かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第85回 2017.4.2

参加者  県外14名  県内11名  計25名
講師  篠原シニアワインエキスパート 
ゲ ス ト  「ビストロ・ミル・プランタン」 オーナーソムリエ  五味千春 様


アシスタント  深澤さん、尚枝さん

ワインリスト
シャトーメルシャン 日本のあわ 穂坂 マスカット・ベーリーA メルシャン(株)
・ソレイユ ロゼ 2016 旭洋酒 (有)
・シャンテ ロサード est 2016 (株)ダイヤモンド酒造
・グレイス ロゼ 2016 中央葡萄酒(株)


セミナーの内容
1 本日のテーマ「春だ!桜だ!ロゼワインだ!」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの五味千春様のお話

レポート
2017年のワインセミナーがスタートしました。今年の桜の開花は、当初例年並みの3月下旬が予想されましたが、ここにきて昨日のように雪が降ったりして気温が上がらず、桜はまだつぼみのままです。
朝市の人出はというと、一言で「超満員」状態です。2・3日前の「ビートたけし」の全国ネットの番組で「かつぬま朝市」が取り上げられたせいでしょうか。我がワインセミナーも同じく超満員となりました。前回お知らせしたとおり、今回
から参加費をアップしたにもかかわらず、大勢の方が参加してくれました。本当に嬉しかったです。

ゲストの紹介の前に、私篠原から一言。2017年は、勝沼に日本で初めての葡萄酒会社が出来てから140年目に当たる年です。1877年8月に「大日本山梨葡萄酒会社」通称「祝村葡萄酒醸造会社」が設立され、その年の10月に二人の青年がフランスのシャンパーニュ地方トロワ市へ、ぶどう栽培やワイン醸造の勉強に渡った年です。日本で本格的なヨーロッパスタイルのワイン醸造が始まるきっかけとなった年から今年が丁度140年目になります。そういう節目の年に、先人達のワインにかけた熱い想いに意識を巡らせながら、ワインやぶどうの歴史に関する遺産を訪ねたり、ワイナリーを巡ったりしたらいかがでしょうか。大勢の方に興味を持っていただけたらと思います。


お待たせしました。いよいよ始まりますよ!
今回のテーマは、「春だ! 桜だ! ロゼワインだ!!」です。さあみんなで大きなピンクの桜を咲かせましょう。

本日のゲストは、その名も春がいっぱいの「千春」さん。おなじみ「ビストロ・ミル・プランタン」のオーナーソムリエの五味千春様です。
今回で4回目のご登場です。

千春さんがセレクトしてくださったワインは全てロゼワイン。それぞれの個性が全く違うので、みなさんのテイスティングの表情を想像するとワクワクしてしまうそうです。

さあここからは、千春さんにバトンタッチです。
〜私(千春さん)はロゼワインが大好きです。でもどこのワイナリーさんでもロゼの生産量が少ないので、ちょっと寂しいところですね。通常、4月頃はワイナリーではシュール・リーのビン詰めをする時期で、それが終わってロゼを詰めるようですが、ところが今年はイベントの関係で3月にロゼをビン詰めし、いつもはまだ出回らないワインが店頭に並ぶという事を聞いたので、それでは今回はロゼオンパレードで行こうと決めました。

最初のワインは、シャトーメルシャンの「日本のあわ」穂坂マスカット・ベーリーAです。以前は「穂坂のあわ」と言っていました。ロゼのスパークリングワインです。

通常のロゼワイン(ロゼのスティルワイン)の中に、4〜5気圧の炭酸ガスを注入し(少し高めの気圧です)、ビンの中で馴染ませてあるので、ガスがワインにしっかりと溶け込んで、グラスに注いでも泡が長続きします。とても万能で重宝なワインですので私達もお客様によくおすすめします。

メルシャンさんの「日本のあわシリーズ」はこの外に勝沼・甲州、長野・シャルドネ、新鶴・シャルドネ、大森・リースリング、長野・メルローなどがあります。








折角の機会ですので、ここでスパークリングワインの安全な開け方を勉強しましょう。
1、まずキャップシールですが、以前はナイフでキズを付けて取っていましたが、今は目印が付いているものが増えましたので簡単に手で取り除けます。
2、次にコルクを固定している針金をゆるめますが、この時必ず指でコルクを押さえておきます。そしてボトルを少し傾けておくと泡が吹き出しにくいです。
3、針金をゆるめたらコルクを回すのではなく、ボトルの下の方を持って回すとコルクがゆるみ、徐々に上に上がってきてプシュと小さな音がして最小限のガスが抜けコルクがはずれます。


〜さすがベテランのソムリエさん。とても静かに上手に開きました。「だれかチャレンジして開けてみたい方いませんか?」の呼びかけに、一人の女性が手を上げてくれました。
千春さんの指導のもと、皆の声援を受けながらコルクを押さえてボトルを回しましたが、なかなかコルクが上がって来ない。とうとう3人がかりでからかって、ようやくプシュと音がしてコルクが抜けました。この瞬間皆から大きな拍手が上りました。どうしてなかなか抜けなかったのかご本人に聞いてみると、押さえていた手が痛くなったと言っていたので、多分コルクが上がらないように一生懸命に力を入れて押さえていた(笑)のではないかと言う結論に達しました。この経験できっと次からはスムースに開けられると思います。〜




千春さんのお話です。
ロゼワインの造り方のお話をしましょう。
今回の4本のワインは皆同じような色合いですが、造り方は違います。「穂坂のあわ」と「シャンテ ロサード」の2種類は、セニエ法という造り方で造られています。赤ワインの醸造過程で、赤ワインのエキスをより濃くするために一部ワインを引き抜きますが、その引き抜いたワインで造られたものがセニエ法によるロゼワインです。ですからロゼワインには赤ワイン的要素の柔らかいタンニンを感じたり、白ワイン的なさわやかな味わいを持ちながらも少し肉付きを感じることが出来ます。日常のお食事にとてもよく寄り添ってくれる万能なワインと言えます。

マスカット・ベーリーAは、お醤油やお味噌又は甘辛いものに良く合い、なおかつロゼは白身魚は勿論鶏肉や豚肉のしゃぶしゃぶなどにも良く合うので、マスカット・ベーリーAを見つけたら是非飲んでもらいたいと思います。

メルシャンの「日本のあわ」のガスについては先程お話しましたが、ガス注入方式でもマンズワインさんの「マンズの泡」は別の方法で、大きな加圧タンクの中でワインに炭酸ガスを溶け込ませた後でビン詰するシャルマ方式と言うのもあります。
そのほかのスパークリングワインの造り方として、ビン内二次発酵と言う方法もあります。スパークリングワインを買われる時には、どんな製法で造られているか確認されると良いと思います。

最近の県内新聞で、山梨県ワインセンターでは、マスカット・ベーリーAを使ったロゼの
ビン内二次発酵のスパークリングワインの研究を進めていて、2年半後の東京オリンピックに向けて甲州種のスパークリングワインと共に、紅白のビン内二次発酵のスパークリングワインを提供できるようにしたいと考えているようです。

シャトーメルシャン 日本のあわ 穂坂マスカット・ベーリーAを味わってみましょう。
いちごのリキュールのような香り。甘みと酸味のバランスがとても良い。泡がはつらつとしていてそれにより渋みが抑えられ、お祝いの席にぴったりのとてもきれいなサーモンピンクの色のワインです。
手巻き寿司の魚介類の具と良く合い、飲んだ後のさわやかさでお口の中がリセット出来ます。また豚の生姜焼きや脂身のあるお肉でも、スパークリングの泡が活躍してくれます。デザートでは、いちごを使ったデザートと良く合いますので、私のお店でもお客様にご
紹介させて頂いています。今あげたお料理以外でもこのロゼスパークリングは幅広く使えますし、金額的にもリーズナブルですのでお友達などとのお食事会などにも気軽に使って頂けたらと思います。

2番目のソレイユ ロゼ 2016に移ります。

山梨市にある旭洋酒さんでは通常この時期にロゼワインが出回ることはないのですが、今年は3月にビン詰めをしていることを聞いたので、是非皆さんにご紹介したいと思いセレクトしました。このロゼはおもしろい造り方をしています。甲州50%の中に自社畑のピノ・ノワール40%前後とメルロー10%前後をブレンドしてあります。甲州の白ワインらしさとピノ・ノワールとメルローの赤ワインらしさを出したいという造り手の想いからこういう製法にされたそうです。ヨーロッパでは、赤ワインと白ワインをブレンドしてロゼワインにする造り方はほとんどされないので、日本でも珍しいと思います。ワイナリーでは毎年何回も比率を試してブレンドしているので、その年によって比率が変わるそうです。

甲州のはつらつとした酸、ピノ・ノワールの柔らかい酸と渋み、メルローの深みが1本で楽しめるワインです。いかがでしょうか? 1番目と雰囲気がまったく違いませんか?白いお花など白ワインの要素の中に赤いベリーなどの赤ワインの要素が感じられて、とても面白いし、少し時間をおくとシナモンなどのスパイスの香りも出てきます。お料理で私のおすすめは、アサリと春キャベツのパスタ、魚介のちらし寿司、マグロやカツオなどと合わせたいです。

ここでもう一度最初の「穂坂マスカット・ベーリーA」に戻ってみましょう。華やかにイチゴキャンディーのような香りが立ち上がっていますが、「ソレイユ ロゼ」のワインは全く違う味わいですね。遠目で見るとほぼ同じようなロゼ色のワインですが、飲んでみると全く別物というのもロゼワインの面白さだと思います。


次にご紹介するのは順番を入れ替えて4番目のワインです。
グレイス ロゼ 2016

このロゼは毎年5月にリリースするのですが、今年は顧客の3月のキャンペーンに間に合わせる為に2月にビン詰めしたそうです。それで運良く今回のセミナーにもお出しすることが出来ました。

このワインはメルロー主体でカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが入った、まるでボルドーのようなワインです。3種類の品種をそれぞれ直接圧搾法(白ワインと同様に圧搾してから果汁を発酵させる方法。圧搾する時に果皮の色が果汁に薄く溶け出す。)とセニエ法の両方を使って手の込んだ造り方をしています。さらにそれをタル発酵タル熟成をしてあります。ですから飲んだ時にパンチがあって、ずしっとした感じがあります。

でもタンニンは軽く、タルからくるキャラメルとか木のニュアンスが感じられます。今日は赤ワインでは少し重いかなという時に心地よく飲め、しかもスクリューキャップなので保管も楽ですし、冷蔵庫で3・4日かけて味わいの変化を楽しんだり、ちょこっと寝酒などにもいいですね。

色は先程の2本より濃いピンクというより朱色に近いと言えます。やはり毎年ブレンド比率が違っているので色も違ってきます。お料理はなべ料理やマグロのステーキとかヅケがおすすめです。



最後のワインです。
シャンテ ロサード est 2016

ダイヤモンド酒造さんのマスカット・ベーリーA100%のロゼワイン。
メルシャンさんの「穂坂のあわ」と同じく、韮崎市穂坂町の契約農家さんのマスカット・ベーリーAを使用しています。ダイヤモンドさんのいつものロゼは、マスカット・ベーリーAプラスのぶどうで造りますが今回のワインはワンランク上のイグレック・キューブとYカレ用に使用するぶどうで造られているそうです。

初めてこのロゼを造って、雨宮さんが自分の中で最上級のワインという意味で、est(エスト)と名付けたそうです。
シャンテ ロサード(スペイン語でバラ色の意味)のはつらつとしたイチゴキャンディーの香り、パンチのあるタンニンなど、マスカット・ベーリーAでこれだけのインパクトのあるロゼが造られるとは本当に素晴らしいです。フレッシュなイチゴを食べながら飲んでも良いし、辛口ですがデザートワインとして飲んでも良いと思います。またソーダ割りでも面白いです。華やかな香りのボリュームが大きいので、他のワインより先に飲んでしまうと他のワインの良さが隠れてしまうので飲む順番に気を付けたいと思います。時間の経過と共に香りが変化して、3日目位になるとイチゴキャンディーの香りが落ち着き、カシスのリキュールのような香りが出てきます。そうするとマグロのヅケとか山菜(コゴミ、タラの芽、コシアブラ)などの天ぷらが、タンニンの渋み苦みと合うと思います。このワインは1週間位かけて変化を味わっても面白いです。もっともあっという間に飲みきってしまうかも知れませんね。

今年は桜も桃もまだ咲いていません。甲州市にはお花見の名所が沢山ありますので、是非ロゼワインをお供にお出かけください。お待ちしております。

〜千春さんのお話が終わりました。中身の濃いお話でした。
参加者の皆さんはお話を聞きながらうなづいたり、驚いたり、個性の全く違う4種類のロゼの比較試飲にすっかりはまってしまったようです。「私はこれが好き!」「自分はこれとこれが絶対にいい!」などなど大喜びでした。皆さんのお顔もすっかりロゼ色に染まっていました。

千春さん。今回も本当に楽しいお話と素晴らしいワインをセレクトしてくださり有難うございました。ロゼワインの魅力をたっぷり感じることが出来ました。今後ともよろしくお願いいたします。




ワイン俳句です。
寝る前に ロゼを一杯 いい夢みろよ! 下井ツアーズ 会員NO.5 さん
まだ咲かぬ 桜楽しむ ロゼワイン 残念お名前なし
寒々しい ここだけに咲く サクラロゼ なっちゃんさん
ベーリーAは ヨシオがいいね 買に行こう かるがもさん
さくらなく ロゼワインのみ 春気分 reineさん
遅桜 待ちきれなくて ロゼあいた かのさんさん
試飲会 ワインも私も 桜色 のらのらさん
葡萄棚 季節はずれの 雪化粧 Kさん
さくらいろ きもちほろほろ 春きぶん みっこさん
春冷えの グラスに咲いた ロゼの花 doraさん
ロゼワイン 春一番の 香りかな しゅぱさん
 
以上です。  今年もがんばります!
皆さんお楽しみに!   篠原