かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第93回 2018.4.1

 

参加者
県外12名 県内3名  計15名

講師
シニアワインエキスパート 篠原雪江

ゲスト
「ビストロ ミル・プランタン」オーナー ソムリエ 五味千春 様



アシスタント
深澤さん、尚枝さん


ワインリスト
1 おやすみなさい ロゼ・泡 2017 ドメーヌ・ポンコツ
2 シャンテロサード2016 (株)ダイヤモンド酒造
3 キスヴィン シラー ロゼ 2017 (株)Kisvin
4 グレイス ロゼ 2016 中央葡萄酒(株)



セミナーの内容

1 本日のテーマ「ワインもロゼ色、お花もロゼ色」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの紹介  「ビストロ ミル・プランタン」 五味千春 様
 

レポート

春4月。今シーズンのワインセミナーは、満開の桜の花と共にオープンしました。桜色・桃色・菜の花の黄色・すももの白色など、あちらこちら見渡す限り春の色が一杯です。その中でもやっぱりピンクが心をワクワクさせてくれますね。そこで今回のワインセミナーはロゼ色(ローズ色)に注目して、テーブルにロゼ色のお花を飾ってロゼワインを楽しもうという企画をしました。

題して「ワインもロゼ色、お花もロゼ色」です。ゲストはもちろん春の妖精「千春」さんです。さあ今シーズンの幕開けを千春さんと一緒にロゼワインでお祝いしましょう。
ゲストの紹介です。皆さんお馴染み「ビストロ ミル・プランタン」のオーナーソムリエの五味千春さんです。

千春さんのお話です。
「みなさんおはようございます!」気が付けば2014年からこのセミナーに来させて頂いて今回で5回目になります。
 

2月に篠原さんから「春はロゼワインを楽しみにしているお客様がいらっしゃる。」とリクエストをいただいたので、今回も「春ロゼ」をテーマにしてワインを絞り込みましたが、ご紹介したいワインが沢山あって選ぶのに迷いました。山梨代表のマスカット・ベーリーAをはじめ、色々な品種で造られているロゼワインがあります。今回も4本とも別の品種ですのでお楽しみに。



最初のワインです。
おやすみなさい ロゼ・泡 2017   ドメーヌ ポンコツ  です。

甲州市の北の端、勝沼町中原地区にありますペイザナ農事組合法人のドメーヌ・ポンコツさんのワインで、松岡さんが造り始めてこれが3ヴィンテージ目になると思います。外観ですが濾過をしていないので澱があり、にごって見えます。澱があると抜栓する時に吹き出しやすいと言われていますが、2日間位冷蔵庫で立てたままきっちり冷やして、ゆっくりソーっと出して3分間位かける積りでゆっくりと栓を開けるとほとんど吹き出しません。もし不安な方はボウルを下に置いて開けると安心です。(笑)

このワインは巨峰のワインで天然酵母のみで造られています。一次発酵の途中で瓶詰めし、引き続き瓶内で発酵を続けるという「メソッド(=メトード)・アンセストラル」(古代製法)という方法です。気圧は3気圧位です。色を見てみましょう。少しオレンジが入った淡いサーモンピンクで、ほんわか暖かい春のイメージがしますよね。色の濃さは淡いですが、おやすみなさいの今までのヴィンテージの中では一番色が濃いように思います。爽やかな味わいでスターターとして飲むにはとても良くお勧めですが、食中酒でも又最後に少し甘いアイスクリームなどと合わせても良く合います。どのお料理にも寄り添ってくれる重宝なワインです。

皆さん気になる「おやすみなさい」と言う名前ですが、その昔この地を訪れた高名なお坊様が休憩されたことに由来する「休息」という地名の場所にこの巨峰の畑があることから命名したそうです。松岡さんは全工程を全て一人で造っているので、本数を増やせないのが悩みどころですが、今迄「おやすみなさい」と「ジャロピー」の2アイテムだけでしたが、2017年から「まどぎわ」というワインもリリースされましたので、ワインショップで見かけましたら是非手に取っていただきたいと思います。



2番目のワインに移ります。
シャンテ ロサード ドゥミセック 2016  ダイヤモンド酒造(株)  です。

〜「わーきれいな色!」の声あり〜
そうですね。先程のワインはオレンジ色が入っていましたが、こちらのワインは鮮やかなピンク色ですね。

少し紫の入った鮮やかなロゼ色のお花と似かよっています。品種はマスカット・ベーリーAで、ラベルにドゥミセックと書かれているとおり少し甘さがあると思います。2016年の秋から冬にかけて天候の変化がめまぐるしく、発酵に時間がかかり残糖のある樽があったので、それでドゥミセック(やや辛口)となったそうです。

このワインのもとは、ダイヤモンド酒造さんの「イグレック・プラス」というマスカット・ベーリーAの赤ワインで、そのセニエの部分で造られています。

この優しい甘みは私個人的には大好きで、白ワインの様に冷やしても良し、温度が上がっても渋味と酸味がしっかりしているので、赤ワイン的に飲んでも良いという万能選手です。私のお店でもロゼを飲まれるお客様は勿論、少し甘いワインをお好みの方にも喜ばれています。巻き寿司やおいなりさん、散らし寿司などの甘酢のご飯にも良く合います。



3番目のワインです。
キスヴィン シラー ロゼ 2017   (株)Kisvin

甲州市塩山の荻原さんというぶどう栽培家が立ち上げたワイナリーですが、シラーロゼは2017が初ヴィンテージです。セニエ法により造られていますが、白ワインと同じ様にぶどうを除梗・破砕してまだ色が付いていない果汁を引き抜き、それに圧搾を掛けて皮の色を含んで赤くなった果汁を混ぜて造っているそうです。白ワイン的要素と赤ワイン的要素の両方が合わさっているので、この様に淡いサーモンピンクでも透明で中まで透き通る深みのある感じの色になったと思います。

しかしもともとはシラーですので、飲んでいただくと渋味や苦みなどのパンチがしっかりあるのを感じます。色の淡いロゼですが、前2種類とは全然違う味わいになっています。このワインは300本位しか造っていないそうです。合わせるお料理ですが、少し冷やして飲む場合には、お魚料理やカルパッチョ、少し温度を上げて飲む場合には、塩コショウで焼いたお肉などの香ばしいものとも良く合いますので、幅広く楽しめるワインだと思います。
それにしてもシラーのロゼは珍しいですよね。

フランスのローヌ地方では赤ワイン用品種ではシラーとグルナッシュが多く造られていますが、ロゼはグルナッシュがほとんどで、補助品種としてシラーが使われていることが多いです。シラーは高価なワインに使われています。

オーストラリアでは、ロゼのスパークリングにシラーを使う事はありますが、このようにシラーロゼのスティルワインは珍しいと思います。Kisvinさんの自社畑のシラーですので貴重です。
シラーという品種は、渋味が強く、糖度が高く、アルコール度数が上がりやすいので
、普段濃いワインを飲まれない方でもロゼであれば冷やしても良く、又、1日で飲みきれない場合でも2〜3日の間に少しずつ飲みながら、味の変化を楽しんでもらっても面白いかなと思います。

1番と3番の色を比較します。


同じ様なサーモンピンクですが色合いが全然違いますね。
1番の「おやすみなさい」は、無濾過で澱が入っているので曇った感じのサーモンピンクですが、澱の中には旨味成分が含まれていますのでそれを味わってもらいたい。又、3番の「キスヴィン シラー ロゼの方はきれいに濾過してありますので、クリアーな味わいを楽しんでもらいたいなど造り手の考え方やお客様の手に入った時にどの様に見てもらえるかなど、色を見ただけでも造り手の思いを感じる事が出来ますよね。

最後4番目のワインです。
グレイス ロゼ 2016   中央葡萄酒(株)

このワインは昨年の冬と今回の2回飲んで、味が激変していてとてもびっくりしました。色にも熟成感が出て来て、オレンジと朱色が濃くなっていました。メルローが77%、カベルネ・ソーヴィニヨンが20%とカベルネ・フランが3%入っています。赤ワインと同様の造り方をしてセニエで引き抜いたワインと色の濃い赤ワインを合わせて樽熟成したロゼワインですので、赤ワイン的要素の強いワインになっています。2017はまだ出回っていません。スクリューキャップになっていますのでとても便利です。
合わせたいお料理としては、煮込み料理とかスキヤキなどの鍋料理にも合わせられます。1年瓶熟しているので、フレッシュ感が落ち着いて、タンニンが赤ワイン的にいい感じになって来ました。皆さんのお好みもあると思いますが、ロゼでもこのように瓶熟するスタイルのワインもあることを知って頂きたいと思いセレクトしました。

〜千春さん、この「グレイス ロゼ 2016」は1年前のこのセミナーでも取り上げて頂きましたが、その時と比べていかがですか?〜

はい、1年前にはもう少し甘みがあって、色も濃く味もしっかりしていたので、デザートにお勧めですよと説明したのですが、今1年経過して飲んでみると、甘い感じが無くなり赤ワイン的な要素が増えて果実味とタンニンがしっかり出て来ています。タンニンもこなれて良い感じに変わって来ています。ロゼワインでなかなか熟成の変化を味わうという機会はないと思いますが、時には今回の様に数か月〜1年位経ったロゼの変化を追いかけてみるのも面白いと思いました。

〜千春さんによる4種類のワインのテイスティングが終わりました。ちょうどここへ
今日のセミナーの為にロゼカラーのお花を選んでアレンジメントしてくださった「野の花」さんの高島さんがやって来てくださいました。高島さんのお話です。〜

皆さんこんにちは。今日はロゼワインのセミナーということで篠原さんからロゼワインに合う色のお花を活けて欲しいとお話を頂きましたので、私もワクワクしながらアレンジメントしてみました。テーブルのお花はいかがでしょうか?


 (上から)


“とてもきれいです“、”かわいい“の声あり。
ありがとうございます。私自身の事を言われたみたいで嬉しいです(笑)
冗談はさておき、お花の説明をさせて頂きます。

ロゼカラー(ピンク)と言っても、シルバーがかったもの、オレンジがかったもの、紫が入ったもの、黒っぽいピンクなど沢山あります。きっと今みなさんすごく気になっていると思いますが、お花が刺してある容器ですが、ワイングラスにピンク色のパウダーオアシスを入れてあります。通常はグリーンのスポンジの様なオアシスが一般的ですが、これは粉末のオアシスで水を入れると水分を吸って膨らみ、花の茎を固定してくれます。

お花の方ですが、1番の「おやすみなさい」には淡い色のクリームがかったピンクのスイトピーが近いと思います。清楚で可憐な感じがします。2番目の「シャンテ ロサード」にはこの大輪のバラの華やかなピンク色、3番目の「キスヴィン シラーロゼ」には大輪ですがおしとやかに咲いているベージュに近いピンク、私達はこの色をおとなピンクと呼んでいますが、この深い色合いが似合います。最後の「グレイス ロゼ」にはあでやかなグラデーションの入った大きなカーネーションの赤とか真ん中で目を引いている千日紅の赤が良くお似合いです。
その他にこれらのロゼカラーを引き立てるわき役の白いスターチス、グリーンのスプレリューム、紫と淡いピンクのストックなどが頑張ってくれています。

私もワインが大好きでほぼ毎日位にいただいていますが、今日もロゼという事でロゼカラーのカーディガンを着てきましたが、良く見ると千春さんもおとなピンクのような又篠原さんもピンクのワインに合ったお召し物でしたね。
今回の企画に参加させて頂いて、ワインとお花のマリアージュもとても素敵だなと感じました。皆さんも是非その日に飲まれるワインのカラーを考えながら、テーブルにこの様なフラワーアレンジメントを置いてみてはいかがでしょうか?きっとワインもより進まれると思います。きょうは有難うございました。


〜野の花さん、素敵なロゼカラーのお花のアレンジメントと楽しいお話を有難うございました。


ところで千春さんもう少しお話を聞かせてください。ワインの色とお料理の関係はどうでしょうか?〜


はい皆さんもうご存知のように、白ワインにはお魚を、赤ワインにはお肉でなければと決めつける必要はまったくありませんね。


お肉でも鳥や豚は白身で、牛・カモ・羊は赤身になります。鳥や豚は濃いめの白ワインやロゼワイン、サーモンやマス系のものは肉が赤いのでオレンジ色のロゼワイン。透き通ったロゼワインはタンニンがそれ程強くないので、マスの脂の乗ったものや色の濃いお魚に合わせると美味しい。これらに白ワインを合わせると脂身が処理しきれなくてお魚が勝ってしまうことがあるので、ロゼと合わせるとタンニン分が脂を流してくれるので良いと思います。お料理の色に合わせてワインを選ぶ。その中にロゼ色のお料理も結構多いので、赤ワインと白ワインだけでなくロゼワインも取り入れて頂くと食卓もきっとより楽しくなると思いますので是非試してみてください。


〜もっともっとお話をお聞きしていたいところですが、そろそろお店が忙しい時間になってきました。千春さんはミル・プランタンへ戻らなくてはなりません。最後にどうしても聞いておきたい質問をお受けします。〜

Q.ワインをプレゼントする時に、相手の方の好みなどがわからないので、何を選んだら良いのか迷ってしまいますが、千春さんはどうしていますか?
A.私はまず自分が飲んで美味しかったワインをプレゼントします。自分が飲んでいるので自信を持って、このお料理に合わせたら美味しかったとか、少し冷やした方が良いとかとアドバイスも出来ますので、そうしています。

Q.ワインの保存方法を教えてください。
A.ワインを長期保存するにはやはりセラーがある方が良いですね。そうは言ってもセラーの無い場合は、1〜2年位の保存でしたら涼しい押入れの布団の間に置いておくのがよいでしょう。ボトルを新聞紙でくるんで、横に寝かせておくと、ちょうど良い位の湿気があるのでうまく保存できます。2〜3か月くらいでしたら冷蔵庫でも良いでしょう。ボトルをコルクごとラップにくるんで、その上から新聞紙にくるんで保存する。ドアの開け閉めの少ない所が良いですね。飲みかけのワインでしたら、冷蔵庫に入れて出来るだけ早めに飲みましょう。


千春さんのお話がおわりました。千春さん今回も楽しいお話を盛りだくさんありがとうございました。美味しいロゼワインとともに、今シーズンのワインセミナーのスタートが爽やかに開幕することが出来ました。また次回の為に秘策を熟成しておいてくださいね。


さあ本日のワインセミナーも無事終了いたしました。ご参加くださった皆様もすっかりロゼ色のお顔になりましたが、気を付けてお帰りくださいませ。
次回のゲストさんはまたまたとんでもないあの方です。ご期待ください。  篠原

お待ちかねワイン俳句です。

ロゼワイン 桜の下で  大宴会!  カベルネ・メルローさん
春にロゼ  飲んだら気分は  おとなピンク!  子どもピンクさん
春の風  ワインも私も 桜色  ちゅんさん
さくら色  色とりどりの  ロゼワイン  miruさん
桜咲く  この時期にロゼ  風流な  黒いジムニーさん
人生も  ロゼも出会いが  面白い  のらのらさん
甘い色  と思った君は  辛かった  かのさん
桜色  ワインの出会いと  人の出会い  のみすけさん
春の空  うすくれないが おどりだす  どらえもんさん
さくらいろ  花とワインで ホホ染める  プーさん
勝沼で  知識が向上  ロゼワイン  しもどんさん
サクラ咲く  行くも帰りも  朝市へ  仙人予備隊さん
満開の  桜を見ながら  ロゼを飲む  シェリーさん
新年度  ワインも景色も  桜色  Mizuhoさん
春がすみ  ワインはローゼ  勝沼の朝  初心者さん

たくさんの投句ありがとうございました。