かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第96回 2018.7.1



参加者
県外6名  県内8名 計14名

講師
シニアワインエキスパート 篠原雪江

ゲスト
「ビストロ ミル・プランタン」 オーナー ソムリエ 五味丈美 様


アシスタント
深澤さん、尚枝さん






ワインリスト
1 塩山洋酒 デラ・甲州スパークリング 2017   塩山洋酒(株)
2 キスヴィン 甲州スパークリング 2017    (株)Kisvin
3 ルミエール スパークリング ロゼ 2016   (株)ルミエール
4 シャルドネ スパークリング 2016      フジッコワイナリー(株)

セミナーの内容
1 本日のテーマ「スパークリングワイン特集 第二弾」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの紹介 「ビストロ ミル・プランタン」 五味丈美 様




レポート
今年の梅雨は6月6日〜6月29日までで、観測史上初めての6月中の梅雨明けとなり、平年より22日も早いそうです。降水量の少ないほぼ空梅雨状態でした。梅雨明け宣言のとおり今朝は快晴、強い日差しが肌を刺しています。予想最高気温が34℃位なので、参加者の皆さんに冷たいお水も用意して、熱中症対策に気を配っています。

本日のゲストは、皆さんお馴染みの「ビストロ ミル・プランタン」のオーナーソムリエの五味丈美様です。5回目のご出演です。一昨年に続いて「スパークリングワイン特集第二弾」で、今回もあれが見られるでしょうか、期待が高まります。早速セミナースタートです。五味さんです。



皆さんおはようございます。今日はスパークリングワイン4種類ですので、テイスティングの前にスパークリングワインのお話をします。

スパークリングワインとは、ワインの中に溶け込んでいる炭酸ガスの圧力が、通常20℃において3気圧以上であることとされています。そして1気圧未満はスティルワインになります。では2気圧は何?と言いますと微発泡ワインになります。

製法ですが
・瓶内二次発酵  スティルワインに糖、酵母を加え瓶詰し、密閉することによって炭酸ガスを瓶内で生成する。本日のワインのルミエール スパークリング ロゼとフジッコのシャルドネ スパークリングがこの製法で造られています。山梨県で甲州種で初めて瓶内二次発酵のスパークリングワインを造ったのは、キザンワインさんで、2000年ヴィンテージを2001年に販売しました。
・シャルマ方式  大きなタンクで二次発酵を行う。同じ加圧下で別タンクに移動させる際にオリ引き、同加圧下で瓶詰めする。コストが抑えられる。キューヴ(又はキュヴェ)クローズともいう。
・トランスファー方式  瓶内二次発酵後加圧タンクに移し、オリ引き後新たに瓶に詰める方法。(アメリカ、オーストラリア)
・メトード アンセストラル(フランス南部伝統方式)  一次発酵の途中で瓶詰して瓶内でさらに発酵を続けるという方法。ガス圧が低めです
ので、微発泡が多い。
・メトード リュラル(田舎方式) メトード アンセストラルと同じ製法
・炭酸ガス注入方式  瓶またはタンクに入ったスティルワインに炭酸ガスを注入する方法。本日の塩山洋酒デラ・甲州スパークリングとキスヴィン甲州スパークリングはこの方法で造られています。
などがあります。


スパークリングワインの呼び方
フランス  ヴァン・ムスー(発泡性ワイン全般、3気圧以上)
シャンパーニュ(シャンパーニュ地方で造られる瓶内二次発酵のワイン、5気圧以上)
クレマン(シャンパーニュ以外で造られる瓶内二次発酵ワイン、3気圧以上)
ペティヤン(微発泡ワイン、3気圧未満)

ドイツ
シャウムヴァイン(発泡性ワイン全般、3気圧以上)
フラッシェンゲールング、ゼクト(瓶内二次発酵で造られたゼクトはラベルにフラッシェンゲールングと表記される。3.5気圧以上)
パールヴァイン(微発泡ワイン、3気圧未満)

イタリア
スプマンテ(発泡性ワイン全般、3気圧以上)
スプマンテクラッシコ(瓶内二次発酵ワイン、5気圧以上)
フリッザンテ(微発泡ワイン、3気圧未満)

スペイン
エスプモーソ(発泡性ワイン全般)
カバ(瓶内二次発酵ワイン)
など国によって呼び方が違います。

次にスパークリングワインのグラスについてお話しましょう。
フルートグラス 縦に細長いグラスです。一般的にはこの形が使われます。
クープグラス 口径が広く縦に短いグラス。結婚式などお祝いの席に多く使われる。

クープグラスのおもしろ話
1700年代、マリーアントワネット(オーストリアハプスブルグ家出身でマリア・テレジアの娘、フランス国王ルイ16世の王妃)はオーストリアの焼き菓子が好きでしたが固いものを食べると早く頬にしわが寄ると信じていたので、シャンパーニュに浸して柔らかくして食べたそうです。お菓子を浸すのにフルートより広いクープグラスを愛用していた。それからヴェルサイユではシャンパーニュを飲むのにクープグラスが流行ったそうです。

お待ち遠様でした。テイスティングに移ります。

@ 塩山洋酒 デラ・甲州スパークリング 2017  塩山洋酒(株)

 塩山地区と勝沼地区のデラウエアと塩山地区の甲州を別々に醸造した後、ブレンドしてガスを注入してあります。ブレンド比率はデラウエア50%甲州50%です。ガス注入なので瓶内二次に比べると少しガスが優しく感じられると思います。


〜参加者から質問です。ガス注入の方が皆ガスが優しいのですか?〜
ガスの質にもよりますが、ガスの入れ方の違いもあります。

例えば、ガスを一気に入れた場合と2週間位掛けてゆっくり入れた場合とでは、ゆっくりの方が気泡が細かくなりガス圧も上がり、反対に一気に入れる方が抜けるのも早く気泡が大きくなる傾向があります。

グラスをよく見てみましょう。グラスの底から上がって来た泡が縁に添って丸くくっついていきますね。これをフランス語で「ペルル・ド・コリエ」(真珠の輪)と言います。またフルート型のグラスは細かい泡が長く続いて上がるように、底に少しキズを付けておくこともあります。

香りはどうでしょうか?デラウエア中心でドロップのフルーツキャンディーや白いお花の香りを感じます。味わいにデラウエアの残糖を感じ、フルーティーで爽やか、余韻に甘みと甲州の酸味と苦みがあります。ガス圧は優しいですね。もう少し冷やしてアペリティフや、今の季節では桃のコンポートや夏のフルーツに良く合うと思います。後でボトルを回しますが、裏ラベルにガス注入を行った会社の名前が書かれています。このスパークリングはマンズワインさんが行ったものです。

A キスヴィン 甲州 スパークリング 2017  (株)Kisvin
炭酸ガス注入方式です。

甲州市塩山千野地区産の甲州100%使用。]

@のデラ・甲州より気泡が細かい。香りはハーバル。鉱物的な石のようなミネラルも感じる。味わいは爽やかでミネラル感のある酸が舌をきゅっと締める感じがあります。

甲州らしいほのかな苦味がありますが、苦味はマイナスではなくて、野菜料理や焼き目を付けた魚料理に良く合うと思います。

例えばこれからの季節はサンマに焦げ目を付けて焼き、レモンとかお酢と大根おろしで食べると良いと思います。アユよりサンマの方が良いですね。








B ルミエール スパークリング ロゼ 2016   (株)ルミエール
山梨県内のカベルネ・フラン、タナ、ブラッククイーン、メルローを別々に醸造し、その後ブレンドして酵母を加え瓶内二次発酵させたものです。泡は勢いよく立ち上がります。

色はサーモンピンク。香りですがイチゴドロップキャンディーやピンクペッパーなどのスパイス香が感じられます。味わいは辛口ですがフルーティーな味わいと瓶内二次発酵の熟成感があり、飲んだ後にマディラのような香りが余韻としてあります。

黒ぶどうの渋味が残りますが、甲斐サーモンのマリネしたサラダ仕立てとか焼いたものなどと合わせると良いと思います。

ロゼワインにはお料理と色を合わせましょう。例えば人参のピンクやトマト・カプレーゼなど良いですね。








C シャルドネ スパークリング 2016  フジッコワイナリー(株)
長野県中野市の単一畑のシャルドネを使用。瓶内二次発酵により造られています。熟成期間は9カ月。色は濃いですね。落ち着いたミネラル感。バタークッキー、熟したリンゴ、溶かしバター、焦がしバター、酵母、焼いたパンなどの香り。口に含むとガス圧が優しく、シャルドネらしい肉厚な感じ。オイリー。

1年経ってガス圧が柔らかくナッティーな香ばしい感じになってきたスパークリングワインは、グラスもフルートにこだわらず、大ぶりの丸いグラスについでシャルドネのスティルワインと同じ感覚で飲むとより美味しく飲めます。

2016年はぶどうが完熟した年だったので、少し甘みがあり、同じワインの2017年はスッキリとした味わいに仕上がっていますので、両方を比較して飲んでみると面白いです。

スパークリングワインは、ワイナリーによっても又、造り方によってもこれ程味わいが違ってくるので楽しいですね。今山梨ではスパークリングワインの醸造が増えてきています。それだけ需要があるということだと思います。

〜今回参加者の中にたまたまフジッコワイナリーの営業の方がいらっしゃいましたので、シャルドネスパークリングの美しいラベルについてお話を聞きました。フジッコワイナリーさんです。〜

フジッコワイナリーの営業担当です。きょうは弊社のワインをテイスティングしていただいて有難うございます。弊社は1990年からワインを造り始めましたが、2000年頃からブライダルワインの需要がありまして、ブライダル用として使われた鶴のラベルです。色は黒がシャルドネスパークリングで、ピンクが巨峰スパークリングで、銀色が甲州のスパークリングの3色ありましたが、現在はブライダルではなくこのシャルドネスパークリングのみに使用しております。人気のあるラベルです。


〜有難うございました。五味さんから瓶内二次発酵のスパークリングワインの造り方を更に詳しくお聞きしました。五味さんです。〜


ではご質問がありました瓶内二次発酵の造り方をお話します。
まず白ワイン又はロゼワインのスティルワインを造り瓶詰します。その時瓶の中に酵母と糖を入れて王冠をします。瓶内で二次発酵が始まり発酵が終わるとオリが出てきます。

このオリを取り除く方法がユニークです。ピュピトルという斜めに穴のあいた板に穴に添って王冠を下にしてボトルを差し込みます。毎日ボトルを8分の1づつ回しゆっくりとオリを口元に集めながらボトルを立てていきます。


オリが口元に集まったらその部分を液化チッソガスに浸けて凍らせます。そこで素早く抜栓すると凍ったオリがポーンと外に飛び出す。減ったワインの分だけ同じワインとかリキュールを充填してコルクと針金を掛けて出来上がりです。この時のリキュールの量によってワインの味が甘口になったり辛口になったりします。

ボトルを回してオリを口元に集める作業(ルミアージュと言います)をジャイロパレットという機械を使って行うところもあります。大変な手間と時間を掛けて瓶内二次発酵のワインが造られていることがおわかり頂けましたでしょうか。


〜五味さん有難うございました。この後場所を移動してシャンパンサーベラージュの実演をしていただきます。皆さんグラスを持って横の広場にお集まりください。〜

〜五味さんの実演です。〜
シャンパンサーベラージュの由来のお話の後、いよいよ本番です。
皆さん緊張気味に五味さんの手元を注目しています。


左手に@番の「塩山洋酒デラ・甲州スパークリング」のボトルを持ち、右手にはキラキラ光るサーベルを持ちました。1、2、3の号令の後一瞬サーベルが宙を舞ったと同時にポーンと音がして、ボトルの首が遠くへ飛んで行きました。


大成功です!「わー!」「すごい!!」の歓声と拍手が上がりました。皆さん五味さんからスパークリングワインを注いでいただいて、「カンパーイ!」「おいしい〜!」と大喜びでした。その後皆でローラー作戦で草むらの中からボトルの首を捜しだして終了しました。


五味さんはこの後お店に団体さんの予約が入っているとのことで、大急ぎで帰られました。みんなでお礼の拍手でお送りしました。お忙しいお店があってもぎりぎりのところで都合をつけて、このセミナーの為に何回もご出演くださいまして本当に有難く思います。





五味さんがお帰りになられた後はワイン俳句タイムです。皆さん5分位でステキな俳句を作ってくださるので、いつも感心させられます。この俳句によって今日のセミナーが皆さんにどのように届いたかを知ることが出来ますので、いつも楽しみに読ませていただいております。



真夏の太陽が照りつける中をお帰りになられる皆様、どうぞお気をつけてご無事にお帰りください。今回もご参加くださいまして有難うございました。
次回も興味深々のゲストです。お楽しみに!!     篠原


ワイン俳句です。

梅雨明けの 空に号砲 サーベラージュ    ガナーズベリーさん
朝市と ワインセミナー やみつきに     PECOさん
すごく暑い 泡を飲んでも まだ暑い     けいくんさん
真夏日に 冷えたワインで ミネラル補給   Takaeさん
青空に パンとはじける サーベラージュ   かのんさん
梅雨明けの ワイン香る 勝沼朝市      天使さん
夏の陽も 涼しくなりぬ スパークリング   ぱぱっちさん
夏の泡 雲にみたてた グラスの中      くっきーさん
さわやかな 風に吹かれて 泡づくし     ちゅんさん
ワイン もも 毎年来てます 愛知から    くみこさん
梅雨明けて さわやかな泡 いとうまし    まちこさん
これからは スパークリングが さいこうだ  ぱぐりーにょさん
葡萄棚 碧き葉っぱと 白き傘        Kさん

以上です。ありがとうございました。