かつぬま朝市ワインセミナーレポート

第98回 2018.9.2




参加者
県外3名 県内11名  計14名

講師
シニアワインエキスパート 篠原雪江

ゲスト
ワイン愛好家 深澤豊和様

アシスタント
尚枝さん

ワインリスト
1 ドメーヌ シャトレーゼ 甲州 2017 (株)シャトレーゼベルフォーレワイナリー 勝沼ワイナリー
2 デラウエア 初しぼり 2017 蒼龍葡萄酒(株)
3 ヴィンヤード菊島 マスカット・ベーリーAロゼ 2017 (株)東夢 
4 川口園 自園 ベーリーA 2017 (株)東夢


セミナーの内容
1 本日のテーマ「ワインの楽しみ方 飲み手からの視点」
2 テイスティングワインについて
3 ワイン俳句について
4 ゲストの紹介 ワイン愛好家  深澤豊和 様



レポート

猛暑の夏は秋に台風が沢山発生するそうで、今年は次から次へと台風が発生しています。今日も台風通過の影響で時折激しい雨の予報です。8時頃から雨が降り出したので、テントを移動させて大雨体制をとりました。ところがセミナーの始まる頃には雨はすっかり上がり、心地良い風も吹きワイン日和となりました。素晴らしい朝市マジックです。NHKテレビのリポーターさんが来られて、途中からワインセミナーに参加させてくださいと言って朝市の人混みの中に取材に入って行かれました。


セミナーの開催時刻が近付いてくると、悪天候の予報にも関わらず参加者の皆さんが次々に集まって来てくれました。先程まで色々なことで気持が分散していた私もスイッチが入りました。さあ今日もとびっきり楽しいワインセミナーにしましょう!!!

セミナースタートです。
今回のゲストは、ワイン愛好家の深澤豊和さんです。
皆さん「あれ?」という顔をしていますが、そうです、いつもこのセミナーがスムーズに進行できるよう気を配っていてくれるアシスタントの深澤さんです。もう6年間奥様と一緒にボランティアで助けてくださっています。


実は彼はワインと食に精通し、楽しむとともに冷静な目で判断する批評家でもあります。いつもセミナーが終わった後、片付けがすんでからお昼ご飯を深澤ご夫妻とご一緒するのですが、その時に話してくれる食に関するお話が大変面白く、セミナーで皆さんにお話してくれるようお勧めして、今回ゲストで登場となりました。奥様の尚枝さんは、今日は一人でワインの手配からカメラマンの仕事、参加希望者の応対などなど大忙しです。

では最初のワインから味わってみましょう。
@ドメーヌ シャトレーゼ 甲州2017 (株)シャトレーゼ ベルフォーレワイナリー 勝沼ワイナリー

「爽やか!」「しっかりしている!」「おいしい!」などの声が上がります。最初から素晴らしいワインが登場しました。このワインは今年(2018年)の日本ワインコンクール甲州部門で金賞を受賞しました。日本の伝統品種の甲州で金賞をとるというのは、どこのワイナリーさんも目標にして力を入れているので、それだけに個性を出すのが非常に大変な品種だと思います。

この素晴らしい金賞ワインが、今私達がセミナーをしている朝市会場の中にそれも目の前のシャトレーゼ勝沼工場で造られたとは本当に嬉しいです。身内が賞を頂いたような気分です。ワイナリーではこの時期はデラウエアを初めとする収穫の早いぶどうが次々と運び込まれ、仕込まれていきます。気の抜けない時です。

出来ることなら醸造担当の方のお話を聞きたいと思い何回か足を運びましたがやはりお会い出来ませんでした。それでもとダメモトでお店の方に伝言をしてくださるようにとお願いをしてきました。

テイスティングの説明を始めた時です。サプライズがありました!!
シャトレーゼさんの方からニコニコしながら駆け足でやって来る人物が視線に入りました。工場長の戸澤さんです。ビックリです。このセミナーの為に駆けつけてくださったのです。戸澤さんのお話です。

皆さんこんにちは。ワイナリーは今ソーヴィニヨン・ブランやセミヨンなどの混醸の仕込みの真っ最中ですが、一区切りついたので後をまかせて駆け付けました。きょうは「ドメーヌ シャトレーゼ 甲州2017」をテイスティングしてくださり有難うございます。このワインについてお話します。


ワイン名の「ドメーヌ」の意味は、自社でぶどう栽培から醸造、瓶詰までを一貫して行っているワイナリーのことです。ラベルを見て頂くとカラフルに色分けされていますね。ピンク、グリーン、オレンジ、イエローの4色です。これには意味があります。甲州をいくつかのタイプに仕上げて最終的にブレンドするそのブレンド比率がこのラベルに描かれています。
〜「えーつ??」の驚きの声あり〜

自社畑でも色々な土壌の畑があります。川べりの砂地の畑、山地(やまじ)の粘土質で斜面の畑などもあります。色々な畑があるので、全部同じ仕込み方をするよりその畑の持つポテンシャルをどうやって出していくか、例えば収穫のタイミング、酵母、発酵、ステンレスタンク、樽などの選択肢がある中で現時点でそのぶどうの力をどれだけ出せるか最良と思える選択をしています。

ラベルのピンク、グリーン、イエローは勝沼町等々力の畑違い、オレンジは勝沼町菱山の畑です。等々力地区は平地で砂地なのでステンレスタンク発酵を行い、すっきりとした味わいで柑橘系の香りが出て来ます。又菱山地区は山地の斜面で粘土質土壌なので、樽発酵を行いボリューム感のある味わいとなり、白桃などの香りが出てきます。これらの原酒からサンプルとして少量ずつ抜き取り、色々な組み合わせでブレンドしてワインを造りあげます。最終的に使用した原酒のブレンド比率がラベルの色分けになっています。この原酒はドメーヌ シャトレーゼ甲州の他に5アイテムある甲州のワインにも使用します。

〜樽はどのように使っているのですか〜
樽を使用する理由ですが、アタックから樽香をねらっているのではなく、飲んだ後の戻り香に樽の風味を感じたり、ボリューム感を出す目的があります。
〜すごく良い感じの樽香ですね。〜

〜甲州の収穫はいつ頃するのですか?〜
9月の中〜下旬で、山地はもう少し遅いです。
〜どのようにして収穫時期を決めるのですか?〜
収穫が近づいてくると週に1度位畑に行ってサンプルをとり、器具を使って糖度、酸度、pHなどを測定します。しかし最終的には自分が食べて風味を味わって決定します。

さあ皆さん今戸澤さんのお話を聞いたところで、もう一度ワインを味わってみましょう。どのような感じがしますか?
〜「一層美味しく感じます。」〜
〜「時間の経過と共に味わいが変化して、まろやかに感じます」の声あり。〜

皆さんの喜んでいる様子をみながら戸澤さんも満足げです。いつしかNHKのリポーターさんの小村さんも参加されていて、しっかりと味わっていらっしゃいます。もっとお話をお聞きしたいところですが、仕込みの途中で駆けつけてくださった戸澤さんに感謝を込めてみんなで「おめでとう」を言う事にしました。
“シャトレーゼさん、金賞受賞おめでとうございます。カンパーイ!!”


大きな拍手で戸澤さんをお送りしました。戸澤さんは又駆け足で工場に帰っていかれました。本当に嬉しいサプライズでした。

A デラウエア 初しぼり 2017  蒼龍葡萄酒(株)

勝沼地区で最も早くリリースされる品種がデラウエアです。残念ながら今年のヌーボーワインは、2日後の9月4日にリリースとのことで、新酒は間に合いませんでした。

でもやっぱり皆さんにデラウエアのワインを知って頂きたくて、2017ヴィンテージをご用意いたしました。少し熟成感がありますが、甘味も酸味もしっかりしていて、チャーミングな味わいです。今の味わいですと皆さんにお勧めしたいのは、デザートワインとしていかがでしょうか。

バニラアイスクリームにこの1年熟成のデラウエアはとても良く合います。お試しください。そして2日後のヌーボーワインのフレッシュでフルーティーな味わいと飲み比べるのも楽しいと思います。

ここから本日のゲストの深澤さんと一緒に進めて行きます。

B ヴィンヤード 菊島 マスカット・ベーリーAロゼ 2017 (株)東夢

C 川口園 自園 ベーリーA 2017    (株)東夢



深澤さんのお話です。
今皆さんに注いで頂きました2種類のワインをまず味わってみてください。今回このワインを私が選んだのは、この会場のすぐ近くにありますカフェ「つぐら舎」が行っている「つぐら市」で試飲してとてもいいなと感じたからです。
ロゼワインは飲み手にとってはチョイスに迷う所がありますが、この「ヴィンヤード菊島」はしっかりとマスカット・ベーリーAの本質を出して飲みごたえがあります。又、「川口園 自園 ベーリーA」は日本の赤ワインの代表品種にふさわしい、品種の特徴をしっかりと捉え、それがとても心地よく感じられます。
飲み手にとって価格は大切ですが、両方ともお手頃価格で日常のテーブルワインとして気軽に飲めると思います。
〜「おいしいです!」の声あり〜

ワイナリーによってはマスカット・ベーリーAを熟成しているところもあります。少し高級な赤ワインとなります。ワインを自宅で熟成させるのは管理が大変ですね。ワインセラーがある場合は良いですが、私もマスカット・ベーリーAを新聞紙でくるんでその上からラップして更にタオルで巻いて冷蔵庫で保管しておきましたが、先日取り出して飲みましたら酸化が始まっていました。やはりワインは良い状態で保管しておかなければいけないなと感じたところです。

私は27才頃からワインを飲み始めて現在まで30年近く、約3000本位のワインを飲んでいます。初めに食に興味を持ち、その食べ物に合う酒は何かという所でワインにはまっていったのです。その時ワインをより美味しく飲むにはグラスが重要ということに気付きました。ここに2つのグラスを持ってきました。1つ目はボルドータイプで2つ目はブルゴーニュタイプです。
これからマスカット・ベーリーAの赤ワインをこの2つのグラスで飲み比べて頂きたいと思いますが、どなたかやってみたい人いますか?



〜皆さんがNHKの小村さんにチャレンジするようにすすめます〜

では小村さん2つを飲み比べてください。どんな感じがしますか?
〜「高級な感じがします。」(笑)〜
〜「香りの出方が違いますね。ブルゴーニュタイプの方が広がりがあるように思います。また酸も2つでは強さが違うように感じます。面白いですね。」〜

ありがとうございます。いま小村さんが言われたように同じワインでもグラスが違うと香りや味わいが違ってきます。ゆっくりと味わいの変化を楽しみたい場合にはボルドータイプで、又、香りの広がりや複雑な味わいを楽しみたい場合にはブルゴーニュタイプでというように、ワインによってグラスを使い分けると本当に面白いです。
マスカット・ベーリーAは、レストランではボルドータイプで出してくれるところが多いですが、私としてはブルゴーニュタイプで飲むのをお勧めします。白ワインの場合もやはり味わいがはっきり違って感じられますので、ワインを飲む時にグラスにこだわってみてください。その外に家でワインを楽しむ時に必要な物にソムリエナイフがあります。キャップシールを剥がしたりコルクを抜いたりするのにとても便利です。自分の手に合ったソムリエナイフを使ってワインを楽しんでください。

又、いくら美味しいワインを飲んだからといっても二日酔いをしては何もなりません。私も以前は毎日ワインをボトルで1〜1本半位飲んでも翌日は何ともなかったのですが、今は二日酔いになります。そこでワインをハーフボトル(375ml)にすると肝臓への負担が軽減されます。それとやはり1週間の内に1〜2日位休肝日を持つことですね。良い体調でリラックス出来る夕食時にワインを飲むのが、時間栄養学的にも良いようです。

先程から皆さんワイングラスを回して(スワリングして)香りをかいでくれていますが、これについて面白い話があります。


ワインを楽しむのにグラスを回転させて空気に触れさせ香りを感じ取りますが、この時マナーとして反時計回りが常とされています。それは食事の時などにワイングラスはテーブルの右にセットされます。そこでグラスをスワリングした場合、勢い余ってワインがグラスから飛び出したりしたら隣の人に掛かったりします。その為左回り(反時計回り)自分の方に回転するのが良いのですが・・・。

実はもう一つの真実があります。
それはこの世の中には回転の法則というのがありまして、右回り(時計回り)は閉じる回転なのです。世界中どこに行ってもネジの回転で、閉じるのは時計回りなのです。家の鍵も閉じる時は時計回りですよね!
そして開くときは、左に回します。故に時計回りですとワインは閉じてしまうのです。なのでワインを開かせる時も反時計回りが正解なのです。あくまでも深澤的都市伝説ですが。
〜これを聞いて皆さん大笑いです。〜

私は食からワインに入ったと言いましたが、友人にも飲食関係の人が多くいます。あちらこちらの飲食店を食べ歩いて、自分なりの良いレストランの選び方の定義を持っています。
・料理がおいしい
・従業員のサービスが良い
・居心地の良い建物である
あと1つ重要な要素がありますがどなたかわかりますか?
〜「良いワインが置いてある」、「値段が安い」などの声あり。〜
それは
・客層が良い ということです。
良いお客さんが来てくれるお店は、店全体の雰囲気が良くなって心地よく感じられるのです。
「ワイン愛好家は紳士淑女なれ」というのが私の持論です。

最後に皆さんに食に関して昔から言われている言葉をご紹介します。「身土不二」(しんどふじ)と言う言葉です。人間の身体と土地とは切り離せない関係にあるということです。その地で生きていく人間は、その地でとれた物を摂取することによって、その地で生きていく力が身に付くという意味です。

皆さん日本のワインを飲みましょう!!
そして楽しいワインライフを過ごしましょう。

以上で私の話は終わります。ありがとうございました。

〜みなさんから大きな拍手が送られました。いやー楽しかったですね。
過去3000本のワインを飲まれてきた深澤さんが出した結論、「日本のワインを飲みましょう」は説得力があります。深澤さん楽しいお話をありがとうございました。


もう少し時間がありましたので、みんなでブラインドテイスティングのゲームをしました。
2人1組になって1人がワインを差し出す役で、もう1人が目をつむり鼻をつまんでワインをテイスティングして何番のワインか当てる、と言うゲームです。殆どの方が正解でしたが、中には白をロゼと間違えたり、赤をロゼと間違えた方もいました。色も見えない、香りもとれないテイスティングでしたので、少し難しかったかもしれません。

ワーワー!きゃーきゃー!にぎやかに皆さん心からこの時間を楽しんでいるようでした。ワイン仲間って本当にいいですね。おとなり同志初めて会った方とも、こうしてすぐにお友達になれてしまいます。

セミナー終了後、近くの民宿の川口園さん(C番目の赤ワインの川口園さんです)が差し入れをしてくださった甲州とマスカット・ベーリーAのぶどうを、味わいました。ワインの原料となるぶどうは滅多に食べることは出来ないので、皆さん大喜びでした。川口園さん有難うございました。


きょうは色々な事がいっぱい詰まったワインセミナーになりました。
NHKテレビ「ひるまえほっと」の撮影があったり、金賞ワインを造られたシャトレーゼワイナリーの戸澤工場長が駆けつけてくださったサプライズがあったり、ゲストの深澤さんのお話で大笑いをして、最後にゲームで日頃のストレスを発散させて、お帰りの時には皆さんすっきりとしたお顔でした。私篠原も楽しませていただきました。皆さんありがとうございました。

さて次回は世界的視野でワインを語ってくださるあの方です。どうぞお楽しみに。
篠原

ワイン俳句です。
(ぶどうを食べて)粒含み 一年の恵み 感謝する 桃ちゃんさん
目を閉じて ただ心をすます ベーリーA ガナーズべりーさん
台風の 予告を交わして ワイン会 きょうちゃんさん
青空と スッキリワインの コラボレーション たけちゃんさん
秋風に 香るワインに ほろほろ酔い ちゅんさん
新しい 発見たくさん ワイン会 シェリーさん
秋風に 吹かれてワイン おいしいな 残念お名前なしさん
雨もやみ みんなで学ぶ ワイン会 山チャンさん
勝沼の おいしいブドウ ワインに生きてる ミッフィーさん
ひらいた かつぬまワイン 左回り Rock Sendaさん
金色の 輝きを増す 甲州ワイン みの字さん
秋の風 さわやかワイン ワインセミ 菱山マンさん