かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第69回 2015.4.5

 参加者  県外21名  県内6名  計27名
講師  篠原シニアワインエキスパート


アシスタント  深澤さん、尚枝さん



ゲスト  「ビストロ・ミル・プランタン」  五味千春様



ワインリスト
・彩紅藤(あやべにふじ)甲州 2013 本坊酒造(株)山梨マルスワイナリー
・ジャパニーズスタイル ワイン 甲州2013   アルプスワイン(株)
・かざま甲州 シュール・リー 2013      甲斐ワイナリー(株) 
・アマリージョ 2013            (株)ダイヤモンド酒造
 


セミナーの内容
1 本日のテーマ「地域別甲州種ワインの飲み比べ」
2 テイスティングワインについて
3 本日のゲスト 「ビストロ・ミル・プランタン」 五味千春様の紹介


レポート  4月、桜の花も桃の花も一斉に開いて春真っ盛り。新しいスタートの季節です。
我が「かつぬま朝市ワインセミナー」も今シーズンの幕開けです。早朝からの花散らしの雨もなんのその。本日のゲストのこの方が来られれば、いっぺんに良いお天気なります。満席のお客様、有難うございます。そしてお帰りなさいのリピーターさんの沢山の笑顔にまた会えて、とても嬉しいです。


今日は、この朝市でとんでもない事が起きるとの情報が入っていますので、早々にセミナースタートです。
本日のゲストは、「ミルプラさん」こと五味千春さんです。


千春さんは、もう皆さんご存知の「ビストロ・ミル・プランタン」を、パートナーの五味丈美さんと共に経営されている、オーナーソムリエさんですね。このセミナーに2度目のご出演です。前回大好評でした「ロゼ特集」に引き続き、今回は、甲府盆地内の4つの地域で栽培されている甲州種から造られたワインを飲み比べようという、「甲州特集」をしてくださるそうです。


皆さんのテーブルには、ご自分で取っていだいた4種類のグラスが並んでいます。こうして並べてみると、ワインの色が透明に近い淡い色合いから、段々黄色がはっきり見えて来る、色のグラデーションの比較をすることができます。香りの違いは?味わいの違いは?と、気持ちがワクワクしてきます。


ここでせっかくの機会ですので、千春さんにテイスティングの方法を教えていただきました。
・まず外観からです。ワインの色の濃さ、不純物が入っていないかどうか。グラスを目の高さに持って、液体の盛り上がり部分、ディスクの厚さを見ます。ディスクの厚さによって、アルコールのボリュームや成分であるグリセリンの量の多さを推測します。


次にグラスを少し傾けて、グラスと液体の触れ合う部分(エッジ)で色を見ます。グリーンの色が見えるか、黄色の色合いはどうか。傾けていたグラスを起こした時に、グラスの壁面に流れるワインの感じ、速度や足(粘性)を見ます。この外観によって、このワインが健全かどうか、原料のぶどうが収穫された地域の気象状況、収穫年、ワインの凝縮度などが判断できます。

・次に香りをみます。グラスに鼻を近づけて香りを嗅ぎます。ぶどう由来の香り、お花や果実の香りがあるかどうか。最初はグラスを回さずに香りを嗅いで、その後グラスを回して(スワリングして)、ワインと空気が触れ合って立ち上がる香りを嗅ぎます。

別の香りがあるか、バニラのような香り(樽を使った時に出てくる)、イーストや酵母の香り(甲州種をシュール・リーした時に出てくる)があるかどうか。香りからは、ぶどうの品種やワインの醸造方法などが判断できます。
・最後に味わいをみます。ワインを口に含み、舌の先から口の奥にまで回して味わいます。甘み・酸味・苦み・渋みはどうか、全体のバランスがとれているかどうか。 
この味わいによって、アルコールのボリュームやワインの熟成度、凝縮度、軽いワインか重いワインか、自分の好みかどうか判断できます。皆さん、真剣な表情でテイスティングしています。
さあテイスティングの方法を学習したあとは、今度は気楽にワインを楽しみましょう!
いよいよ千春さんセレクトの4種類のワインの飲み比べです。


1.シャトーマルス 彩紅藤(あやべにふじ)甲州 2013

甲府盆地の西側に位置する、南アルプス市産の甲州種使用。フリーランジュースのみを低温で発酵し、シュール・リー製法で造られたワイン。
名前の「彩紅藤」は、甲州ぶどうの皮の色が、日本の伝統色「紅藤色」に似ていることから付けられたそうです。エチケット(ラベル)は、藤色を基調に、ききょうや萩の花などが美しく描かれ、このボトルが置かれただけでテーブルが華やいだ雰囲気になりそうです。       
・エッジにわずかにグリーンが見えますが、ほぼ無色に近い色合い。白いお花や、ハッサクなどの和柑橘の香り。穏やかな酸。味わいは柔らかく、ピュアで優しいので、飲み疲れしない、やや辛口のワインです。
今の季節の食卓には、昆布でおダシをとった湯豆腐や、オリーブオイルを加えたカルパッチョなどがおすすめだそうです。


2.アルプスワイン ジャパニーズスタイル ワイン 甲州 2013

甲府盆地の南側に位置する、笛吹市一宮・御坂・境川地区の甲州種使用。シュール・リー製法を用いない、シンプルな醸造の方法で造られたワイン。
ごく淡いピンク色の見える、少し落ち着いた色合い。グレープフルーツやりんごの香り。しっかりした酸と、中盤からの甲州種特有の苦みが、ワインに旨味とボリューム感を与えている。どこか懐かしい味わいのある、辛口のワイン。
合わせるお料理は、地元でとれる根菜類や、里芋、こんにゃくなどのお煮しめ(春祭りや秋の収穫祭などのお料理)などが良さそうですね。


3.かざま甲州シュール・リー 2013


甲府盆地の東南に位置する、甲州市勝沼町下岩崎の契約農家の甲州種使用。
エッジにグリーンの見える、ごく淡いレモンイエロー。輝きが美しい。グレープフルーツやイーストの香り(食パンの中身の部分の香り)、酵母の香りが立ち上がる。果実の甘みと若々しい酸味のバランスが良い。アフターに白桃のようなコクのある果実の甘みが特徴的な、やや辛口のワイン。今夜の食卓のおかずには、季節を問わず和食なら何にでも合いそうな、オールマイティーなワイン。


4、ダイヤモンド酒造 アマリージョ 2013


黄色の地にオレンジの唐草模様のある、お馴染みのエチケットですね。甲府盆地の東側に位置する甲州市勝沼町岩崎地区の甲州種使用。
4種類のワインの中では一番色が濃い。落ち着いたイエロー。完熟したオレンジやイヨカン、白桃など華やかな香りが立ち上がります。芳醇な味わい。豊かな果実味、程良い酸、旨味を伴う僅かな苦みのバランスが良く、しっかりしたボディーが感じられる辛口のワインです。
おすすめ料理は、なべ料理だそうです。お魚主体でも良し、鶏肉主体でも良し、たっぷりの野菜を入れたおなべと合わせたいですね。

4種類の地域別甲州種ワインの飲み比べが終わりました。今回はすべて2013年のヴィンテージですが、2番目のアルプスワインを除いた3種類が、シュール・リー製法のワインです。
シュール・リーのワインと、そうでないシンプルな造りのワインとの香りや味わいの違い、それから同じシュール・リーでも優しい味わいや、ちょっと甘みが感じられるタイプ、しっかりボディーのタイプなど、個性の違いが感じられる面白い比較が出来ました。


シュール・リー製法についての千春さんの説明です。
シュール・リー(Sur Lie)とは、アルコール発酵終了後、オリの上で数か月間(一般的には5カ月以上寝かせておくと、シュール・リーと表記できる)寝かせておいて、瓶詰めの直前にオリ抜きをする方法です。メルシャン(株)が、フランスのロワール地方のミュスカデ種で造られるシュール・リー製法を参考に開発し、1983年から勝沼で造られてきました。30年を経過した現在、シュール・リーは、甲州種の辛口ワインの代名詞になっているほど普及されています。シュール・リーの特徴は、香りにイーストや酵母の香りが表れること、フルーティーですっきりした辛口タイプのワインに仕上がる事などです。

同じ甲州種ワインでも、収穫して仕込んですぐに飲めるヌーヴォーワインや、数か月間オリと寝かせるシュール・リーワインや、樽でしっかり熟成させる樽熟成ワインなど、造り方でバラエティーに富んだワインが味わえます。皆さんも是非いろいろ味わって自分の好きなタイプを見つけてくださいとお話されました。この後皆さんからいくつもの質問がありましたが、その中で特に知っておくと役立つ方法を教えていただきました。

熟成したワインを飲む際、ボトルの底にオリが溜まっているのが事前にわかっている時には、別の容器に静かにワインを移し替えるデキャンタージュという作業を行いますが、うっかりそのままグラスに注いで、オリが混ざってしまった場合にはどうしたら良いかという質問です。
答 その場合には、コーヒーのフィルターを使ってオリを取り除きましょう。少しワインの成分も失われますが、ざらざらしたワインを飲むよりはるかに良いです。との答えに、皆さん大きくうなづいて納得していました。



楽しい時間は瞬く間に過ぎて、そろそろ終わりの時間がせまって来ました。
丁度この時、にぎやかな楽団の演奏と大勢の歓声が聞こえてきました。実は、私達はワインセミナーに夢中になっていましたが、今日の朝市では、素晴らしい結婚式が執り行われていたのでした。そのお祝いパレードがやって来たのです。

私達セミナー仲間も、大急ぎで甲州ワインの入ったグラスを用意して、お二人に渡し、みんなで祝福の乾杯をしました。そして口々に「おめでとう」と言いながらクラッカーを鳴らしてお祝いしました。朝市史上初めての結婚式に参加できて、セミナー仲間も大はしゃぎ、「すばらしい!」の連発でした。真っ白なウエディングドレスとタキシードのお二人の笑顔がとても印象的でした。


お祝いムードに包まれて、お名残り惜しい気持ちでセミナーが終了しましたが、ゲストの千春さんを囲んで写真をとったり、「去年のロゼ特集も良かったけれど、今回もとても楽しかったです。」とか、「今までワインは口の先で飲んでいたけれど、これからは口の中や舌の奥まで回して、しっかりと味わいます。」などと言いにきてくださったりで、皆さんなかなか離れがたい様子でした。


千春さん、日曜日のレストランで一番お忙しい時間にご出演くださり、本当に有難うございました。またのご出演を心からお待ちしております。


春爛漫の「かつぬま朝市ワインセミナー」、満員のお客様の笑顔と、幸せなムードに包まれて、とても良いスタートができました。


次回のゲストも素敵な方をお招きする予定です。どうぞお楽しみに!    篠原