かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第87回 2017.6.4



参加者  県外4名  県内6名  計10名
講師  篠原シニアワインエキスパート 
ゲ  ス ト  大和葡萄酒(株) 山田敬幸様、古家可南子様
アシスタント  深澤さん、尚枝さん



ワインリスト  ・時分(じぶん) 2015 大和葡萄酒(株)
・重畳(ちょうじょう) 2016 〃
・ 古代甲州 スパークリング 2016 〃
・ 十二原 メルロー 2015 〃




セミナーの内容
1 本日のテーマ「ハギーワインのチャームポイントをさがそう」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの大和葡萄酒(株)山田様、古家様のお話

レポート
勝沼の農繁期突入です。朝早くからカッコウが鳴いて時を知らせてくれます。日中は30度を超える日もあり、農家の方は夜明けと共にカッコウの声を聞きながら早朝より畑に立って、ぶどうの作業に精を出します。今日もあまり暑くならなければ良いがと思いながら、青空のお天気に感謝です。

早速セミナーのスタートです。
今回はハギーワインの大和葡萄酒さんからお二人の方がゲストとして来てくださいました。大和葡萄酒さんというとすぐに美味しいスパークリングワインと、日本の固有品種を大切にしているワイナリーさんのイメージが思い浮かびますが、その他にもしっかりとしたコンセプトを持ってワイン造りをされています。まず最初に、そこのところからお聞きしました。

古家さんのお話です。
大和葡萄酒のワイン造りについて当社では3つの独自性を大切にしています。
@ 歴史的価値観に着目した古来品種によるワイン造り日本最古の甲州ぶどうの木と言われていて、130年経った現在でも立派な実を付けている「甲龍」と名前の付けられた指定文化財の甲州ぶどうの木を管理しています(朝市会場のすぐ近くの中央園さんにあり、いつでも見ることができます)。この木と、やはり指定文化財であった菱山地区の三森甲州(残念ながら元の木は枯れてしまいましたが)から枝分けした甲州種などを使用して、独自のワインを造っています。古来品種は全国で七種類あり、そのうち大阪紫葡萄(ワインとして販売中)、京都じゅらく葡萄、水晶葡萄、天草高浜葡萄の四品種は大和葡萄酒(株)のみが保有している古来品種です。
A 甲州ぶどうに最適な土地選び
山梨県内の100地区のポイントで測定を行い、その中でアミノ酸値の高い地区を特定し、二年間検証しました。その結果、勝沼町の日川を中心に山梨市の重川から笛吹市の金川までのエリアで、河川敷に限定された地域が特定されました。水はけが良く砂地のこの地区は、ぶどうのストレスが少なく、香りや味わいが深くなるアミノ酸値が高いことがわかり、当社ではこの地区のぶどうだけを使用してワインを醸造しています。
B 最適な栽培方法
甲州ぶどうの垣根栽培や小粒化にこだわった栽培方法によりアミノ酸値が1.6倍になりました。また粉砕した貝殻を畑に撒き石灰質を高めた土壌で栽培したミネラル分豊かなぶどうを使用し、複雑な風味のワイン醸造にも力を入れています。

また当社ではスパークリングワインの製造にも力を入れており、いくつものワインコンクールで受賞しています。

〜大和葡萄酒さんの社長さんが足で見つけ出した古来品種の飲み比べをしてみたいものですね。甲州種との違いはどうでしょうか。近いうちの実現を期待します。〜

〜それではこれからテイスティングに入ります。
今回のテーマは「ハギーワインのチャームポイントをさがそう」ですが、このテーマにした理由は、ワインを飲む時に一瞬で良いので集中して味わって欲しいと思ったからです。何となくワインをスルっと飲んで「ああ美味しかった」では、どこがどう美味しかったのかがわかりません。例えば、酸がしっかりしているので爽やかでスッキリしているとか、タンニンが穏やかなので飲みやすいとか、そういう事を感じて欲しいのです。それをチャームポイントと名付けました。勿論好みのポイントもあれば苦手もあります。それも挙げて欲しいと思います。
最初に@番の時分2015とA番の重畳2016を比較しながら飲んでみましょう。
皆さんから声があがったチャームポイントです。

@ 白いお花の香りがする、グレープフルーツの香りが華やか、さっぱりしている、塩味・ミネラルを感じる、酸味が強くしっかりした味わい、
A タルの香りがする、軽やかで優しい味わい、複雑な香り、バランスが良い、ワインを味わいながら造り方の説明をしていただきました。〜

〜山田さんのお話です〜
@ 時分 2015  時分(じぶん)という名前のワインです。丁度良いころあいとか好機という意味を持っています。品種は甲州ですが酸の強いぶどうを使っています。ラベルに表記されているCa905とは、ワイン1L中にカルシウムの量が905mg含まれることを表しています。ミネラル分の多いしっかりした味わいの辛口のワインです。「日本で飲もう最高のワイン」でプラチナ賞及び甲州部門特別賞を受賞しました。

古家さんのおすすめ料理・・・ミネラル分の多いこのワインには、海のお魚であまり味の濃くないサワラの塩焼きなどはいかがでしょうか。

A 重畳 2016  重畳(ちょうじょう)と言う名前のワインです。重畳とは、幾重にも重なることを意味し、これは当社の長い歴史と共に甲州種に着目し、長年研究を重ねてきた意味も込めて名付けました。甲州をタル熟成しほのかにオークの香りと程良い酸味のある、バランスの良い辛口ワインに仕上がっています。ワインを口に入れた時に、心地良いタル香を感じていただけると思います。
ワインの色も@よりAの方がタルの成分によって、若干黄色が濃くなっています。

古家さんのおすすめ料理・・・芳醇なタルの香りに鳥の水たきなどがよく合うと思います。


〜3番目のワインはスパークリングワインです。
ワインの説明を聞く前にやはり先に味わってもらって、チャームポイントをさがしました。
B 爽やか、柑橘の香りが良い、口に含んだ時に少し甘みを感じるのが良い、酸がしっかりしている、爽快な味わいになっている、泡の勢いが強いなど。〜

〜山田さんのお話です。〜
B 古代甲州スパークリング 2016

このワインは先程話をした「甲龍」という樹齢130年の甲州の木から枝分けしたぶどうで造られています。酸がしっかりしていてほのかなオークの香り、酸を強調しています。華やかな味わいというよりも、日本の水墨画の原風景の様な昔の甲州の素朴な味を表現していると思います。
ここでボトルの栓(キャップ)についてお話しましょう。
一般的なスパークリングワインは、太いコルクを針金で止めてありますが、当社のスパークリングワインのキャップは、コルクではなくゾーク栓と言いましてプラスチックで出来ています。2005年にオーストラリアのアデレードで作られ、まだあまり普及されていないようですが、当社ではいち早く取り入れております。使い方は、栓の下の部分のらせん状に巻きついているところを取り外します。次に上の部分を握って真ん中にあるボタンを押しながら少し回し気味に引き上げるとボトルから外れます。またこれを取り付ける場合は、上から瓶口に押し込むと簡単にはめ込む事が出来ます。この栓の良いところは、簡単に開けられる、飲み残しのボトルにリキャップ出来る、コルクではないのでブショウネがない、価格が安く抑えられる、リサイクルが出来るなど良いところが一杯です。

〜皆さんにボトルを回して実際にゾーク栓を外したりはめたりして体験してもらいました。「イイネ!」の感心した声しきりです。アウトドアにも便利ですね。〜

〜引き続き山田さんのお話です。〜
古代甲州 スパークリング 2016の造り方
ガス注入方式といいます。気密性の高いタンクにスティルワインを入れて、タンクにある穴にボンベからホースを通じて炭酸ガスをワインの中に入れます。それを数週間かけて入れるとガスがゆっくりとワインの中に溶け込んでいきます。そして再度ボトルに詰める直前に気圧をかけて
(ガスを入れて)ビン詰めします。気圧は3気圧位にして、泡は強すぎずお料理のじゃまをしない程度の泡になっています。

古家さんのおすすめ料理・・・スパークリングですっきりとしているので、白身魚のカルパッチョとか唐揚げがよいですね。

〜古屋さんのお仕事についてお聞きしたいのですが〜
私は分析を担当しています。
具体的には、ワインの比重を測る(甘口とか辛口を見分ける)、亜硫酸(酸化防止・殺菌作用がある)の比率を測る、ワインの中の総酸の量を測る、アルコール度数を測るなどです。ワインをブレンドした時と濾過してビン詰する直前の2回やります。
〜細かいお仕事ですがワインの品質にとって大切な作業ですね。〜

〜それでは最後の赤ワインを味わってみましょう。
十二原メルローのチャームポイントは?
若々しい、香りが華やか、いちごや僅かにタルの香り、優しい酸、タンニンが軽やかなので飲みやすい、チャーミングなど。
 
〜山田さんのお話です。〜
C 十二原メルロー 2015

十二原とは長野県松本市の旧四賀十二原地区のことです。ぶどうの収穫された地区の名前がワイン名になっています。品種はメルローです。長野県では土壌がメルローに適しているということで、多く作られています。このワインは若々しい味わいを楽しんでもらいたい。ベリーの様な香りと味わいで、さっぱりと飲んでもらうワインになっています。また、このワインはMLFという造り方がされています。
※MLFについて マロ・ラクティック・フェルマンタシオン(英語読みではファーメンテーション)の頭文字をとって、一般的にはMLFと言います。
できたてのワインの中にはシャープな酸味を持ったリンゴ酸があります。このリンゴ酸を乳酸菌の働きで乳酸に変えることを言います。そうしますと強い酸がまろやかになり飲みやすいワインになります。又、リンゴ酸は微生物が発生しやすいので乳酸に変えることで雑菌の繁殖を抑えたり、ワインの味に深みを与える効果もあります。

古家さんのおすすめ料理・・・こちらのワインはマロラクティック発酵がされていますので発酵食品のお味噌を使ったものと良く合うと思います。豚の味噌漬けなど少し味の濃いものと合わせたいです。

〜ありがとうございました。大分時間が無くなってきました。最後に大和葡萄酒さんからのお知らせを古屋さんからしていただきます。〜

当社では来年4月に隣接する敷地にバーベキューのレストランをオープンする予定です。場所は旧国道20号線に面していますのですぐわかると思います。今年は7月からそこで当社の造る地ビールを提供するビヤガーデンが始まりますのでぜひお越しください。よろしくお願いします。


〜それは楽しみですね。夏は冷たいスパークリングワインも良し、また地ビールもおいしいですので、是非伺いたいですね。本日は大和葡萄酒(株)の山田さん古家さんのお二人にお越しいただいて、おいしいワインとそれにまつわる楽しいお話をお聞きすることができました。
本当に有難うございました。お二人の益々のご活躍を期待しております。〜

さて、来月は梅雨の中のワインセミナーです。でもゲストはいつも晴れ男のあの方ですからきっと良いお天気になることでしょう。どうぞお楽しみに。  篠原


お待ちかねワイン俳句です
さわやかな 季節にぴったり 白ワイン まんなかさん
いい天気! いい人!いい酒! いい話!! よっちゃんさん
さわやかに 塩味を感じる 白ワイン まちこさん
あしたから ソムリエ気取りで テイスティング! アキコさん
リンゴ酸 MLFで まろやかに 白くま小五郎さん
のぼる泡 ハギーのこだわり 青空へ ささささん
905(キューマルゴ) 酸と塩味が よい時分 〃さん
ワイナリー 等々力地区に 一つ増え Kさん



以上です