人助けに夢中で・・・
第8回朝市が始まる5分前、会場内の駐車場脇に本部を構えている私の前を一台の車がゆっくり通った・・

なぬ?ん?なんで?私は通常一番隅っこに本部を構えて朝市の陣頭指揮をとる真似をしている。なんで私の前をあの車が行ったの?その先は側溝。

振り返ると案の定、道路との境にある側溝にまさしく白色の日産サニーB14型が落ちるところだった。

あっ!と叫んだ。心の中では「落ちたら大変!」という思いと「落ちたら面白い!」という複雑な気持ち(どっちかと言えば後者なのだが・・・)が入り混じっていたのだが事はしっかりと進行していた。「ガッ」鈍い音がしてサニーは側溝に両前輪がはまってしまった。

運転手さんは別に怪我の様子はなく、道なき道を開拓しようとして失敗した無念さで頭をポリポリかきながら車から出てきた。

私はかつて若かりしころクレーン車のオペレーターでブイブイ言わせていた事もある。そして小澤氏は職業で事故車の引き上げなんかは日常茶飯事、この手の事は「へ」でもない。

FF車両(前輪駆動車)なのでフォークリフトを持って来ようか?それとも・・・あたりを見渡すと開店準備におおわらわの男性がやく15名ほど・・・

こんだけいれば持ち上がるぞ。早速「ちょっと手を貸して!」声をかけた。甘利氏と坂本氏とカッチャンは見るからに力がありそうだし、ただしさんは多少細身だがこと人助けになると普段の1.2倍くらいの力はすぐに出してしまう。あと三井さんも兄弟で腕をグルグル回す勢いで飛んできた。

せーの!最初の一回目は息が合わず失敗。2回目もそれぞれの掴む位置がうまくなく思うように力が入らない。万をじしての3回目!気合とともに日産サニーが側溝から抜け出した。

「ありがとうございました。」パイオニア精神溢れる運転手さんは皆にしきりにお礼を言っていた。大仕事をやり遂げた男たちは誇らしげに持ち場へと散った。

私も人助けの気持ちよさをかみしめながら本部へ戻りかけて気が付いた。「決定的瞬間の写真を取り忘れた!!」ショックのあまりつい口走ってしまった「すいませーん。もう一度落ちてもらえますか!!」しかしすでに日産サニーはゆっくりと通常のコースへ戻り始めていた。私の一言に甘利氏(緑ジャケット)のみ微笑を返してくれた。
●平成15年12月
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