かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第79回     2016.6.5



参加者
県外5名 県内9名 計14名

講師
篠原シニアワインエキスパート

ゲスト
白百合醸造(株) 石川 資 様




アシスタント
深澤さん、尚枝さん



ワインリスト
・ロリアン スパークリングワイン 甲州 白百合醸造(株)
・ロリアン 勝沼甲州 2015   〃    
・ロリアン 甲州樽発酵 2014   〃   
・ロリアン セラーマスター マスカット・ベーリーA 2015 〃



セミナーの内容
1 本日のテーマ「日本固有品種の魅力を味わう」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの「白百合醸造(株)」石川様のお話


レポート
朝から雨が降っています。ワインセミナーのテントの屋根の真ん中に大きな水溜まりができてそこから雨がポトポトと漏ってきています。とりあえず傘を使ってザーっと雨を落としてさあどうしたものか。雨漏りを避けたテーブルのセッティングをしてお天気とにらめっこ。
勿論この位の雨で中止するような我がワインセミナーではありません。2年前(2014.10.5 第67回)の台風到来のサバイバルワインセミナーに比べたらどうと言うことはありません。何回かあっちこっちへテーブルを移動しているとあら不思議。開催時刻の頃にはほとんど止んでしまいました。次々に参加者の皆さんが集まって来てくれます。よかった!とは言えまだ降りたそうな空模様なので、テントとテントを離して滝の道を作ってセミナースタートです。

早速本日のゲストの「白百合醸造(株)」石川資(たすく)様の紹介です。
石川さんの自己紹介です。


白百合醸造へ入社して現在2年目です。それ以前はフランスで醸造学などを学び、現地のワイナリーで栽培やワイン造りをして、気が付いたら7年も経っていました。途中で1度日本へ帰国した際に日本のワイン造りを体験したいと思い、白百合醸造にお世話になり、そのご縁で帰国後すぐに入社しました。現在は製造部に所属しぶどうの栽培と醸造を担当しています。

羽田飛行場に着いた翌日にはもうワイナリーに来ていたということですので、日本のワイン造りへの並々ならぬ意欲が感じられますね。

白百合醸造(株)について
昭和13年創業の当社は、勝沼のワイナリーの特徴でもあります近隣のぶどう農家による共同醸造組合からスタートし、昭和27年に白百合醸造(株)となり現在に至っています。社長は3代目の内田多加夫です。
創業当初は山梨市で醸造を行っていましたが、昭和60年に勝沼の現在地に移転しました。白、赤、ロゼ、スパークリングのワインをはじめ、グラッパやジュースも造っています。ぶどう品種は、甲州とマスカット・ベーリーAを主体として他に欧州系のシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、プティ・ヴェルドなどなどにも力を入れています。

ワインの造り方について
白ワイン 甲州は9月下旬〜10月にかけて収穫します。
ぶどうを除梗・破砕→粒をプレス(皮・種を取り除きジュースにする)→タンクで発酵
赤ワイン 除梗・破砕→粒を皮・種ごとタンクへ入れて発酵
赤ワインは黒ぶどうの果皮から赤色の色素を抽出する。
ロゼワイン 赤ワインと同じ工程
除梗・破砕→粒を皮・種ごとタンクへ入れて発酵(果皮と漬け込む時間を短くする)酵母は培養酵母を使用している。
発酵にはタンク発酵と樽発酵があるが、品種によって決めている。
スパークリングワイン 当社では主としてガス注入方式で行っている。
甲州100%の白ワインを発酵・熟成させた後ガスを注入して、ガスを含んだワインを瓶詰する。




コルクについて
天然コルクはコルクの木の皮から取って作られている。
スティルワイン用・・・木の目にそって縦に抜き取る。
スパークリングワイン用・・・木の目に直角に横に抜き取る。

理由 木の皮には水分や酸素が通る管のようなものがある(道管)。この道管を伝わって根元から幹や枝に水分や養分が上がっていく。スパークリングワインは中のガスがこの道管から抜けてしまわないように横に抜いたものを使用する。形はスティルワイン用と同じ円筒形だが少し太くなっていて、ボトルに打ち込む時に強い力がかかるのでマッシュルームのような形になる。そしてボトル内のガス圧によってコルクが飛び出さないように、針金で押さえてある。

スパークリングワインを抜栓する時には、先に針金だけ外しているとその間にコルクが飛び出す可能性があるので、針金を付けたままゆっくり抜栓するのがよいでしょう。



それではワインを飲んでみましょう。

@ ロリアン スパークリングワイン 甲州

細かい泡が立ち上がっているのが見えますね。このスパークリングワインは甲州100%ですが、特に良く香りの出たぶどうを使っています。樽を使っていないので、のど越しがスッキリしてフルーティーな味わいになっています。気軽に紙コップなどでも構いません、バーベキューなど手軽なシーンで味わって頂きたいと思います。このガス注入方式のスパークリングワインの外に、当社では瓶内二次発酵のワインも造り始めました。今はまだ100本単位で試作中ですが、近い内に商品化できると思いますので楽しみにしていてください。

A ロリアン 勝沼甲州 2015

勝沼産甲州のみ100%使用した白百合醸造のフラッグシップワインです。このワインはスタンダードな造りでタンク発酵です。除梗・破砕→圧搾→果汁を発酵させる→オリ引き→タンク内で1〜2か月半位寝かせる(この時軽いシュール・リー)→瓶詰
甲州のフレッシュさ、口に含んだ時の柑橘系の香りが素直に感じられます。味わいはドライ(辛口)と言うよりも、厚みのあるまろやかな味わいが特徴です。

勝沼ボトルについて
ロリアン勝沼甲州の入っているボトルは、勝沼ワイナリーズクラブの審査に合格したワインにのみ使用できるものです。上部にあのフランスへ渡って勉強し、帰国後本格的なワイン造りを広めた土屋・高野両青年のマークがデザインされています。原料ぶどうは勝沼産のみ使用、ぶどうの品質、醸造過程、官能検査など厳しい基準に合格しなければこのボトルは使用できません。


ここで質問です。
Q デブルバージュはしているのですか?(どうやらワイン関係の方の様で難しい言葉が出てきます。)
A デブルバージュとは、白ワインの場合ぶどう果汁を発酵させる前に、果汁の中にある不純物などを沈殿させて取り除く作業ですが、軽いオリ引きとして当社では発酵前にも発酵後にも何回か行います。そうすれば濾過も強い(目の細かい)フィルターを使用せずに、ぶどうの風味を残した軽い濾過で充分です。

Q プレス(圧搾)はどの程度にしていますか?
A ぶどうを除梗・破砕したあとプレス機にかけますが、ぶどうの重みで自然に流れ出してくるフリーラン果汁とプレスジュースに分けます。プレスジュースに関しては、プレスの圧力に応じてジュースを入れるタンクを変えています。発酵後のプレスに関しては、軽く絞って残ったカスはグラッパの原料として使用します。


B ロリアン 甲州樽発酵 2014


このワインは樽で発酵しています。除梗・破砕→軽いプレス→果汁をタンクに移して軽くオリ引き→果汁と酵母を樽に入れて発酵させ、そのまま熟成させる。仕込みの終わったばかりのワイン樽には、木やゴム栓の代わりにガラス製の発酵栓を取り付けてあります。Jの字のように曲がった部分には水が入っていて外からの侵入物を防いでいますが、しばらくするとこの水がブクブクしてきます。これは樽の中のワインが発酵して炭酸ガスを出している合図です。このブクブクが無くなると発酵が終了したことになります。樽内のワインが蒸発などで目減りした分を常にチェックして同じワインを継ぎ足して、空気接触を極力少なくするよう留意しながら半年程熟成します。

樽について
ワインの樽には主にフレンチオークとアメリカンオークが使われます。フレンチオーク・・・バニラ、キャラメルなどの甘い香りが付きます。アメリカンオーク・・・木の香り、コーヒー、ブラックペッパーなどの香りが付きます。樽の内面は火で焼いてありますが、この焼き具合によってもワインの香りや味わいが変りますので、品種やワインの個性を生かすように考えて使用しています。又、購入して初めて使う新樽は香りが強く付くので、甲州に樽を使う場合には一度シャルドネなどに使用して少し香りを落ち着かせてから使います。

テイスティングです。
香りは、りんご(王林など黄色いりんご)、梨、白桃など少し熟し始めた果実の香り。樽からくると思われるバニラ、バター、白コショウなど。口中に含んだ瞬間滑らかで果実味と酸味のバランスの良さを感じる。中盤からの軽い苦味がボディー感を与え、アフターに樽の香りが戻ってくると共に、しっかりしたアルコールと余韻を感じる。ボディーのしっかりした辛口の白ワインです。

バターを使ったお料理が食べたくなったの声あり。


石川さんのお話です。
ワインと料理のマリアージュについて
一般的に白ワインには魚、赤ワインには肉を合わせると言われますが、間違いではないがそれにこだわらなくて良いと思います。酸味のあるお料理には酸のしっかりしたワインを、甘いものには甘口を、柑橘系のソースに柑橘系のワインを等、お料理の特徴とワインの特徴が合えば良いのです。簡単ですね。

「旨味」について
甲州ワインに旨味を感じるのは、甲州ぶどう自体に旨味が含まれているからです。シャルドネなどには感じません。
甲州にはコンブやかつお節のニュアンスがあるので、昆布ダシやかつおダシに良く合いますね。今やヨーロッパでは「ウマミ」が世界共通語になっています。一番簡単なマリアージュをお教えしましょう。それは、「おしゃぶり昆布をしゃぶりながら甲州ワインを飲むことです!」

「今夜皆さんが一斉におしゃぶり昆布をしゃぶりながらワインを飲んでいる姿を想像してみてください」の呼びかけに、またまた大爆笑でした。


最後のワインはやはり日本固有の品種、マスカット・ベーリーAです。
C ロリアン セラーマスター マスカット・ベーリーA 2015


テイスティングです。
エッジに紫の見える若々しいルビー色。チェリーやストロベリー、キャンディー、綿菓子など華やかな香り。ソフトな口当たり。たっぷりの果実味と優しい酸、細かく程良いタンニン、軽い苦みによってまとまりのある落ち着いた味わいになっているミディアムライトの赤ワイン。

マスカット・ベーリーAは2013年にOIV「国際ブドウ・ワイン機構」によってワイン用ブドウ品種として登録されました。日本固有品種ですが、交配品種(ベーリー×マスカット・ハンブルグ)が認められたことに石川さんも驚かれたそうです。甲州に並ぶ大切なワイン用品種です。

このワインと何を合わせたいですか?の問いかけに、チーズケーキ、牛肉の肉じゃが、(ミリンと良く合う・・石川さん談)、タレの焼き鳥、お好み焼き(オタフクソース)豚の角煮などなど…次から次へと止まりません。




石川さんのお話です。
マスカット・ベーリーAは意外にも赤身の魚、特に大トロのヅケなどと良く合います。また梅肉ドレッシング(梅肉+カツオ節+サラダオイル)でサラダやお豆腐、チ−ズと合わせるとこのワインにピッタリです。

海外での評価
先日イギリスやスペインへプロモーションで行ってきましたが、その反応です。
甲州・・・非常に関心が高く、大好評でした。甲州特有の苦みも気にならないそうです。
マスカット・ベーリーA・・・甘い香りがどうかと思いましたが、面白いと好評でした。

一通り本日のワインのテイスティングが終わりました。石川さんのお話を聞きながら皆さん結構おかわりをして、すでに赤いお顔の方も見受けられます。いつもならここでまとめに入るのですが、今日は石川さんからプレゼントがあります。一寸変わった形の可愛らしいボトルが出てきました。さて何でしょう?

グラッパです!! 甲州100%、アルコール度数40度です。無色透明、清々しい香りでフルーティーでとても優しい味わいです。嬉しい!美味しい!ステキ!・・・
皆さん大喜びで大騒ぎです。ワインを造るために絞ったぶどうのカスを蒸留して造られるグラッパ、正式の名前は「内田葡萄焼酒」と呼びますが、本当に素晴らしくて大勢の方に味わって貰いたいと思いました。

あっと言う間に時間が無くなってしまいました。心配された雨も、参加者の皆さんの熱気に押されてかすっかり上がってしまいました。本日は、ワインの本場フランスで7年間経験を重ねられたうえで、特に日本の固有品種の魅力を引き出す醸造に情熱を傾けられているお話をお聞きし、また美味しいワインを味わうことが出来ました。石川さんの言葉の端々からも世界を視野に入れたワイン造りが感じられました。

石川さんお忙しいところを本当に有難うございました。これからも日本の固有品種の美味しさ楽しさを私たちに伝えてくださると同時に、新しい感覚でのワイン造りにも期待したいと思います。
頑張ってください。


さて次回は、疾風のように現れて疾風のように去って行くあの方です。
どうぞお楽しみに!! 篠原





ワイン俳句
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甲州と ベーリーAで 酔っぱらい            残念 お名前なし
コウシュウ(甲州・講習)で 知識いかして シアワセに! モモヅキン さん
甲州も グラッパも enjoy!            しもどん  さん
グラッパを 美味しく味わい 良い気分          パグリーニョさん
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