かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第72回
     2015.7.5
 
参加者  県外4名  県内10名  計14名

講師  篠原シニアワインエキスパート



ゲスト
奥野田葡萄酒醸造(株)  中村 亜貴子様



アシスタント
深澤さん、尚枝さん




ワインリスト
・2013 奥野田フリザンテ 奥野田葡萄酒醸造(株)
・2014 ラ・フロレット ハナミズキ・ブラン 〃
・2014 ラ・フロレット スミレ・ルージュ 〃
・2014 ラ・フロレット ローズ・ロゼ 〃
 

セミナーの内容
1 本日のテーマ「奥野田ワインの秘密を探る」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲスト 奥野田葡萄酒醸造(株) 中村亜貴子様のお話


 
レポート
7月の朝市は梅雨の真只中。連日雨が降り続いています。1週間前から天気予報とにらめっこしてもずーっと雨・雨・雨。今朝も降っています。もうこれ以上大降りにならない事を願いながら、雨合羽に長靴を用意して会場に到着。テントを移動して2つのテントの境目から、布に溜まった雨を落とす「滝の道」を作って大雨対応シフトに、またテーブルもコンパクトにまとめて準備完了。不思議なことに、このころには雨がすっかり止んでしまいました。でもさっきまでの雨の中、はたしてお客様は来てくれるでしょうか? 心配いりませんでした。ワインセミナーのお客様は、本当に有難いです。

開始時間には、予約の方は全員揃い、更に当日申し込みの方も参加して、賑やかにセミナーがスタートしました。


今回は、こんなお天気にも関わらず、実は私篠原の心はワクワクしているのです。

以前、もう4年以上も前になりますが、奥野田ワイナリーのオーナー中村雅量(まさかず)様にゲストでこのセミナーにご出演いただきましたが、そのお話のおもしろさと、その考え方から造り出されるワインの美味しさに強いインパクトを受けました。 その時にパートナーの亜貴子様にお会いし、いつか亜貴子様にもご出演いただきたいと思い、ようやく 1年前に約束をして、今日ゲストとしてお迎えする事ができました。今日はその魅力をたっぷりとお伝えしたいと思います。


それからもうひとつ。ワインを楽しむ時に、会場の皆さんがひとつにまとまって更に楽しくなるような何かをしたいと思っています。前回は皆で歌を歌って大いに盛り上がりましたが、今回はワイン俳句を作ります。どのような事になるのかとても楽しみです。

本日のテーマは「奥野田ワインの秘密を探る」です。さてどんな秘密があるのでしょうか。ゲストのお話の中から探していきます。

ゲストの紹介です。本日のゲストは、甲州市塩山牛奥にあります奥野田葡萄酒醸造(株)の中村亜貴子様です。奥野田ワイナリーは、もともとはこの地区のぶどう農家がワインを造っていた共同体でしたが、平成元年(1989年)に中村雅量さんが買い取り現在のワイナリーになりました。



亜貴子さんは勝沼の生まれですが、以前はワインに関して余り興味がなかったそうです。パートナーの雅量さんと一緒になって、初めてぶどうの栽培からワイン醸造まで、何から何まで全て自分達の力でしなくてはならない事にとまどったそうです。

現在はご夫妻の外に2人の方がこの仕事に携わっていて、常時4人でやっていますが、小規模のワイナリーには、自分達の考えが直接反映できる良さがあり、チャレンジ精神旺盛なご夫妻にとって今ではこのワイナリーはかけがいの無いものになっているそうです。




自己紹介の後は早速テイスティングです。
・2013 奥野田 フリザンテ

黄色の地に黒い蝶が描かれているラベル(エチケットともいう)。デラウェアー100%のにごりスパークリングワインです。実は、この奥野田地区は日本で初めてデラウエアーが栽培された場所で、糖度の高い完熟デラウェアーを原料としている。・・・(秘密その1) 瓶内二次発酵で造られているが、発酵中の酵母をボトルに閉じ込め、オリ引きをしないでにごりワインにしている。ガス圧は2〜2.5気圧でビール(2気圧位)より少し高い位の、微発泡性のスパークリングワインに仕上がっている。 フリザンテとは、イタリア語で微発泡ワインのこと。軽快な味わいで家庭のお食事と一緒に飲んでもらいたいとこのワイン名にしたそうです。
きれいな麦わら色。無濾過の為にごりあり。ディスクの周りに細かい泡のリングが見える。果実由来のキャンディーのような甘さを連想させる香りや、イーストやパンの焼けたようなクリスピーな香り。たっぷりの果実味としっかりした酸、口の中でぴちぴちと弾ける感じが心地良い。これからの暑い季節に、しっかり冷やして飲みたい爽やかな微発泡のやや辛口白ワイン。

・2014 ラ・フロレット ハナミズキ・ブラン

黄色の地に白い花みずきの花が描かれているラベル。ラ・フロレットとは小さなお花の意味でシリーズの名前。丁寧に収穫した甲州種を除梗・破砕して、発酵前の果醪(かもろみ)の状態で短時間果皮や種と一緒に漬け込んでおき(スキン・コンタクトとかマセラシオン・リミテという)、果実の持つ味わいを最大限引き出している。搾汁後は野生酵母でゆっくりと低温発酵させて、豊かな香りや奥行きのあるワインになっている。
色調は、ピンクがかった淡めのオレンジ色(あかね色)で、一般的な甲州ワインより色が濃い。和柑橘(みかん、いよかんなど)やナッツの香り。ふくよかな果実味、優しい酸味、ごく軽いタンニンのバランスが良い。飲み込んだ後にミネラルを感じる。全体的に優しくボリューム感のあるやや辛口の白ワイン。野菜の甘みや旨味に合うワインを念頭に造られた甲州種ワイン。野菜だけでなく豚肉のソテーなどお肉とも相性が良い。
ここで野生酵母についてお話がありました。
奥野田ワイナリーでは、野生酵母でワインを醸造していますが、ぶどうの果皮についている野生酵母にしっかり発酵してもらうには、環境を整えるのが難しい。ぶどうは、畑で収穫する際にしっかり手入れして、健全果のみを工場に運び込むようにしています。
野生酵母による発酵は低温でゆっくりと発酵するので時間がかかる。当ワイナリーでは野生酵母による発酵が終わったら、再度酵母を加えて発酵を行う。これを自分達では「二段式ロケット発酵」・・・(秘密その2)とよんでいます。(おもしろいネーミングですね。中村さんのユーモラスなお人柄が感じられます。)

・2014 ラ・フロレット スミレ・ルージュ

ラ・フロレット・シリーズの赤ワイン。白地に可憐な紫のスミレの花が描かれているラベル。メルロー100%エッジに紫の見える若々しいやや淡目のルビー色。スミレのお花、ブルーベリー、カシス、黒コショウ、ハーブ、バニラなどの香り。アタックはスマート。フレッシュな果実味としっかりした酸、収れん味のあるタンニンなど若々しい味わいだが、とげとげしたところが無く、まろやかさを感じる。アフターに上品なタルの香りが戻ってくる。1年後2年後のタンニンの変化を楽しみたい、軽快でふくらみのあるミディアムボディの赤ワイン。

亜貴子さんのお話です。
当ワイナリーで作付面積の最も多い品種。このメルローは、フランスのボルドー地方のメルローに比べ、柔らかく女性的なワインに仕上がっています。ボトルもボルドーボトルでは無く、ブルゴーニュボトルを使用し、このワインの優しさ柔らかさを表しています。合わせるお料理は、赤身のお肉、ローストビーフ、焼き鳥などなど。

・2014 ラ・フロレット ローズ・ロゼ

ラ・フロレット・シリーズのロゼワイン。濃いピンクの地に華やかなピンクのバラの花が描かれているラベル。ミルズ100%、甘口。淡いサーモンピンクの優しい色合い。香りのボリュームは大きく、華やかなお花(バラとかライラックのような)の香り、チェリーや白桃、ライチ、洋梨など原料ぶどう由来の甘さを連想させる香り。豊かな果実味、程良い酸、軽いタンニンのバランスが良い。軽やかで、爽やかな甘酸っぱさを感じるチャーミングなロゼワイン。白カビ、青カビなどカビのチーズや、少し塩っぱいものに合うそうです。もちろん、デザートワインとしても最適です。
このロゼワインの色を、亜貴子さんはブラッシュ・ピンクと呼んでいます。女性の頬の色をイメージしているそうですが、チャーミングなこのワインは、造り手の亜貴子さんにぴったりの印象ですね。毎日少しずつ飲んでも、2週間位は味が変わらないというのも有難いです。もっとも、その前に空になると思いますが。セミナー参加者のほとんどの方が初体験の「ミルズ」という品種・・・(秘密その3)についてお聞きしました。ぶどうの粒はマスカット・ベーリーA位のやや大粒の黒ぶどう。


マスカット系のぶどう品種が改良されてできたというミルズは、昔はこの牛奥地区に沢山栽培されていたそうですが、完熟するとぶどうの粒が梗からはずれやすいということで、出荷に向かず、段々姿を消していったそうです。今では2枚の畑だけにしか作られていない貴重な品種となりました。亜貴子さんはこのぶどうが大好きで、口に入れた時の甘さがたまらないそうです。
「ミルズ」の香りについて確認しました。アロマティックなぶどう品種ですので、甘やかな香りが主体ですが、その中で存在感のある「ライチ」の香りを見つけてくださると嬉しいです。ゲビュルツトラミネールなどにあるこの香りは、いつも飲んでいるワインからはあまり巡り合わないので、この機会にインプットされると良いとおもいます。



ロゼワインの造り方についてお聞きしました。
ロゼワインは一般的には3つの造り方があります。
1、 スキン・コンタクトによる方法
ぶどうを除梗・破砕したあとそのまま果皮と共に漬け込んでおき、適度の色が付いたら搾汁して発酵させる方法。
2、 アッサンブラージュ(ブレンド)による方法
赤ワインと白ワインをブレンドして造る方法。
3、 セニエ法
黒ぶどうを除梗・破砕後果皮と共に発酵させ(赤ワインの方法)適度の色が付いた
ら一部を抜き取り瓶詰する方法。
「ローズ・ロゼ」はスキン・コンタクトによる方法で造られています。ぶどうの状況により、毎年色や味わいに違いがあります。去年と今年を飲み比べても面白いです。

4種類のワインのテイスティングが終わりました。ボトルを並べて皆さんにお見せしました。「きれいなラベルね!」という声が聞こえます。そして皆さんのグラスのワインの色と見比べます。ワインの色合いとラベルの絵、それにワインの味が見事に一致して
素晴らしいです。奥野田ワインの4番目の秘密・・・それはラベルの絵です。
一体どなたが描いているのでしょう?

亜貴子さんのお話です。
自分がまだ醸造に関わる以前の事。ワインを買いたいと思ってショップへ行ったが、一体どのワインがどの様な香りや味わいなのかわからないので、思い切ってラベルを見て買って来た。家でワインを開けてがっかりした。自分の思うワインでは無かったのです。

   
   
   
   

ワインの仕事に就いてからも、ワインのラベルと味わいが一致していると嬉しいという思いがいつも頭から離れず、ある時いたずらにお花の絵を描いてみました。すると思いのほか上手に描けたので自分でも驚きました。早速パートナーの雅量さんに相談して苦心の末出来上がったのが、先ほど皆さんがテイスティングした「スミレ・ルージュ」です。


ラベルに描かれている可憐で優しいイメージのスミレのお花と、若々しくそれでいて優しい味わいのワインとが気持ち良くマッチしていると思いました。
スミレのラベルで絵心が開花した亜貴子さんは、次から次へとラベルを描いて、現在の奥野田ワインのほとんどが亜貴子さんの描かれたものになりました。(ワインヴィーナスは除く)亜貴子さんは今日のセミナーの為に、このようなパネルを作って来てくださいました。
奥野田ワインのシリーズ別のラベルです。こちらは、「ラ・フロレット・シリーズ」。3本共本日のワインです。

こちらの蝶の絵は「ヴィーノ・シリーズ」。品種や味わいによって色を変えてあります。
お食事と合わせた時に、一段と力を発揮するワイン。是非、普段のお食事のお供に飲んでいただきたいです。黄色の地に黒い蝶のラベルが本日飲んだワインです。

こちらは、フラッグシップワイン。ぶどうの葉は、切れ込みが強い方がカベルネ・ソーヴィニヨンで、丸味がある方がシャルドネです。

皆さん、パネルを手に取って、「ステキだね」と言いながら、じっくり眺めていました。
最後に奥野田ワイナリーのイベントのお知らせです。
・奥野田ワインガーデン 7月19日 新しく建てたガーデンテラスで、ワインとバーベキューを楽しむ会です。気軽にお出かけください。
・ワイン用ぶどうの収穫作業の体験 8月下旬〜9月下旬まで 毎土・日・祭日
収穫作業を体験してみたい方、チャンスです。奥野田ワイナリーには、オーナーのこだわりのぶどう畑があります。・・・(秘密その5)
この畑から収穫されるぶどう、この厳しい作業から造りだされるワイン。是非ワイナリーを訪れて、見て、実感して、飲んで頂きたいと思います。

亜貴子さん、4年越しに実現した亜貴子さんとのワインセミナー。とっても楽しかったです。これからも、素晴らしいワインとワインの香りや味わいを実感できる美しいラベルを描いてください。期待しています。
本日は、お忙しいところを本当に有難うございました。また、遊びに来てくださいね。



ワイン俳句
おっと、まだ終わりません。大切なワイン俳句があります。初めての企画で、きっと皆さんセミナーの最初から最後まで、頭の中が5・7・5で一杯だったかも知れませんね。慣れてくるともっと気楽に出来ると思います。でも皆さんのご協力のおかげで、こんなに沢山のワイン俳句が出来ました。ありがとうございました。(掲載は一人一句にさせていただきました。)



・すみれルージュ 味も由来も ごちそうさま! ろみーさん
・つゆ空も 香るワインで 晴れやかに 天使さん
・朝市で 製法学び ほろ酔いに キヨさん
・梅雨空の 下で嗜(たしな)む 蝶と花 わいさん
・雨上がり ワインセミナー 活気出て Kさん
・味わい深く 遠くに見える ぶどう畑 ひつじさん
・朝市の ワインセミナー 蝶が舞う プリマロさん
・雨あがり みどりの中で 飲むワイン お名前なし(残念)
・夏の朝 ワインセミナー 笑い声 オリビーノヒロコさん
・ワイン道(どう) 知れば知るほど おく深い パグリーニョさん
・月一度 飲んで学んで 楽しい時間(とき) なおさん
・ハナミズキ 色ははかなく 味はしっかり かるがもさん
・ときをへて ひかりのかがやきに いろをみて チューチャイ・ループパンチャマさん

ワインより 頭の中は 五・七・五 ・・・ の方ごめんなさい!



みなさん素晴らしいです! 驚きました。
次回は、先日フランスへ行って来られたばかりの方です。最新情報が聞けるかも。
次回もお待ちしております。     篠原