かつぬま朝市ワインセミナーレポート
第80回 2016.7.3



参加者
県外2名  県内12名  計14名

講師
篠原シニアワインエキスパート

ゲスト
ビストロ・ミル・プランタン 五味 丈美 様


アシスタント
深澤さん、尚枝さん


ワインリスト
・奥野田 フリザンテ 2014 奥野田葡萄酒醸造(株)
・穂坂のあわ 2014 メルシャン(株)
・甲州 酵母の泡 マンズワイン(株)
・ルミエール スパークリング オランジェ 2014 (株)ルミエール

セミナーの内容



レポート
梅雨の晴れ間?と首をかしげたくなるような蒸し暑い朝。今日は気温が上がるので
熱中症には気を付けての予報が出ています。こんな日に是非お勧めしたいのがスパークリングワイン。もちろんランチとかディナーにですよ。でも朝からやってしまう
のが我がワインセミナーです。

本日のゲストは、皆さんお馴染みの「ビストロ・ミル・プランタン」オーナーソムリエの五味丈美さんです。お昼に満席のお客様が予約されているのを押して、このセミナーにご出演くださいましたので、ちょっと早めのスタートです。


テイスティングワイン最初の2種類のお話です。
奥野田フリザンテのフリザンテとは、イタリア語で微発泡の意味です。スパークリングワインの代表シャンパーニュはボトル内のガス圧が5気圧以上ですが、このフリザンテはそれより低い2.5気圧位です。デラウエア100%で、ボトル内に酵母のオリを残したままのにごりタイプの瓶内二次発酵のスパークリングワインです。
フルーティーなデラウエアの味わいですが、辛口に仕上がっています。にごりなので下に行くほどオリが増えて少しザラツキがありますが、酵母の旨味も感じることができます。

2番目のワインはメルシャン(株)の穂坂のあわです。
韮崎市穂坂地区は、日本の中でも日照量の多い場所で知られていますが、マスカット・ベーリーAに適した土地と言われています。ここで収穫されたマスカット・ベーリーAから造られたロゼのスパークリングワインです。ステンレスタンク発酵、オークの小ダルで熟成させ、瓶詰め時に低温でゆっくりガスを注入する醸造法を用いており、ガス圧は意外に高くて6気圧位あります。ぶどう本来のチャーミングなイチゴやキャンディーの様な香りが感じられます。


ここで五味さん、持参したケースの中からピカピカ光るサーベルを取り出しました。これからこの朝市ワインセミナー80回を祝って、サーベルで穂坂のあわの抜栓を実演してくださるそうです。



※シャンパン・サーベラージュについて
シャンパン・サーベラージュとはサーベル(刀)でシャンパンのコルクを瓶口ごと切り落として(吹き飛ばして)開栓することです。この由来についてはいくつかの説がありますが、一般的には次の通りです。
1811年イギリスの海軍では船の進水式の時に、シャンパンを船体に投げつけて割っていたが、割れない場合には将校が持っていたサーベルでボトルの首を切り落とし、ワインを船体に掛けた事に始まるという説。もう一説は、19世紀にフランス海軍が出航の際航海の安全と戦の勝利を祈念して、将校が自分のサーベルでボトルを切り落とし、シャンパンを船に掛けたという説があります。現代では人生の新しい門出を祝う意味で、結婚式の披露宴で行われることが多いようです。



皆で席を移動して障害物の無い草原で五味さんを取り囲んで、スタンバイOK。

スリー、ツー、ワン、ゼロの掛け声と同時に一瞬金色に輝くサーベルが宙を舞ったかと思うと、ポーンと威勢の良い音がしてボトルの首が飛びワインが吹き出しました。


キャー!とかワー!とか叫び声が上がります。皆さんシャッターチャンスは大丈夫だったでしょうか。ボトルはきれいにカットされ、飛んで行ったボトルの栓は、コルクとガラスがしっかりくっついたままで外すことが出来ません。固く結ばれているという意味でも縁起が良いとされているようです。

放心状態の皆さんようやく席に戻り、落ち着いたころを見計らってセミナー再スタートです。
サーベラージュについての質問続出です。
・カットするのに角度は関係あるのですか?
・刃こぼれしますか?
・包丁でもできますか? ・・・などなど






テイスティングです。
・奥野田フリザンテ 2014 奥野田葡萄酒醸造(株)

 デラウエアのぶどうの香り。それから酵母の(パンのような)香りやバナナの香りもする。香りは甘いイメージだが、酸はしっかりしていて爽やかな味わいになっている。ガス圧はやわらかく、それ程舌を刺す刺激ではない。よく冷やすとキリッとしたより爽やかな味わいで飲め、タルトなどのデザートと合わせても良い。エチケットの蝶の絵は、オーナーの中村さんの奥様亜貴子さんの作品です。

つづいて先程サーベラージュしたワインです。
・穂坂のあわ 2014 メルシャン(株)

あざやかなローズ色。ガスは低温でゆっくり注入しているので、泡は細かくきれい。
マスカット・ベーリーAのぶどう由来の甘さを連想させる香り、イチゴジャム、チェリー、フルーツキャンディー、グミ、綿菓子などの香り。味わいはフリザンテに比べて舌を刺激するガス圧が強くワインの厚みを感じる。甘味、苦味、酸味のバランスが良く心地良い。最後に甘い感じが残るが、残糖量は1リットル当たり12g程度だと思われるので、全体的には辛口に仕上げてある。ご家庭で飲む場合にはやはりもう少し冷やして飲みたい。

・甲州酵母の泡    マンズワイン(株)

本年5月に行われた伊勢志摩サミットで提供された日本のワイン12本の内の1本です。甲州100%。果皮との接触をしないので、色が無色に近い透明。泡が細かく粒が小さい。甲州特有の柑橘系の香りでも、和柑橘のすだち(黄がかった)、ゆず
(黄色)、食用菊、酵母の香りなど。程良い甘みと酸味のバランスがとれている。
この甲州酵母の泡は甘辛度で表示すると、セックと言われる「やや辛口」の範囲に入り、マンズさんの甲州酵母の泡にはこのほかにブリュット「辛口」があり、セックの方がやはり僅かに甘みを感じる。このスパークリングワインは、「キューヴ・クローズ(仏語ではシャルマ)」方式で造られています。

※キューヴ・クローズ(シャルマ)方式とは
まずタンク内でぶどうを発酵させてスティルワインを造る。それを大きな密閉タンクに移し二次発酵させる。添加した糖分と酵母の作用で炭酸ガスが発生しワインに溶け込む。ろ過後冷却加圧装置で瓶詰する。一度に沢山のスパークリングワインが
造られるので、お手頃価格でワインが出来る。キューヴ・クローズ方式のワインは、舌に少しチクチクとした刺激が残るのが特徴で、瓶内発酵と区別できる。



最後のワインです。
・ルミエール スパークリング オランジェ 2014  (株)ルミエール

外観を見て他のワインと明らかに違うのは色ですね。黄色が濃いです。この色からオランジェ(英語のオレンジ色)と名前がつけられています。このワイン2013年まではルミエール・ペティヤンと呼ばれていましたが、ガス圧が高いので2014年ヴィンテージからはルミエール・スパークリングと名前を変えたそうです。
笛吹市産甲州100%をマセラシオン・カルボニック法で発酵し、ろ過後1年間熟成した後、酵母を加え瓶内二次発酵させたワインです。それによりこの様に鮮やかなオレンジ色になっているのです。グラスの周りを見てください。しっかりしたガス圧によって出来る泡のリングのことをフランスでは「真珠の環」と呼びます。

※マセラシオン・カルボニック法とは
ボジョレー・ヌーボーの醸造法。まずぶどうを潰さずに密閉タンクの中に詰め込み、タンクが一杯になると下にあるぶどうが重みで潰れ果汁が流れ出す。果汁が自然に発酵を始めると炭酸ガスが発生し、タンク内に炭酸ガスが充満して次々にぶどうが分解して発酵し、果皮からの色素や香りも抽出される。苦みや渋みの少ないフレッシュでフルーティーなワインとなる。



テイスティングです。
香りは、オレンジのジャムやアメの香り。グラスに伝わるワインの足の長さからエキス分の多さが感じられる。本日のワインの中で一番舌に感じる刺激が強い。苦味を伴う味わいと酸味とミネラルのバランスが良い。またコクもありボディがしっかりしていて余韻も長い。

4種類のワインのテイスティングが終わりました。同じスパークリングワインでもスティルワインを瓶詰する際一緒にガスを注入する方法、タンク内で二次発酵させ瓶詰する方法、瓶内で二次発酵させる方法などいろいろな方法があることがわかりました。
それによって泡の出方や香り又舌が感じるガス圧の違い、ワインの価格など、それぞれの特徴をつかんでワインを選びたいと思います。もうすぐ梅雨明け、暑い夏にはキリッと冷えたスパークリングワインがたまらないですね。今年の夏は山梨のスパークリングワインがお勧めです!!

五味さんのタイムリミットが近づいてきました。
最後にスパークリングワインの抜栓の方法を教わりました。
@ キャップシールは意外と取り外しにくいので、ナイフでキズを付けてはがすと良い。
A 次に針金のねじってあるのを緩める。この時に必ず針金の上から指でコルクを押さえる。押さえておかないと針金を緩めた段階でコルクが上がってくる場合があるので要注意。
B 指でコルクを押さえたままボトルを持って45度位に傾ける。
C ボトルの底の方をつかんで力を入れて回す。コルクを押さえている手はそのままで、コルクを回そうとしない。
D 一旦コルクがガラスから離れるとガス圧によって上にあがってくるので、しっかりと押さえておく。ボトルは傾けたまま。
E コルクが上まで上がるとシューとガスが抜けるので、しばらく待ってボトルを起こす。


スパークリングワインのサービスの仕方
・通常はグラスをテーブルに置いて注ぎます。
・高級なシャンパーニュの場合、ソムリエはグラスを手に取って傾けて、グラスの壁面に添って注ぎます。そうすることによりガスが抜けにくく、お客様に泡を多く楽しんでいただけます。
・逆にガスを先に取り除いてサービスする方法もあります。今はあまり使われませんが、昔イギリスでは女性がガスによるゲップをするのを避ける為にガスを抜く
器具を使ってサービスしたこともあります。会場からクスっと笑いが起こります。

残念ながら時間になってしまいました。五味さん急いでお店に戻らないとお客様が見えてしまいます。タイムリミットを伝えると会場から大きな拍手がわきあがりました。五味さん本当に無理を押してのご出演、有難うございました。
シャンパン・サーベラージュの実演は、「かつぬま朝市ワインセミナー80回」の良い記念になりました。心から感謝いたします。

皆さんの絶大なる拍手を背に、五味さんサーベルを抱えて颯爽と去って行かれました。やっぱりカッコいいですね。




さあこの後は皆さんお待ちかね?のワイン俳句のお時間です。皆さんの傑作は以下のとおりです。

ワイン俳句

泡シュワワ 勝沼の夏 さわやかに ニエベさん
暑い日は 冷やした泡が ごちそうだ ドラさん
たちのぼる 泡で楽しむ 色と香り ミッフィーさん
夏ワイン 泡に消えゆく 記憶かな どもんさん
山梨の スパークリング はじけておいしい ボブさん
泡にのり 立ちのぼる香 華やかに ひつじさん
和のしずく その果実味に 幸(こう・甲・好)感じ ここみわさん
夏空と 泡に香りの よいごこち ゆみさん
ワイン 深みが甘く ステキだね ホ・・さん
甲州の 夏の雑草 銀サーベルvvv(しゃっきーん!) 洋平さん
真夏日の ワインセミナー 友づくり 菱山昔おとめさん
あとあじと ビンの切り口 スパッとグー? さちこさん
泡立ちの 中でお祝い 80回 さちこさん
五味さんの サーベラージュ 撮り逃し  Kさん





次回8月7日のワインセミナーもご期待ください。
篠原