かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第89回 2017.8.6


参加者 県外1名 県内14名 計15名
講師 篠原シニアワインエキスパート 

ゲスト ドメーヌ・オヤマダ 小山田幸紀様、ドメーヌ・ポンコツ 松岡数人様

アシスタント 深澤さん、尚枝さん


ワインリスト
・おやすみなさい (ロゼ・泡) 2016       ドメーヌ・ポンコツ
・BOW! Blanc (バウ!白) 2016    ドメーヌ・オヤマダ
・jalopy(ジャロピー・醸し) 2016     ドメーヌ・ポンコツ
・洗馬(せば・赤) 2014             ドメーヌ・オヤマダ


セミナーの内容
1 本日のテーマ 「ようやく会えたDm.オヤマダさんとポンコツさんを味わう」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの「小山田さんと松岡さん」のお話

レポート  今年の梅雨は6月7日から7月19日まででした。どちらかと言うと雨量の少ない梅雨でした。梅雨明けしても曇り空が続き日照不足が懸念されます。ワインセミナーにとっては曇り空大歓迎と思いきや、今日に限って真夏の太陽がギラギラ。アツーイ!テントの下も熱気に溢れていますよ。それもそのはず待ちに待ったお二人のゲストさんのご出演です。本日のテーマは「ようやく会えたDm.オヤマダさんとポンコツさんを味わう」です。早速セミナーをスタートしましょう。

松岡さんの自己紹介です。
私は3年前から勝沼でぶどうを栽培して、ペイザナ農事組合法人の共同醸造所でワインにして販売しています。以前は静岡のワイナリーで15年間醸造をしていましたが、原料のぶどうから自分の手で栽培したいと思い山梨にやって来ました。
ペイザナとはフランス語で農民の意味です。メンバーは小山田さんと自分を含め5名です。醸造所は勝沼町の中原地区で、ゴルフ場の近くです。普段は畑におりますのでワイナリーは留守にしていて、ニワトリが留守番をしています。きょうはよろしくお願いします。まず皆さんと乾杯をしましょう。「楽しいセミナーになりますように!乾杯!!」。
〜「オイシイ!」「甘い!」の声あり。〜

では最初のワインです。
おやすみなさい(ロゼ・泡) 2016     ドメーヌ・ポンコツ


このワインが出来上がった時、両親に送ったところ、「品種が書いてない」とクレームが来ました。「品種はラベルに書かない」と言いましたら、「上から目線でワインを造るな」と叱られました。今日は気になる方もいると思いますのでお伝えします。巨峰が98%位でカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどが2%位です。ワイン名の「おやすみなさい」は、このメイン品種の巨峰の畑が勝沼町休息にあったので「おやすみなさい」と命名しました。
〜皆さんからパラパラと笑いあり。〜
皆さん!ここが笑いどころですよ!
〜今度はドッと笑い声あり。〜 〜夜のおやすみなさいですか?〜
自分のイメージとしては、このワインを飲んで一日の疲れをとってもらえればいいかなと思って造っています。

〜甘い感じがしますが?〜
残糖はあると思います。巨峰は発酵が途中で止まる感じがあります。このスパークリングワインは、ガス注入方式ではなくビン内一次発酵です。造り方は、発酵途中でまだ残糖があるワインをビン詰めすると、ビン内で酵母が糖を食べ炭酸ガスを出して、そのガスがワインに溶け込むという方法です。アルコール度数は11%です。

〜どの位の期間でビン詰めされるのですか?〜
巨峰は気難しくて、発酵途中のものをビン詰めすると大抵発酵が止まってしまいます。ふにゃふにゃしていて、二週間位してから動き出す(発酵を再開する)そういう癖が巨峰にはあるみたいです。

〜一次発酵で爆発(栓がとぶこと)しない秘訣とは?〜
ワインの発酵は比重で見ていきます。水の比重を1とするとワインは糖分が多いのでそれより比重が高い。その比重の下がり具合で発酵経過を見ていくのです。最初は比重が高い果汁がアルコールに変わっていくと、アルコールは水より比重が低いのでアルコールが増えると比重が下がり1より低くなる。この比重の値でこの位なら何気圧という事が分かる。後は経験値で決めています。酵母が糖分を食べきると大体5気圧位になるので、通常3気圧位で止めています。

〜このワインはきれいなサーモンピンク色をしていますが、造り方はロゼワインですか白ワインですか?〜
自分ではロゼでも白でもいいと思っていますがそれではサービスする方が困ると思いますのであえて言うと、このワインは白ワインの造り方で造っています。巨峰の粒をそのまま絞ると果皮から色素が出てきます。その色素だけでこの色が付きます。漬け込んではいません。亜硫酸を入れると色は出ないのですが、このワインには亜硫酸は使っていません。通常のワインでは、亜硫酸は果汁を絞った時とか発酵が終わった時とかビン詰め前などに入れますが、このワインでは使用していません。

〜亜硫酸は酸化防止の為に使うのですか?〜
一般的には酸化防止剤として使いますが、ビン詰め前に入れると発酵が止まってしまうのとその他にもいろいろな効果があります。メインは雑菌を抑える為の殺菌効果として入れます。ワインを造る時に一般的には酵母を添加しますが、このワインはぶどうに付いている酵母(天然酵母)でやっていますが、酵母を添加する時には他の雑菌があると邪魔なので、一時活動を抑える為に亜硫酸を入れるのが一般的です。

2番目のワインは小山田さんです。
小山田さんの自己紹介です。
私は笛吹市にある(株)ルミエールに16年間勤務し、栽培・醸造の責任者をやってきましたが、退社して友人とペイザナ農事組合法人を立ち上げました。ドメーヌ・オヤマダとしてワインを造り始めて現在4年目です。では早速ワインの説明に入らせていただきます。

BOW! Blanc(バウ! 白) 2016  ドメーヌ・オヤマダ

ぶどう品種は半分位がデラウエアであとはプチマンサン、シュナンブラン、ルーサンヌ、ソービニヨン・ブランなど色々混ぜてあります。甲州は入っていません。造り方は発酵をゆっくりして、少し甘みが残ったところで発酵が止まるのでそのタイミングでビン詰めします。

〜甲州を入れないのはこだわりですか?〜
ふんわりとした味わい、例えばもったり、まったり、バディ(・・・)ーがある。そういうものの時には、繊細な甲州は入れません。私は甲州も栽培していますが、スパークリングに甲州は使います。
〜一般的にデラウエアはもう少し軽い感じのワインが多いように思いますが?〜
それは多分ぶどうがまだ青いうちにワインに仕込むからだと思います。私は、赤紫色になって甘みのある完熟したぶどうを使いますので、しっかりしたボディが出てきます。去年は暑い日が続いたので、ぶどうが熟しすぎてアルコールが13%になってしまいましたが、今年は普通位になるといいなと思っています。

〜このワインは少し甘い感じがしますが、辛口ですか?〜
残党分の数値で言うと辛口です。

〜おいしいです。女性の好みにピッタリのワインですね。〜
私は女性の為にワインを造っていますので。(笑)松岡さんはどうですか?松岡〜私は何も考えていません。心静かにワインを造っています。(笑)〜

〜BOW!という名前は?〜
コンビニで犬の絵が描いてあるティッシュを売っていますよね。あれと同じ「吠える」という意味です。

〜まだ残糖分があるということですが、ボトルのワインはこの後どうなりますか?〜
残糖分は5グラム以下ですが、4グラムで1気圧位なので暑い所に置くと少し進みます。ただキャップが2気圧まで耐えられるので、爆発したり商品上欠陥になることはありません。夏を越えてから泡が出たら、それはそれで楽しいかなと思います。
では、松岡さんに交替です。

jalopy (ジャロピー・醸し) 2016   ドメーヌ・ポンコツ

ぶどう品種はほぼ100%デラウエアです。将来的にはこれに専用品種を入れたいと思って今ぶどうを栽培中です。醸しの期間は11〜12日位です。ファーストヴィンテージ(2015年)ではあまり醸さなかったのですが、今回は醸しながら毎日味見をしてやりました。亜硫酸が入っていないので少し色が進んだ気がします。2015ヴィンテージはアルコール度数13%で少しねっとり感がありました。香りは甘いデラウエアのぶどうそのものの香りとアンズの香りが中心でしたが。

〜ここで初参加の方の為にテイスティングの方法を練習しました。
ワインはjalopy2016です。
色はオレンジが入ったサーモンピンク。ワインの足が見えますが、スーッと落ちていきます。香りは黄色い桃やカリン、柑橘系というよりも熟した黄色い果実の香りがします。あまり甘さを連想させる香りは感じられませんが、スピリッツの様な香りもします。果実味を感じた後、しっかりとした酸味と渋みを感じます。このワインは醸してあるので果皮や種からの渋みが感じられます。前2本より色が濃く熟成感と厚みのあるワインです。アルコール度数は12%です。〜

〜このワインは濁っていないですね。〜
このワインは発酵が最後までいっている(残糖分なし)ので濁っていません。又、タルを使うとオリがきれいに下がるので、ワインがきれいになります。

〜タルはオークですか?〜
オークの古ダルです。3か月間タルに入れてあります。では、最後のワインにいきます。小山田さんと交替します。

洗馬(せば・赤) 2014  ドメーヌ・オヤマダ

このワインは「洗馬」ちゃんと言います。洗馬とは長野県塩尻市にある洗馬地区のことで、地名です。自社畑で全て自分で管理していますので山梨から通っています。ぶどうの品種はカベルネ・フランが約50%弱、あとはソービニヨン・ブラン、ムールベードル、プティベルドなどや白ぶどうが入っている時もあるし、リンゴが入っている年もあります。

〜エーッ!!リンゴを入れるんですか?〜
リンゴは紅玉です。(笑)2014には入っていませんが、法律的にはOKですよ。

〜リンゴはどうやって入れるのですか?〜
シードルを造る時はクラッシャーでやるのですが、少しの場合は金槌で砕いてやっています。(笑)この洗馬は、2014は基本的に黒ぶどうです。ここの畑は混植で、違う品種を色々植えていて、何回も植え替えしているので品種の比率は分からなくなっています。

〜収穫はどうしているのですか?〜
全部一緒に収穫します。寒冷地に行く程ぶどうが長持ちしますので、一番遅いぶどうに合わせて収穫します。大体11月の初めに霜が降りますので、10月末に収穫します。

〜「洗馬は美しいルビー色で果実味がたっぷりあり、酸も程良く、タンニンも細かくて優しい味わいのワインですね。」のコメントあり。リンゴの入ったワインも気になります。〜
〜以上でワインについての説明は終わりました。ここからはお二人にお聞きしたいことを何でも聞いてください。〜

〜お二人のワイナリーはドメーヌを名乗っていますが、その意味は?〜
ドメーヌとは自社畑栽培のぶどうを自社でワインに醸造するワイナリーのことを言います。ですから基本的には自家ぶどうのみでワインを造っています。

〜畑はどこにありますか?〜
松岡さん・・・甲州市が多くて、岩崎、休息、小佐手、藤木、千野などにあります。
小山田さん・・・塩尻、岩崎、山梨市万力などにあります。

〜jalopyって何?〜
松岡さん・・・ポンコツ車のことです。「ルパン3世」が乗っている車をイメージしています。ドメーヌ・ポンコツのフラッグシップです。

〜ボトルの絵がステキですがこのお話をしてください。〜
小山田さん・・・私の故郷の郡山の中学・高校の同級生で、現在東京の表参道でデザインの仕事をしている方の作品です。明治時代のデザイン集からヒントを得たらしいです。BOW!は雲と富士山で洗馬は馬のデザインです。
松岡さん・・・町田在住の方で、金属加工をやっている男性のデザインです。

〜「BOW!」と「洗馬」のデザインは凛としていて洗練されたイメージで、「おやすみなさい」と「jalopy」は優しくてホッとする感じがして、両方ともとても素敵ですね。エチケットはワインを買う時にとても大切だと思います。〜

〜ポンコツさんはポンコツ車に乗っているのですか?〜
松岡さん・・・わたしはケットラ(軽トラック)と軽バンに乗っているのですが、ケットラは運転席のドアが開かなくて助手席から乗り降りしていました。ガソリンスタンドでスゴク注目されましたよ。(笑)
小山田さん・・・僕は色々やっています。高速を運転中にバッテリーが外れて落っこちてしまったのがサイドミラーに見えたので、高速から下りた時に車の部品屋さんで買ってつけました。車はバッテリーが無くても走ることが解りました。(笑)運転中にハンドルが抜けたこともあります。(大笑)〜エーッ!!!うそでしょ!〜

この後ひとしきりジャロピー車の話題で盛り上がりました。
何て楽しいワイン会でしょう!!セミナー半分、漫才半分で笑い通しでしたが、しっかりお勉強もできました。大笑いしている間にとうとうタイムリミットがやってきました。最後に本日と今月お誕生日を迎えられた参加者のお二人に、みんなで「ハッピーバースデー」の歌を歌ってお祝いをしました。きっと心に残るお誕生日になったと思います。


お二人の造られるワインはなかなか手に入りにくいですが、12月、2月、3月がリリースの時期だそうですので、ドメーヌのブログなどでチェックして是非手に入れていただきたいと思います。
それぞれお一人で栽培から醸造、ビン詰まですべてをやられているドメーヌさんですので、連日本当にお忙しくされているところを、今回この朝市ワインセミナーにご出演くださり心から感謝しております。今回このセミナーに参加された皆さんも、今までのワインの常識を覆されたと思います。ワインはあまり細かいことにこだわらずに、リラックスして楽しく飲む飲み物だという事をお二人のお話やお人柄から教えていただいた様に思います。「また是非来てください。」と皆さんからお声が掛かりました。是非お願いしたいと思います。本当にありがとうございました。





お待ちかねワイン俳句です。

イケメンは 造るワインも 超やさしい? まあやさん
学び舎に 試飲せずとも 香り立つ (ドライバーさん) エミさん
日ざかりに ブドウの酒と せみの声 相澤さん
エンテンカ ポンコツ コウシャク ワインセミナー クニーさん
ジャロピー おやすみなさい バウと洗馬 ペティアンさん
一期一会 ワインの香り 誘われて ずきたんさん
煮玉子が 縁で会えた お二人さん? さとうさん
蝉しぐれ おやすみなさい ロゼの泡 RIyoriyoさん
汗かいて 癒されワイン BOW BOW BOW あんずさん
よく育つ 来年ウハウハ フィロキセラ 残念お名前なしさん
なごやかに オヤマダ ポンコツ 飲みすすむ 残念お名前なしさん
月末は 森の蔵出し ワインバー Kさん
ワイン飲み お盆の前の ひとときを 半分の勝沼さん


参加された皆さん、お暑いなかを本当にありがとうございました。どうぞ気を付けてお帰りください。次回もお楽しみに!

 篠原