第77回かつぬま朝市ワインセミナーレポート
2016.4.3

参加者  県外18名  県内6名  計24名
講師  篠原シニアワインエキスパート

ゲスト  「ビストロ・ミル・プランタン」  五味 千春 様


アシスタント  深澤さん、尚枝さん






 
 
 
 
 ワインリスト
・BOW(バウ)! Blanc(ブラン)(バウ!白) 2015    ドメーヌ・オヤマダ

・BOW(バウ)! Rouge(ルージュ)(バウ!赤) 2015     〃

・jalopy (ジャロピー 醸し)2015    ドメーヌ・ポンコツ

・おやすみなさい (ロゼ・泡)   2015    〃

 
 
セミナーの内容

1 本日のテーマ「新しいワイナリーのチャレンジ」

2 テイスティングワインについて

3 ワイン俳句について

4 ゲストの「ビストロ・ミル・プランタン」 五味 千春 様のお
 
 レポート  待ちに待った桜の季節。見渡せばどこもかしこも桜の花が満開です。
我がワインセミナーも、美しいお花に迎えられて今シーズンが開幕しました。もうすでに大勢のお客様がお揃いです。お馴染みのリピーターさん、お帰りなさい。初めてのお客様、ようこそお越しくださいました。皆様にお会いできて、ほんとうに嬉しいです。私篠原今シーズンも全力で頑張ります。


早速セミナースタートです。4月のトップバッターのゲストは、春にピッタリのさわやかソムリエ、五味千春様です。今回で3回目のご出演で、もう皆様すっかりお馴染みですね。甲州市勝沼町で、フレンチレストランの「ビストロ・ミル・プランタン」をパートナーと共に経営されていらっしゃいますが、ワインやお料理に関する知識は天下一品です。毎回楽しいお話をしてくださいますが、なんとなんと今回ご紹介くださるワインは、本当に「ビックリポン!」ですヨ!!


千春さんのお話です。
 前回のワインセミナー出演終了後、今回の為に1年間秘策を練ってきました。自分の考えていたラインナップのワインの相談で、勝沼の新田商店さんへ相談に行ったところ、千春さんが朝市ワインセミナーでお話してくれるならば、是非このワインをと勧められたのが本日のワインです。
ドメーヌ・オヤマダは設立2年目、ドメーヌ・ポンコツは設立1年目という、本当に新しいワイナリーです。多分ほとんどの方がまだ知らないと思います。両ドメーヌ共製造本数が極端に少ない為、酒販店さんでもなかなか手に入らない代物です。今回は新田商店さんのとっておきを提供していただきました。さすがの千春さんも、ドメー ヌ・ポンコツは噂には聞いていたが、見るのも飲むのも初めてだそうです。
もちろん篠原も初めてお目にかかります。
なんというグッドタイミング!ワインのカリスマ新田さんがソムリエ千春さんに託したこのワインのお味は如何に? 楽しみです!!



ワイナリーの形について
ペイザナ(仏語で農民の意)農事組合法人  中原ワイナリー
ドメーヌ・オヤマダの小山田幸紀氏が四恩醸造(株)の小林剛士氏と設立した法人。
 日本では農業は割に合わない仕事と思われがちだが、農業が職業として成り立つ事を証明したい。耕作放棄地解消の為にも、自分がその土地に住み、仲間を募って実際に農業をして行動していきたい。その拠点として農事組合法人を立ち上げたそうです。小山田さんは2014年から醸造を始めています。

ドメーヌについて
ドメーヌとは自社畑のぶどうを用いて、醸造から瓶詰、出荷まで一貫して行うワイナリーのことを意味します。現在ペイザナ農事組合法人に加入しているドメーヌは、小山田さんのドメーヌ・オヤマダと松岡数人氏のドメーヌ・ポンコツの2社です。両ドメーヌ共、ペイザナ農事組合法人中原ワイナリーで、共同でワインを醸造しています。

小山田幸紀氏について
笛吹市にある老舗ワイナリー、(株)ルミエールに16年間勤務し、栽培・醸造責任者を務め退社し、2014年に初のドメーヌ・オヤマダとしての仕込みを行い、2015年のヴィンテージは、2年目のワインです。

松岡数人氏について
山梨大学で栽培・醸造の基礎を学んだあと、静岡県の中伊豆ワイナリーへ15年間勤務し、醸造長を務め退社し、2015年春山梨へ移住した。2015年秋にドメーヌ・ポンコツとして初めての仕込みを行い、今回その初ヴィンテージを試飲させていただきます。

最初のワインです。
@ BOW! Blanc(バウ!白)2015 ドメーヌ・オヤマダ
 セパージュ・・デラウエア主体、プチ・マンサン、シュナン・ブランをブレンドBOW!とは何だ? 答えは犬の鳴き声だそうです。小山田さん曰く、世界に向かって吠えることだそうです。(千春さん→新田さん→小山田さんの答え)

千春さんにテイスティングの方法を教えて頂きながら味わいました。

まず外観です。グラスを目の高さに持ってワインを観察します。中程度の濃さのオレンジのような色合いで、少しにごりが見えるので、清澄度が低い感じ。ディスクの厚みも中程度なので、エキス分が多いと言うより瑞々しいワインと思われます。
グラスを少し傾けて起こした時に、グラスの壁面を伝わって落ちるワインのしずくをワインの足などと呼びますが、これからアルコール分や糖分の量を推測します。
このワインはそれ程しっかりした足ではないので、どちらかと言えば軽やかなワインと思われます。

次に香りです。まずそのままで香りを嗅ぎます。蜜の入ったりんご、白い小さなお花、タルからくるイースト(生の食パンの白い部分)の香りなどがとれます。次にグラスを回してもう一度香りを嗅ぐと、最初に感じた香りが更に広がってきますね。
出来立ての新鮮な香りを感じますが、このまま瓶で熟成させると、更に香りが複雑になってくると思います。

デラウエアの基本的な香りとプチ・マンサン、シュナン・ブランのビニフェラ種を加えることによって、しっかりした骨格が出ていると感じます。これが小山田さんの狙っている形なのかなと思いました。
味わってみます。おいしい!という声があちこちから聞こえます。
酸は穏やか。一般的にデラウエアはしっかりした酸が出やすい品種ですが、プチ・マンサンやシュナン・ブランをブレンドすることによって酸を優しくする、絶妙に計算されたワインと言えます。また、にごりから和のおダシのような旨味が感じられ、それが最後まで長く続きます。

ここで千春さんから聞き慣れない2つのぶどう品種について説明がありました。
プチ・マンサン・・・南フランスに多い品種。小さい粒がしっかりしていて果皮が厚い。補助品種として使われることが多い。
シュナン・ブラン・・フランスのロワール地方に多い品種。香りが良く辛口〜甘口スパークリングにまで使われています。
両品種とも日本ではまだ余り栽培されていないので、小山田さんが山梨でこの品種を植えていたのに驚いたそうです。新しいワイナリーのチャレンジ精神を感じます。

A BOW! Rouge (バウ 赤) 2015 ドメーヌ・オヤマダ
セパージュ・・カベルネ・フラン、マスカット・ベーリーA主体、巨峰を少量
ブレンド

淡いルビー色で非常に美しい。グラスを傾けると、エッジに紫が見えますが、ディスクの表面の色がグラデーションではなく全部同じ色調に見えますね。この事からも、若々しさが感じられます。
香りは?「不思議な香りがする」の声あり。
香りに赤い梅の香りを感じます。カベルネ・フランの青々しい香りと、マスカット・ベーリーAの甘い香りが加わって、この様な梅の香りを感じるのでしょうか。マスカット・ベーリーAのチャーミングなキャンディーの様な香りも僅かに感じられます。味わいは、優しい果実の甘みと程良い酸。細やかで柔らかいタンニン。それらの要素がひとつの輪にまとまり、波紋を広げていくように口中に柔らかく広がっていく。ミディアムボディーの赤ワインです。どちらかと言えば早飲みタイプのワインですね。今フレッシュでおいしく飲めますが、もう少し落ち着いたところを飲みたい方は、1年後位がおすすめです。今、このワインの温度は15度〜16度位と思いますが、少し冷やして酸を引き出して飲むのも良いでしょう。バーベキューやお花見など青空の下で飲んでも楽しい、オールマイティーなワインです。
ぶどう品種について
カベルネ・フランは、フランスのロワール地方やボルドー地方で多く造られています。
カベルネ・フランをマセラシオン・カルボニック(ボジョレー・ヌーボーで使われる製法で、低温で若々しい色素や香りが抽出できる)製法で醸造し、それにプレスしたマスカット・ベーリーAがブレンドされている。ヴィンテージによって造り方を変えているので、まだ未知な部分のあるワインです。


B jalopy(ジャロピー 醸し) 2015 ドメーヌ・ポンコツ

ドメーヌ・ポンコツの初リリースワインです。ジャロピーとは英語でポンコツ車を意味しますが、ドメーヌの名前から来ていると思われます。ではどうしてドメーヌの名前を「ポンコツ」としたか?・・・子供の集めるガラクタの中には、時にはおとなも驚くような、キラッと光る何かが見つかる場合がある。だれかにとっての宝物が、造り手松岡さんのジャロピーなのだそうです。

この色を見てください。夕焼けのような美しい色。さてこの品種は何でしょう?
私篠原は、即「アンズ」と言いたくなるような色合いです。実は、これがデラウエア100%で造られていると聞いてびっくりしますね!!
デラウエアを除梗・破砕後、果皮・種ごと9日間漬け込んでおく(マセラシオン=かもし)と、果皮や種から色素やタンニン(渋み)が出てきますが、それを発酵してあります。
外観 淡いオレンジ色。少しにごりあり。このにごりは、軽いろ過のみで、瓶内でオリとの接触を考えていると思われます。ディスクもワインの足もしっかりしていることから、アルコール度数の高さが感じられます。ひとしきりこのワインの色で盛り上がりました。(白?・ロゼ?・オレンジワイン?)

 香りです。
千春さんは最初この香りから甲州の醸しの香りを感じ、その後からデラウエア独特の甘さを感じさせる香りが出てきたそうです。和柑橘、ゆず・かぼす・すだちの皮の香りなど。
味わいです。
アタックでアルコールの強さを感じる。果実の甘みは優しく丸みがあり、酸は穏やかだが果実味を下支えしている。何よりの特徴は渋みで、デラウエアでこの渋味を感じるのはとてもおもしろい。余韻も長めの辛口白ワイン。

ワインの温度について
このjaropyは白ワインですが、渋味(タンニン)があるので冷やし過ぎると渋みが立ってしまう。冷蔵庫から出して常温になるまでの、温度変化による味わいの違いを楽しみたい。

ワインを飲む順番について
一般的には、白ワインの次に赤ワインを飲みますが、今回はその逆にしました。BOW!赤は、MC法によってタンニンを和らげてあるので先に、反対に白ワインのjalopyは醸しによってタンニンを引き出しているので後に飲んで
いただきました。ここで皆さんにA→Bへ、またB→Aへと飲み比べていただきました。jalopyは初体験と言われる千春さんですが、いつもワインのサービスに気を配っている、ソムリエさんならではの勘がまさに的中し、飲む
順番でお互いのワインの良さを生かして味わえることがわかりました。

最後のワインです。
C おやすみなさい(ロゼ・泡) 2015 ドメーヌ・ポンコツ


何やら寝酒によいワインかと思ってしまいます。(笑)
巨峰100%で造られている微発泡のワイン。色はやはりオレンジ系の色合いですが、Bより少しピンクがかっている。こちらは、朝焼けの色と言いたい。やはりにごりあり。(オリ引きなし?)

香りは巨峰ぶどう由来の優しい甘い香りやアンズのような香り。

味わいです。
アタックは優しい。僅かに果実の甘みを感じた後、しっかりとした酸を感じる。
タンニンは柔らかくきれい。ガス圧は低め。全体的に優しい味わいで、いくらでも飲めてしまいそうです。皆さんニコニコ顔です。

千春さんからこのスパークリングワインの造り方についてお聞きしました。
まず巨峰のぶどう(黒ぶどう)で普通のロゼのスティルワインを造ります。発酵が終わったところでビン詰めをします。その時に瓶の中に糖のみを加えて(酵母は入れない)王冠の栓をして、ゆるやかに瓶内2次発酵を促し、そのまま3か月間オリと共に寝かせておきます。ろ過はほとんどしていないと思われるので、他の3種類のワインより一番オリが多い。このワインも初リリースのワインで、醸造方法も独自のやり方なのでまだ未知な部分が大きく、これからが楽しみです。



ユニークなネーミング「おやすみなさい」の意味
どうやらこの巨峰の畑のある地名が「勝沼町休息=きゅうそく」という場所なのでそこから名づけられたようです。
昔えらいお坊様が勝沼に来られた時に、この地で休息をとられたという言い伝えがあり、そこから「休息」という地名になったという故事があります。 やっぱり寝酒に良いからでは無かったようですが、このワインを飲むと幸せな気分になりぐっすりと眠れそうな気がします。(笑)

お料理とのマリアージュについて千春さんのお話です。


・今ちょうど旬を迎えたタケノコがいいですね。若筍とヨードたっぷりのワカメを一緒に炊いたお料理と、おダシの味わいのあるBOW!の白ワインはよく合うと思います。
・BOW!の赤は、イチゴやラズベリー、ブルーベリーなどのデザートと合わせたい。
・jalopyはこの季節の山菜のほろ苦さとよく合います。
・おやすみなさいの泡は、今初めて飲んだので、しばらくこのままを味わっていたい気分です。(笑) ゆっくりマリアージュを考えたいです。

すべてのワインのテイスティングが終わりました。
4種類のワインを並べてみると、思わず「わーっ!きれい!!」と言ってしまいます。優しい色調で、昔から日本の風景の中にあった色。懐かしさを感じる色のワイン達です。

私篠原は、このワインが決まった時に、実際にワイナリーに行ってきました。勝沼ぶどう郷駅の北の方、勝沼町中原地区の山中にペイザナワイナリーがあります。一見してジャロピー風なワイナリー(失礼しました。ごめんなさい。)が目に入り、畑の方に目を転じると、なぜかそこには1台のポンコツ車が鎮座していました。この風景が何の違和感も無くごく普通に自然の中に溶け込んでいて、訪れた人に安らぎと、クスッと微笑んでしまう暖かい感じを与えてくれます。20年以上も前になりますが、この近辺でキノコ狩りをした事も思い出しました。そういった自然の恵みと今日のワインはベストマッチだと思います。


新しいワイナリーとは言え、お二人とも長い醸造の経験をふまえた上で、その信念から造り上げたワインです。飲む人の心を打たないはずがありません。私達もこれからのヴィンテージを楽しみにこのワインを追いかけていきたいと思います。

貴重なワインを提供してくださった新田さん、ありがとうございました。また、お忙しい中をこのセミナーの為に時間を作って、楽しく分かり易く説明してくださったソムリエの五味千春さん、本当にありがとうございました。どうぞまた次回ご出演の為に秘策を練っておいてくだるようお願い申しあげます。



お待ちかねのワイン俳句です。

剪定枝 滴る水で 化粧水  Kさん
神様が すくってくれた なみだもの  ペイザナファンさん
美味しく 味わい深く 学びました  あきもさん
珍しい ワインをenjoy! 勝沼に  しもどんさん
ジャロピー おやすみなさい ポンコツだ  タケ・ジャッキーさん
口開けの ワインセミナー 本年度  G・半田さん
こばなしと おいしいワイン 楽しいひととき  れいさん
ポンコツの 中にキラリと 光る良さ  ドラさん
飲まずとも 伝わってくる おいしさよ  我慢のハンドルキーパーさん
桜見て 思うはロゼと 飲む仲間  ほうとう娘さん
新しい ドメーヌ頑張れ おいしいぞ  紬さん
何も浮かばぬ 花冷えの 勝沼  なつまろさん
朝だけど おやすみなさい ロゼの泡  ユーロさん
里山の ワイングラスの 春の色  シモイツアーズメンバーDさん
人つなぐ ワインの楽しさ 再発見  吾亦紅さん
見つけたよ 小さな宝石 勝沼に  anna.kさん
飲めぬとも 香りと四いろで 満足す  ドライバーMakkyさん
桜咲き はじめての味 花ひらく  旅プーさん
ロゼの味 桃か桜か 微発泡  もぐさん
その名前を 探す人の数だけ ロゼは咲く  群青さん
初ワイン 出会いが楽しい 朝市セミナー  迷走名人さん
勝沼の ワインが取りもつ 縁と縁  ミッフィーさん







次回5月1日のセミナーも、素晴らしいゲストと美味しいワインを予定しております。どうぞおたのしみに。篠原