かつぬま朝市ワインセミナーレポート by篠原
かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第48回 2012.07.01


参加者 県外15名 県内4名  計19
                
講師
大山シニアソムリエ・篠原シニアワインエキスパート  

ゲスト
白百合醸造(株)  醸造家 東海林様          

アシスタント
のぶ子さん         

ワインリスト
1 ルバイヤート(白)丸藤葡萄酒工業(株)   
2 ルバイヤート(赤)   〃        
3 ロリアン勝沼甲州 2011 白百合醸造(株)     
4 ロリアン三重奏 2009  〃        

料理
1 ドライフルーツ
2 ミニ田楽
3 クラッカー+木いちごのジャム
4 セロリとイカクンのマリネ



セミナーの内容
1 甲州ぶどうのお話
2 甲州種ワインのお話
3 ワインテイスティング
4 本日のゲスト 白百合醸造(株) 東海林 様のお話 

レポート

今年の梅雨は降ったり晴れたりです。雨の日は気温が23度位で畑にいると肌寒く、晴れの日は気温が30度位まで上がり非常に蒸し暑いという状況です。我が家の甲州ぶどうは、ひとつぶの大きさが1cm位になりフットボールのような形をしています。順調に育っていますよ。

さて、梅雨真っ只中の7月のワインセミナーは、参加者の出足が危ぶまれましたが、おかげさまで大勢のお客様が来てくれました。でもやっぱり途中から雨が降り出しましたね。しかし私達は、既に大雨についての学習は5月のセミナーでしっかり予習済みです。きょうも落ち着いて、皆さんのご協力で、雨の日シフトにテーブルを切り替えてセミナーのスタートです。

初めはいつもの様に、大山シニアソムリエによるこのセミナー初参加の方の為に、「甲州ぶどうのお話」と「甲州種ワインのお話」です。大山シニアソムリエも私篠原も日本のワインの代表である「甲州」の素晴らしさを少しでも多くの方に知っていただきたい、また1300年も前からここ勝沼を中心に栽培されてきている甲州ぶどうの伝統の大切さを語り続けていきたいと思い、毎回このお話をさせていただいています。ひきつづきワインテイスティングです。


「ルバイヤートの白でテイスティングの方法を練習しました。もともとワインは気楽に、お好きな様に飲んでいただければよいのですが、テイスティングの方法を知っていれば香りや味わいをより深く感じることができると思います。甲州にデラウエアーをブレンドして造られているこのワインは、デラウエアーが入ることにより香りや味わいに華やかさと柔らかさが深まりました。

次にルバイヤートの赤です。マスカットベリーAを主体に数種類のセパージュ(ぶどうの品種とその割合)からなるこの赤ワインから、複雑な香りや味わいを感じとる練習をしました。そしてその後は、お待ちかね本日のゲストの登場です。

本日のゲストは、白百合醸造(株)の東海林さんです。東海林さんが登場すると、参加者の間から一瞬「エー?」という様な驚いた声が聞こえました。


若い女性?そうです。たぶん皆さんの想像に反して、女性の方です。 

東海林さんは白百合醸造に勤務して6年、醸造を担当しています。それ以前は、東京のホテルやレストランを経営する会社に勤務して、そこでワインと出会ったそうです。ソムリエの資格を取得して益々ワインがおもしろくなり、更に勉強をしたいとカナダへ渡り、ワインスクールやワイナリーで栽培や醸造を学んできました。帰国してから、勝沼でワイン造りをやりたいとの思いで白百合醸造に就職し、夢がかなってワインを造っています。


白ワインの醸造法、赤ワインの醸造法をご自分の経験を通して話してくださいました。そして東海林さん一押しのワインをテイスティング。

ロリアン 勝沼甲州 2011
勝沼産甲州種100%のこのワインは、以前グルメマンガ「おいしんぼ」で、和食と良く合うと好評を得たワインです。色は、ほとんど透明に近い淡いレモンイエローで、粘性あり。グレープフルーツ、レモン、バナナ、ヨーグルトなどの香りが立ち上がってきます。アタックはしっかりしていて、たっぷりの果実味とさわやかな酸、旨味のある軽い苦み、中盤から後半にかけてアルコールによるワインの厚みを感じる。アフターに吟醸酒(清酒)に似たシュールリーの香り。余韻は長い。2011年の若さを保ちながら、ボディのしっかりした芳醇な味わいの辛口白ワインです。お料理とのマリアージュは、これからの季節に冷しゃぶポンズがよいそうです。


つづいて「ロリアン 三重奏 2009」です。セパージュは、メルロー53%カベルネソーヴィニヨン26%カベルネフラン21%で、この3品種が奏でる香りや味わいからこの名前が付けられたそうです。ややオレンジがかったルビー色。色の濃さは中程度。(グラスの反対側に薄く指が透けて見える位)粘性あり。カシス、ブラックベリー、ブラックペッパー、プラムなどの香りが華やか。アタックは強い。まず、スパイスを感じた後、バランスのとれた果実味と酸、タンニンは若々しい。アタックの強さが最後までつづく。アフターにカシスやペッパーの香りを感じる。骨太でしっかりしているが飲みやすいタイプで、今が飲み頃のミディアムボディーの赤ワインです。お料理とのマリアージュは、和風ハンバーグがおすすめだそうです。

東海林さんがこれらのワイン造りで特にこだわったのは、ワインの味わいや厚みをしっかり残すため、ろ過を必要以上にしないことだそうです。とくにこのロリアン 三重奏」は、無濾過だそうです。両方のワインともしっかりとしたボリュームと厚みを感じました。近年国産ワインの質が素晴らしく向上していると言われる理由のひとつに、まず醸造家の努力や研究が上げられると思いますが、若い醸造家の方達には、益々新しい発想で大いにチャレンジしていただきたいと思いました。私達ワインの飲み手も応援しながらしっかりと見届けていきたいですね。ワインを飲んでくれる人の笑顔を思い浮かべながら、よりフルーティーで複雑な味わいの、美味しい甲州種ワインを目指して、これからもワイン造りに励みたいと言う東海林さん、頑張ってください。

東海林さんのお話の後、参加者の方からいくつもの質問があり、また、「造り手の話を聞きながらそのワインを試飲できて幸せです。」との感想もいただきました。しとしとと降り続くうっとうしい梅雨空の下で、このセミナーのテントの中だけ、何か別の空気が流れているような気がしました。


篠原