かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第71回     2015.6.7

参加者  県外12名  県内10名  計22名

講師  篠原シニアワインエキスパート 

ゲ  ス ト  「ビストロ ミル・プランタン」 オーナーソムリエ 五味丈美 様


アシスタント  深澤さん、尚枝さん


ワインリスト
・ルミエール ペティヤン デラウエアー 2012 (株)ルミエール
・クレマチス ロゼ 2014           四恩醸造(株)
・重畳(ちょうじょう)スパークリング 2014  大和葡萄酒(株)
・あじろん スパークリングワイン       (株)くらむぼんワイン

セミナーの内容


1 本日のテーマ「スパークリングワイン特集」
2 テイスティングワインについて
3 本日のゲスト 「ビストロ ミル・プランタン」 五味丈美様の紹介
4 甲州種ワイン最新情報


レポート
空気の澄んだ気持ちの良い朝です。6月は勝沼の農家さんにとって猫の手も借りたいほどの農繁期ですが、この朝市は相変わらず大勢のお客様で大賑わいです。我がワインセミナーにも、予約の方と当日申し込みの方、更に立ち見のお客様が取り囲んで始まりを待っています。早速セミナースタートです。


本日のゲスト「ビストロ ミル・プランタン」オーナーソムリエの五味丈美様の紹介です。東京銀座「小十」や「レカン」でのシェフソムリエを経て、2010年から勝沼でフレンチレストランを経営されています。各種講演会や有名なワイン雑誌にも度々登場する本当にお忙しい人気ソムリエさんですが、我がワインセミナーにも気軽にご出演下さり、心から感謝しています。

五味さんセレクトの本日のワインは、全てスパークリングワインです。様々なシーンに万能なタイプのワインですが、これから夏にかけてひときわ爽やかに味わえるワインですね。

五味さんのお話です。
スパークリングワインには幾つかの造り方があり、それによって味わいも変わってきます。造り方を簡単におさらいしておきましょう。

・瓶内二次発酵方式(トラディッショナル方式とも言います)
シャンパーニュに代表される製法です。スティルワイン(一般的な泡の出ないワインのこと)を瓶に詰めその中に糖分と酵母を入れて、瓶の中で二次発酵を起こさせる製法。山梨県で初めて甲州種で瓶内二次発酵を行ったのは機山ワインさんで、2000年ヴィンテージが最初です。
・シャルマ方式(キューヴクローズとも言います)
スティルワインを密閉したタンクに入れ、その中で二次発酵を起こさせる、タンク 内二次発酵。
・トランスファー方式
瓶内二次発酵させたワインを加圧したタンクに入れ、冷やして濾過してから新しいボトルに詰め替える方法。オリ抜きが簡略化される。
・ガス注入方式
ボトルに入ったスティルワインに炭酸ガスを吹き込む方法。
・アンセストラル方式(リュラル方式とか田舎方式とも言います)
一次発酵途上のワインを瓶に詰め、残りの発酵を瓶の中で行うと、炭酸ガスがワインに溶け込む瓶内一次発酵

などがあります。




次にスパークリングワインの抜栓方法を教えていただきました。


皆さん五味さんの手元に注目です。
まず、キャップシールをはがします。


次にコルクを親指で押さえます。栓が開くまでこの指は離さないでください。


コルクを止めてある針金をこの様にゆるめます。親指はまだコルクを押しています。



ボトルを少し傾けて他方の手でボトルの底の部分をつかみ、コルクは回さずにボトルの方を回します。


コルクがゆるむとガス圧で上にあがってくるので、飛び出さないよう親指で押しながらゆっくりと抜き、8割位抜けたらコルクを向こう側に倒すとガスがシューと抜けます。



この位(45度位)傾けてやると、ワインが吹きこぼれずに、泡がきれいに残ります。



五味さんの見事な手さばきに皆さん拍手喝采です。



又、抜栓が苦手な方は、栓の上にナフキンをかけてやると安心です。

さてこちらのキャップは先程のとは少し違います。

ゾルク栓と言い合成樹脂で出来ていて、この黒い栓を回すと開き、ワインが残ったらはめればストッパーとして再利用できますのでとても便利です。
 



いよいよテイスティングにはいります。五味さんの手元や口元に注目です。
・ルミエール ペティヤン デラウェアー 2012  (株)ルミエール

デラウェアー主体でシャルドネが10%位使用されている。瓶内で二次発酵の後1年間熟成させた。
酵母、食パン、青りんごなどフレッシュな香り。ガス圧はソフト。冷やして食前酒(アペリティフ)としても良い。グラスのディスクの周りに白いきれいな泡が見えるが、酸がしっかりしている時に多くみられる。真珠のリングともいわれる。

・クレマチス ロゼ 2014  四恩醸造(株)

巨峰から造られた微発泡のワイン。淡いきれいなサーモンピンクのロゼ。オリがあるので少しにごりあり。若いサクランボ、オレンジ、レモンピールなどの香り。最初のデラウェアーと比較すると酸が穏やかなので、優しい味わい。このワインはアンセストラル方式で造られている。

・重畳(ちょうじょう)スパークリング2014  大和葡萄酒(株)

甲州100%のスパークリングワイン。爽やかな和の柑橘、カボスとか夏みかんの様な香り。果実味やミネラル感がしっかりしているので、少し苦みのある山菜とかハーブ、お魚のカルパッチョなどと食中酒として楽しみたい。余韻が長く続く。
このワインはガス注入方式で造られているが、タンク内で3週間かけてゆっくりガスを注入しているので、きれいで心地よい泡の感触が楽しめる。

・あじろん スパークリングワイン  (株)くらむぼんワイン

アジロンダックという黒ぶどうから造られている。フルーツキャンディー・バラのポプリ・サクランボ・イチゴジャムなど甘みを感じさせるアロマティックな品種。甘口に造られているが、収れん味や酸によって爽やかな味わいになっている。デザートワインとして、またフルーツのサクランボと一緒に楽しむとおもしろい。もしワインが残ったら、火を入れてアルコールを飛ばしてゼリーやシャーベットにするときれいで美味しい。



五味さんの説明を聞きながらのテイスティング、皆さんとても幸せそうです。


この後、五味さん大サービスです。

  今朝こちらへ来られた時に何かを抱えていたと思ったらこれでした。

木の箱から出てきたものは? ピカピカ光るサーベルでした。

結婚式やお祝いなどの時に、ソムリエさんがサーベルを使ってシャンパンの口を切り落とし、みごとな泡がワアーっと吹き出して、華やかにお祝いムードを演出する
(シャンパン・サーベラージュと言います)そのサーベルです。
めったに見られないその実演をしてくださったのです。参加者の皆さんも立ち見のお客さんまでカメラのシャッターを切ります。

ただし残念なことに、今日は中身の入っていないボトルでの実演でしたので、実際に瓶の口を切ることはできませんでした。(中身のシャンパンのガス圧でキズの入った瓶の口が飛ぶのだそうです。)


でも、五味さんの真剣な表情でその雰囲気はしっかりと感じとれました。皆さん大喜びで、大きな拍手でした。


素晴らしいパフォーマンスの後は、質問タイムです。
Q ワインを飲むとたまに頭痛がすることがあるが、酸化防止として使われている亜硫酸の関係でしょうか?
A 人それぞれによって感じ方が違うので一概には言えませんが、ワインに入っている亜硫酸の量はごく僅かですので、ほとんど人体には影響はありません。亜硫酸の効果は、酸化防止としての役割、ワインの色が安定する、ワインが熟成するなどがあげられます。

Q シャンパンを飲む時のグラスは?
A 2種類の形があります。細長いフルート型と平べったいクープ型があります。実際にワインを楽しむには、香りが直接鼻に入って長く楽しめるフルート型が良いでしょう。
クープ型にはこんな面白い言い伝えがあります。その昔、1600年代のフランス、ルイ王朝の頃、年配の貴婦人がシャンパンを飲む時に、グラスを最後まで飲み干すと首のしわが気になるというので、ガラス職人に特注のクープ型のグラスを作らせたとか。
また一説には、このクープ型は、ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの胸の形などと言う説もあるようです。テイスティングをする時は、いつものテイスティンググラスで行い、また家で気楽に楽しむ場合には、大きめのグラスで飲むのも良いでしょう。

Q スパークリングワインをテイスティングする時、グラスを回しても良いでしょうか?
A グラスを回しても構いません。スワリングしてガスが少し抜けると香りがつかみやすくなります。

Q スパークリングワインのガス圧ってどの位?
A スパークリングワインの基準は20℃で3気圧と言われています。1気圧未満はスティルワインに入ります。シャンパーニュ(瓶内二次発酵)は5気圧以上です。ペティヤンは3気圧未満、アンセストラル方式(リュラル方式・田舎方式の瓶内一次発酵)は2気圧位です。


Q 飲みきれないスパークリングワインを保存する際のストッパーの扱いについて教えてください。
A スパークリングボトル専用のストッパーを使います。このストッパーの場合開ける時に注意が必要です。ストッパーが飛び出すことがありますので、はねを同時に上げないで先に片方だけ上げて、ガスを抜いてからもう片方を上げるようにします。残ったワインは出来るだけ早く飲みましょう。

なるほど納得。皆さんメモをとったりして真剣に五味さんのお話に聞き入っています。もっともっとお話を聞きたいところですが、ランチに大勢の予約が入っているので、もうお店に戻らなくてはなりません。まとめです。


きょうの「スパークリングワイン特集」は、原料のぶどうが、デラウエアー・巨峰・甲州・アジロンと山梨を代表する生食用の品種から造られた4種類のワインを味わっていただきました。生食用の品種からもこのように素晴らしいワインが出来ることを知っていただき、大好きになってもらえると嬉しいです。

五味さん、レストランがお忙しいところをご出演くださり本当に有難うございました。いつもより短時間でご無理を言いまして申し訳ありませんでしたが、スパークリングワインのように中身がぎっしりと詰まった素晴らしいお話でした。


爽やかに格好よく現れて、皆さんを喜ばせてくれて、またさっと格好よく去って行く(サーベルを抱えて)。昔テレビで見た、疾風(はやて)の様に現れて疾風の様に去って行った月光仮面のように(少し古い?)颯爽としていました。


緊張感が解けてちょっと気持ちが緩んだところですが、もう少し時間があります。折角の日曜日にわざわざこのセミナーに来てくださった皆様に、目いっぱいワインのことをお伝えしたいと思います。


そこで前回に引き続き、4月23日に宮光園で行われた80年〜90年も前に勝沼で造られたワインの試飲会の模様をお話させていただきました。(詳細は前回70回のレポートで)

最後に、この季節勝沼のぶどう畑にいると、あちこちから聞こえてくるカッコウの鳴き声にちなんで、全員であのカッコウの歌を輪唱で歌いました。とても気持ちよく上手に歌えて、皆さんにこにこしていると、お隣のお店の銅工房さんが「素晴らしいハーモニーだったよ。やっぱり歌はいいね。」とわざわざ言いに来てくださいました。
今回も大勢の皆さんにご参加いただき本当に有難うございました。皆さんの心に何かひとつ楽しかった思い出が残ってくれればうれしいです。

次回も素敵なゲストをお招きする予定です。どうぞお楽しみに。  篠原