。綿菓子、キャンディー、チェリーやストロベリーなど赤い果実の華やかな香りが立ち上がる。アタックはスマート。たっぷりの果実味とそれに溶け込んでいる優しい酸。細かくきれいなタンニンのバランスが良い。軽やかな味わいなので、幅広い和食に合いそうなミディアムライトの赤ワインです。

このワインに使われているマスカットベーリーAは、甲州市塩山牛奥地区産だそうです。色々なところに、こだわりや個性が光るこの新しいワイナリーの本格初リリースワインを味わうことができて、私達はとてもラッキーでしたし、これから生み出されるワインに注目していきたいと思いました。




4番目のワインです。
・キザン ファミリーリザーブ 2012    機山洋酒工業(株)        
先程のワインは単一品種でしたが、このワインは塩山地区自社畑の、メルロー55%、ブラッククイーン35%、カベルネソーヴィニヨン10%のブレンドワインです
ブレンドする理由は、各品種の足りない部分を補い良いところを引き出したり、味わいに複雑実を増したり、ボディに厚みがでたりするところにあると思います。さてこのワインはどうでしょうか。

エッジに紫の見える濃いめのスミレ色。中心部がやや黒く見える。スミレの花の香り、ブラックべりー、桑の実、カシス、ハーブ、動物的なニュアンスなどやや複雑な香り。アタックは強い。果実味を感じた後、しっかりした酸、若々しいタンニン、軽いコーヒーのような苦みなど全体のバランスが良い。それぞれのぶどう品種の特徴が生かされている。若々しいが複雑味のあるミディアムボディーの赤ワインです。焼き肉、ビーフシチュー、スパイスのしっかり利いたステーキと合わせたい。

古屋さんからワインに含まれる酸についてお話がありました。ワインにとって酸は非常に大切な要素であり、酸が少ないと水っぽいぼやけた味わいになってしまう。このワインは酸がしっかりしているので、熟成に向く。10年後位の熟成したこのワインも味わってみたい。丁度その頃が飲み頃ではないかとのお話です。

予定していたテイスティングワインが終了しました。それぞれのワインが美味しくて皆さん大満足です。さらにさらにハプニングです。古屋さんからワインのプレゼントがありました。

・フタバ・メルロー 2012    (山日・YBSグループのオリジナルワイン) 
2008年に山日・YBSグループ各社の有志で発足した「ヴィニュロンズクラブ」が旧双葉町の社有地で栽培したメルロー100%のワイン。2012年は古屋さんも汗を流し、育てたぶどうのワインだそうです。愛着のある貴重なワインをいただきました。やや落ち着いた色合いの淡いルビー色。プラムやブラックベリーなど黒い果実の香り、黒こしょう、動物的なニュアンスなどやや複雑な香り。アタックは柔らかい。豊かな果実味、程良い酸、こなれたタンニンが一つにまとまり、バランスがとれている。余韻が長い。豊潤でまろやかな今が飲み頃のミディアムボディーの赤ワインです。

プレゼントワインのおかげで、メルロー主体のブレンドワインとメルロー単一ワインの色、香り、味わいの比較ができてとても面白かったです。古屋さん大切なワインをありがとうございました。

テイスティングが終わったところで皆さんからの質問です。
Cfaバックヤードワイナリーのワインの名前、分類、ワインのキャップについて。この個性的なワイナリーに皆さん興味深々です。キャップはVino-Lok(ヴィーノ・ロック)栓というガラスの栓です。 ろ過について。 私篠原が用意した使用済みのろ過紙を回して見ていただきました。
まだまだ聞きたい事もお伝えしたい事もたくさんありますが、残念ながら時間になってしまいました。

今回は、お客様にワインをお勧めする立場の古屋さんからワインについての色々なお話を聞くことができました。D&DEPARTMENTのセラーの選りすぐりのワインの中からここでしか飲めないワイン、こんなに楽しいバックヤードを持っているワインを教えていだだいて、普段ワインに親しんでいる方も目からうろこだったとおもいます。セレクトされたワイン達も皆違った個性で面白かったし、本当に美味しかったです。ますますエキスパートに磨きをかけて、大勢の方のワインライフに夢を与えてあげてくださいね。
古屋さん本日はお忙しいところを本当に有難うございました。今後ともよろしくお願いいたします。

さて、次回はぶどうまつりの翌日です。二日酔いの方も目がぱっちり覚めるような楽しいお話をしてくださるゲストをお招きします。どうぞお楽しみに!!
 
篠原